前世で医学生だった私が転生したら殺される直前でした。絶対に生きてみんなで幸せになります 2

mica

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1:バースでの新生活

11:図書館は危険?

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今回はコメディ調です。




「あ、ごめんなさい」

「いえ、こちらこそ」

シャーロットは、王立の図書館にきている。治療師の教科書を作るために医学書を読みたかったためである。
ちょうど、お目当ての本を取ろうと思ったら、その本を同時に取ろうとした男性の手が触れたのだ。

デイビッドが即座に
「シャーロット様、お下がりください」
と声をかけて前に出てくる。

護衛兵らしき男が前に出てきたのを見て驚いたように男が、
「失礼しました。先にどうぞお使いください」
と微笑んでくる。

シャーロットは、
「いえ、お気になさらず。私は他に読みたい本がありますので大丈夫です」
と、さらっと、他の本へと目を向ける。

2冊程を手に取り読書用のスペースに向かい座る。しばらく黙々とノートに内容を書き写す。
しばらくして、息をついたところで
「あの?」
と声をかけられる。顔をあげると先ほどの男だった。優しげな笑顔で、
「私の方は先に読ませていただいたのでよろしければとお持ちしました」
と話しかけてくる。

シャーロットは、
「ありがとうございます。ですが、もう他の書物を読んでおりますので、お気になさらず、もしよければ元に戻していただければ他の方が使えて良いのではと思います」
と返事をする。

「は、はあ」
男はすごすごと帰って行った。

デイビッドはそれを見てホッとする。男が近付いて来るまでにずっと睨みつけていたのだが、それを物ともせず男は声をかけてきたのだ。普通は、諦めるものだろう。それをしなかった時点ですでに何か下心があるに違いない。それをさらっと無視するシャーロットさま、素晴らしい!と思っている。


シャーロットからすれば、私はこの本を読んでいるのがわかるでしょ、邪魔しないでよ、である。図書館で何冊も本を独り占めするのはご法度である。
シャーロットの図書館通いが始まって1週間である。ほぼ毎日のように来ては、いろいろな人に声かけられている。

女性がそもそも少ない上に護衛兵がついており目立つ上に、読んでいる本の多くが医学書である。数日で隣接する大学の医学部の教授から声をかけられるようになっている上、他の学部の生徒や研究者からも声かけられる。

シャーロットの読んでいる本を見てデイビッドは驚く。解剖の本である。それを平気で読んで、それをスケッチしてノートに写しているのである。女性が、内臓の絵を平気で見ているのである。横で見ている自分の胃がムカムカして来る。

しばらくしてため息をついている。そうだよな、こんな痛ましい内容、読んでいたら気分が悪くなるよな。

「ふぅー、ダメだわ、私の画才の無さだときちんと模写できないわ」
「え?この解剖の絵を写そうとしていたんですか?」
つい、声を出してしまう。

「あら?そうしているつもりだったんだけど、そうよね。わかっているの。私には絵の才能がないことに」
小声で話す。確かに才能はなさそうである。ノートをちらっと見ただけでそれはわかる。
「お嬢様、絵を写すのは諦めて絵師に任せた方が良いと思います」

「そ、そうよね。他の部分をまとめることにするわ」
小声で話す。可愛らしい方である。若がベタ惚れなだけはある。解剖の図が平気なことだけが謎である。勉強熱心な姿をみると弟君であるエドワード様を思い出す。きっと、このお二人は気があうに違いない、そろそろ若が許可してくだされば良いのだが。

「やあ、シャーロット嬢、今日も来ていたのか、熱心だね」

「これは、アンブロ先生、こんにちは」

アンブロ先生は医学部の外科の教授である。図書館にきた初日に出会いシャーロットと意気投合したのである。体格が大きく、何となくペリエのベルグ院長を思い出す。


「どうだね、教科書の方は。進んでいるかね」

「それがなかなか。私、自分がこんなに絵心がないのだと実感したところです」

「ははは、絵は後で良いだろう、それよりもこのあいだの話の続きを聞きたいんだ。帰りに研究室によってくれたまえ」

「はい、コルセットの話ですね。では、後ほど立ち寄らせていただきます」

「うむ、私はこれから1時間ほど授業がある、その後によろしく頼むよ」

え?またあの部屋に行くの?いろんな骨とか心臓の標本が置いてあって嫌なんだけどと心で思うデイビッドである。

しばらくすると、また別の男が声をかけて来る。

「おい」

「これはフィリウス先生、こんにちは」

小柄で痩せていて鼻が長い、シャーロットは前世の白雪姫の小人みたいと心の中で思っている。
フィリウス先生は内科医で薬剤の開発の研究をしているらしい。

「ふん、小娘が、また図書館にきよったか」

「ふふ、今日はお茶の時間用にシナモンと林檎のケーキを持って来てますの」

「な、何!シナモンとな!まだ国内で手に入るとは聞いとらんぞ!そなた、どこでそれを。本当にあったのか!」
「この間、市場の片隅でよくわからないけど異国から来たという乾燥した草木の中で見つけたんですよ。とても良い香りで・・」

「小娘、今日は研究室の部屋は空いている」

「まあ、では先生の研究の本を見せていただけるのですか?」

「ま、まあよかろう、ケーキを持って来るのを忘れるんじゃないぞ!」

「はい、楽しみにしております。シナモンティーも用意しますわね」

ふんと言いながらフィリウス先生は図書館を出て行く。

「シャーロット様、あんな感じの悪い物言いをするものの部屋に行く必要はないのでは?」

「フィリウス先生はツンデレですからね。でも、根はきっと良い先生ですよ。この間も私が勘違いしていた点をきちんと教えてくださいましたよ」

「ツンデレ?」
「外にはツンツンしているけど、中身はお優しいということです」

「そうなると、アーサー様は、デレデレですね」

「ま、まあそうなるわね。」


「やあ、シャーロット嬢」

嫌な野郎が来たとデイビッドは思う。

「こんにちは。ハンター先生」

ハンターは、白衣を着た着た瓶底眼鏡で髪がボサボサとした理学部の研究者である。

「この間ゼオンで売り出したラベンダーオイルをみたんだ。素晴らしく良い香りでしかも確かに油だ。ラベンダーから油ができるなんて驚きだ。どうやって作り出したのか調べたら君が関与したらしいじゃないか。蒸留というときいたぞ。もっと詳しく教えたまえ!」

腕をつかもうとされたのをデイビッドが止める。

「ハンター先生、ここは図書館ですよ。大声を出してはダメです。それに、その件に関しては、私の一存では決められないので、ゼオン侯爵様に相談なさってください」

「それじゃあ、何日もかかる!君も科学者の端くれならわかるだろう。研究というのはインスピレーションが大切だ。思ったときに動かないとダメなんだ!」

確かにそうかもとはシャーロットも思う。しかし、やはり規制も大切よね。なんだかこの人前世の小説にあったマッドサイエンティストみたいなんだもの。

「気持ちはわかるのですが、ちゃんと上司と相談なさってくださいね。協力しないわけではないのですから。」

グヌヌヌと言いながらハンターは去っていった。

二人でふうっと息を吐く。

「アーサーが言っていたことは正しかったのね。私、図書館がこんなに危険な場所とは思わなかったわ」

図書館が危険な場所なのではなく、シャーロット様が危険に遭いやすいのですと心で思うデイビッドである。


その後、白骨がいくつもおかれ、心臓の模型のおかれたアンブロ先生の部屋で骨折やコルセットについて話した後、薬草が天井から吊るされ薬の匂いがいくつもして、隣の部屋には実験に使うらしいうさぎが飼われている、フィリウス先生の部屋で薬草について話をしながらお茶をした後帰宅した。

デイビッドは、これからこんな日々が続くの?と深いため息をついたのだった。
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