前世で医学生だった私が転生したら殺される直前でした。絶対に生きてみんなで幸せになります 2

１：バースでの新生活

１９：アデリーナの秘密２

「じゃあ、何もおっしゃらなかったけど、あの方は私の伯父様で、こっそり私を見に来られたってことですか？」

「その可能性はあるな。６年前の事件で、アデリーナ様もロバートも亡くなられて子供二人も亡くなったと信じられていた。おそらくスコール国でもそう言われていたのだろう。ところが、この間の裁判でギルバートとシャーロットが実は生きていたことが判明したのだ。クラウン家としては、本当に自分たちの血縁関係にあるのか知りたかったのではないかな」

「シャーロットちゃんはアデリーナ様によく似ているのですから、会えばすぐに間違いなく娘だとわかりますものね」

「私たち姉弟にはもう血の繋がった人は誰もいないと思っていたのです。嬉しいことですわ。正直なところ、あの叔母達だけが自分たちの唯一の血縁なのだと悲しい気持ちでもいましたから。もしかして他にも従兄弟がいたりするのかも。」

シャーロットは微笑む。

「そ、そうだな。私にとっても義理の伯父上となる方だ。ぜひご挨拶したいしこれからは仲良くできれば・・」

「そうなれば良いがなんともな」
フリードは浮かぬ顔である。

セーラも悲しそうに頷く。

「アデリーナ様がロバート様と恋に落ちて、クラウン家から逃げるように結婚したというのが正しいの。結婚に反対され続けた二人が、このままだとスコールに連れ戻されると危惧して、卒業式にロバート様が駆け落ち同然にアデリーナ様を屋敷に連れ帰ったの。」


「「「「「え」」」」」
子供達４人は驚く。

「卒業式で親に許されない相手と手を取り合って駆け落ちする、なんて素敵なの・・」

エリザベスが感動してぼうっとなっているのをフリードが睨みつける。父親のクラウン殿のその時の痛みが今ならよく分かる。

ため息をつきながら、

「ちょうど、その頃私は地方に視察に出かけて王都にはいなかったんだが、後でロバートから事情を聞いた。色々と仕方なかったし、その選択は間違ってなかったのだろうと私も思う。ただ、私もまだその頃は若くてよくわかっていなかったのだけど、その怒りは大きくってね。しばらくスコール国との学術交流はかなり減ったらしい。ロバートも申し訳なく思っていたよ」

と説明する。



「つまり、決まった人がいたのに駆け落ち同然に結婚して、結果として国同士の交流に支障が出たということですか？」
シャーロットは驚く。



「まあ、クラウン殿の意向だけで動いたとは思わないから、他にも理由はあったのだろう。だが、クラウン殿も人の子ということだ、よっぽど腹が立ったらしい。まあ、貴族社会で親の言うことを聞かずに結婚なんて醜聞だ。そのあと、何度アデリーナ様が手紙を送っても返事はなかったそうだからね。本来なら怒りが溶けて仲直りするはずの時期にアデリーナ様が亡くなったということもあり得るとは思う。なのでクラウン家の怒りがもう解けているのかはわからない。」

「なんと、そんな事情があったなんて。両国の研究交流の空白の時間と言われる時期があったらしいとは聞いていたんですが・・。でも姉上やギルバートの頭の良さはクラウン家の血筋だったのですね。納得です」

エドワードは驚く。

シャーロットは、自分の両親が、駆け落ちして、色々な人に迷惑をかけたと聞いてショックを受ける。顔色が悪くなってきた。

そんなシャーロットに優しくアーサーが

「シャーロット、エドガー様は他にどうおっしゃってたんだい？」

と尋ねてくる。

「あ、はい。この冬こちらにいるんだと。また、お会いすると思いますとお話しされていたわ」

アーサーは明るい声でシャーロットに語りかける。

「じゃあ、きっと、これからまた会おうと思ってくださっているということだよ。とりあえず、また、会いにきてくださるのを待とうじゃないか。」

ほっとしたシャーロットは少し肩の力が抜ける。

「そうね。次、会いに来てくださったら、伯父様なのか直接聞いてみることにするわね」

アーサーは頷いて、シャーロットの手をそっと握る。

「それが良いと思うよ。アデリーナ様そっくりのシャーロットを憎むわけがない、きっと相手も仲良くしたいと思ってくださっているのに違いないさ」

「ありがとう。アーサー。週末、ギルバートにも話してみるわ。きっと、あの子も喜んでくれると思うの。」

二人で微笑み見つめ合う。シャーロットは、やっぱりアーサーは、素敵、私を慰めてくれて支えてくれると嬉しくなる。アーサーが声かけしてくれるだけで安心できるのだ。

コホンとフリードが咳払いして

「さあ、二人とも。二人の世界を作るんじゃない。あまり遅くなると侯爵家が心配する。夕食を続けよう」

二人のアツアツぶりを微笑ましく思いながら楽しいひと時を一緒に過ごしたイーズス一家であった。