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2:ロバートとアデリーナ
女子学院へ
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「アデリーナ、おそらく学院に戻るとあなたが拐かされたかもと騒動になっている可能性が高い。そんな不名誉な噂は消し去りたい。あなたは、私に誘われてこっそり会っていた、もう結婚するつもりだと、兄上に話せるだろうか」
そうね、拐かしにあったなんて不名誉な噂が流れてしまえば大変なことになってしまう。まだ、二人で駆け落ちをするつもりだったという方が私の名誉は守られるわ。
「わかりました。皆さんの前で話します。」
「ありがとう。あなたは私の話を肯定してくれるだけで良いから。ただ、兄上とお母上のお怒りを考えると申し訳ないが・・」
「どちらにしても、このままではスコールに連れ戻されます。もう、これしか方法はないと思うのです」
「ああ、本当にそうだね。ケントは緑豊かなところだ。あなたも気に入ってくれると思う。一緒に領地で穏やかに過ごそう」
二人は微笑んで固く決心をする。
女学院に戻ると騒ぎになっている。女子学生が突然いなくなったのである。警備の男達が騒然としている。
「アデリーナ、申し訳ないが打ち合わせ通りにお願いします。」
「わかりました。大丈夫ですわ。」
馬車に女学生が載っていることがわかり、周囲は騒然とする。そして、学院のメインエントランスで馬車が止まる、ロバートが先に降り、アデリーナの手を取り馬車から下ろす。
「アデリーナ!」
「お兄様、お母様、ごめんなさい。つい出て行ってしまって」
「どういうことだ。私たちはお前がいない、もしかして誘拐されたのかと焦っていたのだが」
「いえ?私はお二人が認めてくださらないので、ロバート様とこっそりお会いしてこれからのことを相談しようと出かけてしまったのです。何かの誤解ですわ。」
「クラウン殿、このような大切な日にお嬢様を連れて外に出てしまったこと深く謝罪いたします。ですが、私たちは深く愛し合っているのです。どうか結婚をお許しください」
「何をいう。こんな卑劣な形で妹を連れて行く男を許すわけがない。さあ、アデリーナ、こちらにきなさい。」
「嫌です。私はロバート様のことを愛しているのです。」
卒業式の直後である。それなのに、こっそり二人で出かけて帰ってきてのプロポーズである。保護者が怒り心頭になるのも当然である。メインエントランスで、周囲には警備員や教師、他の令嬢の保護者もいる中で、突然いなくなったと思って心配していたところで男と一緒に帰ってきたのである。クラウン家にとって面目丸つぶれである。
「話にならん。貴族の令嬢は親のいう結婚相手と結婚するのが普通のことだ。それを無視して親の顔に泥を塗るつもりか」
エドガーの怒りはおさまらない。
「失礼します」
突然、クラウン家の召使いが小走りにやってきたと思ったら、エドガーに小声で何か話しかけている。
少し顔がこわばったと思ったら、ふうっとため息をつきこちらを睨みつける。
「・・・アデリーナ、お前は本当にその男が好きなのか?」
「はい、お兄様、ロバート様をお慕い申し上げております。」
「それではお前はもう今日から我がクラウン家とは絶縁だ。勝手にどこの男とでも結婚してしまえばよい。二度とクラウン家の敷居はまたがせん。これは嫡男としての決定だ」
「エドガー!なんてことを言うの! お父様が知ったら、なんておっしゃるか!」
母が反対するが、
「これは最終決定です。さあ、まいりましょう。母上、もう、アデリーナは他人です。ケント殿、彼女の荷物は我々にとって不要なもの、ごみと同じです。貴殿の家の前に捨てておくかもしれません」
ロバートは、おそらく、エドガー殿はジェイドとの街での騒動を耳にしたのだなと思った。娘が男に乱暴目的でさらわれたよりも好きな男と駆け落ちしたという評判の方が妹にとってはまだマシだろうと考えたに違いない。
「わかりました。確認させていただきます。お許しいただき、ありがとうございます」
ロバートは貴族の礼で答える。
「ふん」と言ってエドガーは去って行ったのだった。
アデリーナがガクッと腰が抜けたように座り込みそうになるのを
「アデリーナ」
とロバートが支える。
「ろ、ロバート様」
「ロバートと。これからあなたは私の妻になるのだから。よく頑張ったね」
二人で見つめ合っていると、
「あ、アデリーナ様ぁ~」
泣きながらアイリーンがやってきて、アデリーナを抱きしめこっそりと伝える。
「アデリーナ様、良かった。馬車でジェイド様に連れて行かれるのをみて、すぐにロバート様にお伝えしたのです。良かった。間に合ったのですね。良かった、良かったわぁ」
「アイリーン様が伝えてくださったのですね。ありがとうございます。アイリーン様のお陰ですわ。」
二人で泣き通しである。
「アデリーナ、とりあえず、ここから離れよう。私の屋敷へ行こう」
ロバートが優しくアデリーナに伝える。周囲を見回せば、令嬢の多くは、駆け落ちなんて素敵、憧れるわと話しているが、保護者と教師の方は、なんてこと、最優秀をとった女性が情けない、親が勘当するのも当然ですわねと噂している。
「はい、ロバート。アイリーン様、本当になんてお礼を言って良いか。ありがとうございます。また、後日連絡いたしますわ」
二人は、ケント子爵家のタウンハウスへと移動したのだった。
そうね、拐かしにあったなんて不名誉な噂が流れてしまえば大変なことになってしまう。まだ、二人で駆け落ちをするつもりだったという方が私の名誉は守られるわ。
「わかりました。皆さんの前で話します。」
「ありがとう。あなたは私の話を肯定してくれるだけで良いから。ただ、兄上とお母上のお怒りを考えると申し訳ないが・・」
「どちらにしても、このままではスコールに連れ戻されます。もう、これしか方法はないと思うのです」
「ああ、本当にそうだね。ケントは緑豊かなところだ。あなたも気に入ってくれると思う。一緒に領地で穏やかに過ごそう」
二人は微笑んで固く決心をする。
女学院に戻ると騒ぎになっている。女子学生が突然いなくなったのである。警備の男達が騒然としている。
「アデリーナ、申し訳ないが打ち合わせ通りにお願いします。」
「わかりました。大丈夫ですわ。」
馬車に女学生が載っていることがわかり、周囲は騒然とする。そして、学院のメインエントランスで馬車が止まる、ロバートが先に降り、アデリーナの手を取り馬車から下ろす。
「アデリーナ!」
「お兄様、お母様、ごめんなさい。つい出て行ってしまって」
「どういうことだ。私たちはお前がいない、もしかして誘拐されたのかと焦っていたのだが」
「いえ?私はお二人が認めてくださらないので、ロバート様とこっそりお会いしてこれからのことを相談しようと出かけてしまったのです。何かの誤解ですわ。」
「クラウン殿、このような大切な日にお嬢様を連れて外に出てしまったこと深く謝罪いたします。ですが、私たちは深く愛し合っているのです。どうか結婚をお許しください」
「何をいう。こんな卑劣な形で妹を連れて行く男を許すわけがない。さあ、アデリーナ、こちらにきなさい。」
「嫌です。私はロバート様のことを愛しているのです。」
卒業式の直後である。それなのに、こっそり二人で出かけて帰ってきてのプロポーズである。保護者が怒り心頭になるのも当然である。メインエントランスで、周囲には警備員や教師、他の令嬢の保護者もいる中で、突然いなくなったと思って心配していたところで男と一緒に帰ってきたのである。クラウン家にとって面目丸つぶれである。
「話にならん。貴族の令嬢は親のいう結婚相手と結婚するのが普通のことだ。それを無視して親の顔に泥を塗るつもりか」
エドガーの怒りはおさまらない。
「失礼します」
突然、クラウン家の召使いが小走りにやってきたと思ったら、エドガーに小声で何か話しかけている。
少し顔がこわばったと思ったら、ふうっとため息をつきこちらを睨みつける。
「・・・アデリーナ、お前は本当にその男が好きなのか?」
「はい、お兄様、ロバート様をお慕い申し上げております。」
「それではお前はもう今日から我がクラウン家とは絶縁だ。勝手にどこの男とでも結婚してしまえばよい。二度とクラウン家の敷居はまたがせん。これは嫡男としての決定だ」
「エドガー!なんてことを言うの! お父様が知ったら、なんておっしゃるか!」
母が反対するが、
「これは最終決定です。さあ、まいりましょう。母上、もう、アデリーナは他人です。ケント殿、彼女の荷物は我々にとって不要なもの、ごみと同じです。貴殿の家の前に捨てておくかもしれません」
ロバートは、おそらく、エドガー殿はジェイドとの街での騒動を耳にしたのだなと思った。娘が男に乱暴目的でさらわれたよりも好きな男と駆け落ちしたという評判の方が妹にとってはまだマシだろうと考えたに違いない。
「わかりました。確認させていただきます。お許しいただき、ありがとうございます」
ロバートは貴族の礼で答える。
「ふん」と言ってエドガーは去って行ったのだった。
アデリーナがガクッと腰が抜けたように座り込みそうになるのを
「アデリーナ」
とロバートが支える。
「ろ、ロバート様」
「ロバートと。これからあなたは私の妻になるのだから。よく頑張ったね」
二人で見つめ合っていると、
「あ、アデリーナ様ぁ~」
泣きながらアイリーンがやってきて、アデリーナを抱きしめこっそりと伝える。
「アデリーナ様、良かった。馬車でジェイド様に連れて行かれるのをみて、すぐにロバート様にお伝えしたのです。良かった。間に合ったのですね。良かった、良かったわぁ」
「アイリーン様が伝えてくださったのですね。ありがとうございます。アイリーン様のお陰ですわ。」
二人で泣き通しである。
「アデリーナ、とりあえず、ここから離れよう。私の屋敷へ行こう」
ロバートが優しくアデリーナに伝える。周囲を見回せば、令嬢の多くは、駆け落ちなんて素敵、憧れるわと話しているが、保護者と教師の方は、なんてこと、最優秀をとった女性が情けない、親が勘当するのも当然ですわねと噂している。
「はい、ロバート。アイリーン様、本当になんてお礼を言って良いか。ありがとうございます。また、後日連絡いたしますわ」
二人は、ケント子爵家のタウンハウスへと移動したのだった。
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