前世で医学生だった私が転生したら殺される直前でした。絶対に生きてみんなで幸せになります 2

mica

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1:バースでの新生活

5:ギルバートの入学2

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無事に式が終わり、ギルバートは、同学年の生徒と移動する。明らかに身長が違う生徒が混ざっていることでかなり目立つ。保護者席や上級生の間でひそひそ話が繰り広げられる。

「あれがケント前子爵の・・・」

「あのゲルトランの・・・」

シャーロットの耳にも入ってくる。

「シャーロット、気にするな」

「はい」

アリストと二人でじっと生徒を見送る。式が終わると、
何人もの貴族が侯爵に挨拶にくる。

「ゼオン侯爵、ご無沙汰しております。この度はいかがなされましたか?」
やや太めの大柄な男性が声をかけてきた。

「挨拶痛み入る。我が息子の編入式に参加するために参ったのだ」
あまり良い印象を持っていない知り合いなのか、アリストはあまり笑うことなく対応する。

「ああ、あのゲルトランの甥ですな。侯爵も奇特でいらっしゃる」

その言葉にアリストは、
「何か貴侯は誤解しているようだ。我が息子はケント子爵の元嫡男であり、ゲルトランはそれを簒奪したもの、甥扱いされるのは、我が息子への侮辱とも取れるがそのおつもりか?」
と警告する。

「こ、これは失礼しました。申し訳ございません」
慌ててその男が謝罪すると周囲はシーンとする。

「こ、侯爵様、そちらの美しい女性をご紹介いただけますでしょうか?」

他の貴族夫人が話をかえるように尋ねてくる。

「これは、我が養女となったシャーロットです。そうは言っても、来年には、イーズス伯爵家に嫁ぐ予定なので、我が娘であるのは短期間になりそうですが。シャーロット、挨拶を」

「初めまして。シャーロット ゼオンと申します。この度、ご縁をいただきゼオン侯爵家の養女となりました。お見知りおきください」

美しくカーテシーをする。
「イーズス伯爵、ということはアーサー卿の婚約者でいらっしゃる?」

「はい」
と微笑む。周囲のものはその微笑みを見て赤くなる。

「まあ、アーサー卿の。おめでとうございます。」

「ありがとうございます」

やや目つきの鋭い夫人が、

「そういえば新聞にも載っておりましたわね。随分長い間、平民として暮らしておられたとか。これから大変ですわね」
と話しかけてくる。

「ご心配いただき申し訳ありません。まだまだ不慣れなことも多いのでこれから学んでいければと思っております」

シャーロットは穏やかに返事をする。

「ほほほ、女学院にも通われていないとのことですものね。心配ですわあ。頑張ってくださいね。」

「ありがとうございます。義母になるセーラ様にも教えていただいているのですが、今度パトリシア様にも教えていただけることになりましたので、皆様に追いつけるように頑張ります。」

「え?パトリシア様?」
セーラ伯爵夫人はわかる。義母になるのだから。しかし何でパトリシア様?王妃様の筆頭女官で外務大臣の妻である。

ふっと笑ったアリストが

「さあ、そろそろギルバートを迎えに行こう」
と促す。

「はい、御父様。では皆様、失礼いたします」

カーテシーをしてその場を去る。

皆、呆然として二人を見送ったのだった。

「よくやったな」

アリストが声をかける

「?」
キョトンとした顔をシャーロットがする。
「ははは、もしかして嫌味に気がつかなかったか?」

「何か嫌味をおっしゃいましたか?頑張れとおっしゃってましたが」

「まあ良い。そなたの良いところでもある。それぐらいの方が良いもかもしれん」


「姉上、父上!」

しばらくするとギルバートがやってきた。3人で学院のことを話していると、ふとすれ違った学生が、

「もしかして・・・ギルバートか?」
尋ねてくる。
振り向くと茶色い髪にそばかすの青年が立っている。ギルバートと同じ制服だがジレが深緑である。不思議に思っていると、

「僕だ。ダニエル ボーヌだ、隣の領地の」

「え?ダニエル?子供の頃、一緒に遊んだことがあるあのダニエル?」

「そうだ、懐かしいな」
と握手する。

「いやあ、ケント子爵の事件のことは新聞で読んでいたし、ギルバートが生きていて、あの男を断罪したのも聞いていたんだ。本当に今年編入するのか、もしかしたら来年の入学なのか半信半疑だったんだが・・嬉しいよ」

「ああ、ありがとう。これからよろしくな」

「まかせとけ。そうはいってもえんじ色か。学年は違うが、何かわからないことがあったら聞いてくれ」

二人は微笑み合う。授業のベルがなる。
「ああ、もう行かなくては。ギルバート、また会おう!」
そういって走って行ってしまった。

「ギルバート、我々はもう屋敷に戻る。寮生活は慣れるまで大変かもしれないがそなたなら大丈夫だろう。」

「ギルバート、お友達ができそうで良かったわ。週末には帰ってきてね。」

「大丈夫です。私より心配なのは姉上です。お願いですから、遠乗りはしばらくおやめください。心臓が止まるかと思いましたから」

ギルバートが入学する前に遠乗りに行きたいという姉の希望に沿って護衛のクレイグと3人で遠乗りに行き、そこで王妃様とお会いしたのは3日前のことである。

翌日にパトリシア様が、王妃様の代行としてやってきて、側室探しはやめたけど王妃さまが姉上を気にいったことを教えて下さった。パトリシア様自身もシャーロットのことが、気に入ったようで今度外国語について教えてくれることになったのだ。

シャーロットは
「そうね、しばらく自粛します。図書館ぐらいにしか行かないようにするし、どこか出かける時にはデイビッドを連れて行くから安心してね」
微笑んでいる。

いやいや、何の安心にもならないな、アリストとギルバート二人は心の中で呟いたのだった。


その後、社交界では、ゼオン侯爵がギルバートを自分の息子同様に考えていること、シャーロット嬢も社交界の実力者の面々に気に入られていることがわかり、誰からも誹りを受けることはなくなったのであった。
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