前世で医学生だった私が転生したら殺される直前でした。絶対に生きてみんなで幸せになります 2

mica

文字の大きさ
34 / 36
2:ロバートとアデリーナ

女子学院へ

しおりを挟む
「アデリーナ、おそらく学院に戻るとあなたが拐かされたかもと騒動になっている可能性が高い。そんな不名誉な噂は消し去りたい。あなたは、私に誘われてこっそり会っていた、もう結婚するつもりだと、兄上に話せるだろうか」

そうね、拐かしにあったなんて不名誉な噂が流れてしまえば大変なことになってしまう。まだ、二人で駆け落ちをするつもりだったという方が私の名誉は守られるわ。

「わかりました。皆さんの前で話します。」

「ありがとう。あなたは私の話を肯定してくれるだけで良いから。ただ、兄上とお母上のお怒りを考えると申し訳ないが・・」

「どちらにしても、このままではスコールに連れ戻されます。もう、これしか方法はないと思うのです」

「ああ、本当にそうだね。ケントは緑豊かなところだ。あなたも気に入ってくれると思う。一緒に領地で穏やかに過ごそう」

二人は微笑んで固く決心をする。

女学院に戻ると騒ぎになっている。女子学生が突然いなくなったのである。警備の男達が騒然としている。

「アデリーナ、申し訳ないが打ち合わせ通りにお願いします。」

「わかりました。大丈夫ですわ。」

馬車に女学生が載っていることがわかり、周囲は騒然とする。そして、学院のメインエントランスで馬車が止まる、ロバートが先に降り、アデリーナの手を取り馬車から下ろす。

「アデリーナ!」

「お兄様、お母様、ごめんなさい。つい出て行ってしまって」

「どういうことだ。私たちはお前がいない、もしかして誘拐されたのかと焦っていたのだが」

「いえ?私はお二人が認めてくださらないので、ロバート様とこっそりお会いしてこれからのことを相談しようと出かけてしまったのです。何かの誤解ですわ。」

「クラウン殿、このような大切な日にお嬢様を連れて外に出てしまったこと深く謝罪いたします。ですが、私たちは深く愛し合っているのです。どうか結婚をお許しください」

「何をいう。こんな卑劣な形で妹を連れて行く男を許すわけがない。さあ、アデリーナ、こちらにきなさい。」

「嫌です。私はロバート様のことを愛しているのです。」

卒業式の直後である。それなのに、こっそり二人で出かけて帰ってきてのプロポーズである。保護者が怒り心頭になるのも当然である。メインエントランスで、周囲には警備員や教師、他の令嬢の保護者もいる中で、突然いなくなったと思って心配していたところで男と一緒に帰ってきたのである。クラウン家にとって面目丸つぶれである。

「話にならん。貴族の令嬢は親のいう結婚相手と結婚するのが普通のことだ。それを無視して親の顔に泥を塗るつもりか」
エドガーの怒りはおさまらない。

「失礼します」
突然、クラウン家の召使いが小走りにやってきたと思ったら、エドガーに小声で何か話しかけている。

少し顔がこわばったと思ったら、ふうっとため息をつきこちらを睨みつける。


「・・・アデリーナ、お前は本当にその男が好きなのか?」

「はい、お兄様、ロバート様をお慕い申し上げております。」

「それではお前はもう今日から我がクラウン家とは絶縁だ。勝手にどこの男とでも結婚してしまえばよい。二度とクラウン家の敷居はまたがせん。これは嫡男としての決定だ」

「エドガー!なんてことを言うの! お父様が知ったら、なんておっしゃるか!」
母が反対するが、

「これは最終決定です。さあ、まいりましょう。母上、もう、アデリーナは他人です。ケント殿、彼女の荷物は我々にとって不要なもの、ごみと同じです。貴殿の家の前に捨てておくかもしれません」

ロバートは、おそらく、エドガー殿はジェイドとの街での騒動を耳にしたのだなと思った。娘が男に乱暴目的でさらわれたよりも好きな男と駆け落ちしたという評判の方が妹にとってはまだマシだろうと考えたに違いない。


「わかりました。確認させていただきます。お許しいただき、ありがとうございます」

ロバートは貴族の礼で答える。

「ふん」と言ってエドガーは去って行ったのだった。

アデリーナがガクッと腰が抜けたように座り込みそうになるのを

「アデリーナ」
とロバートが支える。

「ろ、ロバート様」

「ロバートと。これからあなたは私の妻になるのだから。よく頑張ったね」
二人で見つめ合っていると、

「あ、アデリーナ様ぁ~」

泣きながらアイリーンがやってきて、アデリーナを抱きしめこっそりと伝える。
「アデリーナ様、良かった。馬車でジェイド様に連れて行かれるのをみて、すぐにロバート様にお伝えしたのです。良かった。間に合ったのですね。良かった、良かったわぁ」

「アイリーン様が伝えてくださったのですね。ありがとうございます。アイリーン様のお陰ですわ。」

二人で泣き通しである。

「アデリーナ、とりあえず、ここから離れよう。私の屋敷へ行こう」

ロバートが優しくアデリーナに伝える。周囲を見回せば、令嬢の多くは、駆け落ちなんて素敵、憧れるわと話しているが、保護者と教師の方は、なんてこと、最優秀をとった女性が情けない、親が勘当するのも当然ですわねと噂している。

「はい、ロバート。アイリーン様、本当になんてお礼を言って良いか。ありがとうございます。また、後日連絡いたしますわ」

二人は、ケント子爵家のタウンハウスへと移動したのだった。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

ハイエルフの幼女に転生しました。

レイ♪♪
ファンタジー
ネグレクトで、死んでしまったレイカは 神様に転生させてもらって新しい世界で たくさんの人や植物や精霊や獣に愛されていく 死んで、ハイエルフに転生した幼女の話し。 ゆっくり書いて行きます。 感想も待っています。 はげみになります。

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

転生騎士団長の歩き方

Akila
ファンタジー
【第2章 完 約13万字】&【第1章 完 約12万字】  たまたま運よく掴んだ功績で第7騎士団の団長になってしまった女性騎士のラモン。そんなラモンの中身は地球から転生した『鈴木ゆり』だった。女神様に転生するに当たってギフトを授かったのだが、これがとっても役立った。ありがとう女神さま! と言う訳で、小娘団長が汗臭い騎士団をどうにか立て直す為、ドーン副団長や団員達とキレイにしたり、旨〜いしたり、キュンキュンしたりするほのぼの物語です。 【第1章 ようこそ第7騎士団へ】 騎士団の中で窓際? 島流し先? と囁かれる第7騎士団を立て直すべく、前世の知識で働き方改革を強行するモラン。 第7は改善されるのか? 副団長のドーンと共にあれこれと毎日大忙しです。   【第2章 王城と私】 第7騎士団での功績が認められて、次は第3騎士団へ行く事になったラモン。勤務地である王城では毎日誰かと何かやらかしてます。第3騎士団には馴染めるかな? って、またまた異動? 果たしてラモンの行き着く先はどこに?  ※誤字脱字マジですみません。懲りずに読んで下さい。

悪役令嬢の心変わり

ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。 7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。 そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス! カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

処理中です...