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1:バースでの新生活

3:ドルミカとの外交問題

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「つまり、他にも内通者がいると?」

「いや、それならそちらを使うだろう。なんというか、何か、ピースが欠けているような感じだ。
とりあえずドルミカ王国については、お前に手紙を送った通りだ。正式な外交文書で抗議文を送ったが、海賊なんて知らぬ 存ぜぬ、軍隊?おそらく何者かが我が国の名前を騙ったのでしょうな。知ったことではない、王太子暗殺計画?そんなことが貴国では可能なのですかな?お国の管理能力が疑われますなあと返事をよこしてきた。陛下も大臣達も怒り心頭で、ドルミカと戦争だと声をあげるもの、短慮は良くないなど、もめたままだ。」

「なるほど、では方針は決まっていないと言うことですね。」

アーサーが首を傾げる。

「いや、そうでもない。私は止めていたんだが、第五騎士団のゲリエ団長が、ドルミカを攻撃するべきだ、せめて海賊を退治するべきだ、自分達に出動命令を出してほしい、必ず成果を上げましょうと陛下と大臣に直訴したようだ。」


フリードが、ふーっとため息をつく。
「第五騎士団だけで動いても成果は得にくいからよく作戦を考えてからと止めていたんだがな。
ゲリエに言わせれば、私は慎重すぎるということになるらしい。陛下や大臣にもいつも迎え撃つばかりで攻撃がないから甘く見られているんだと力説したらしい。」

「ゲリエ団長は、閣下のかわりに総団長を目指していられた方、海賊にペリエが攻撃されたのが許せないのでしょうね。」
アーサーが眉をひそめながら小さな声で話す。

「まあな。とりあえず陛下も大臣達もゲリエの意見に前向きだ。まあ、海賊討伐については、ドルミカも、知ったことではない、好きにすればと言ってきたからな、やりやすいとは言えるが…」

フリードはため息をつく。

「まあ、とりあえず、せっかく婚約も決まったんだ、今日は家に帰ってこいよ、セーラもエリザベスもいるからな。お祝いをすると張りきっていたからな、必ず夕食までに帰るように言われている。お前も忘れるなよ。」
左胸を軽く叩かれる。

お互い頷く。母上が帰ってこいと言った日に帰らなかったりしたら後が3倍面倒だと言うのはふたりの一致した見解である。






翌日から昨夜読んだ報告書の中身を確認をしたり、王太子殿下の呼び出しを受けたりで多忙を極める。
その上に兵の訓練も並行して行う、ドルミカと戦争する可能性もゼロではないのである。シャーロットと再会した今戦争に行きたいわけではないが、シャーロットとこの国を守るためなら喜んで戦地に向かう覚悟はある。そのためにも兵の訓練は必須である。

しかし、今までとは違うのは、王都にシャーロットがいることである。どんなに忙しくても、シャーロットに会いに3日に一度はゼオン侯爵の邸に向かう。前もって、花束もきちんと用意している。そのうち、シャーロットにそろそろ飾る場所がなくなってきたしそんなに頻回でない方が良いのだけどと言われても贈り続けている。

多忙だし、王都に来てからシャーロットがすることは驚きの連続である。これからのことを考えると不安がないわけではないが、アーサーの王都での日常は幸せなものになっているのであった。
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