思いが重なるとき

やぼ

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手紙の住所から

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祖母の弟、郷田一郎は、父、久生の
手紙をマヤに、預かって欲しいと
手渡した。

吉岡瑠璃子の日記と一緒に
保管して欲しいと託されたのだ。

そして、祖父と帰宅したマヤは
手紙の住所を見て驚いた。

そこは、母とついこの前まで
住んでいたアパートの住所だったのだ。

背中が寒くなるくらい
ゾクゾクっとした。

こんな偶然があるだろうか。
しかし、良くみると番地が違ってる。
これは、もしかしたら、あの図書館の
住所なのではないかと思った。

このことを、母の春菜に聞くと
確かにそうかもしれないと
母は頷いた。

図書館の歴史なら、山中さんに
聞いてみる!とマヤは春菜に言って

LINEで話しかけた。

これまでの経緯をざっくりと
説明して、日記の持ち主の住所が
実は図書館だったことを書くと

!!(゜ロ゜ノ)ノええ-?

っと、驚く山中さん。

そんな曰く付きなの-❗っと
((( ;゚Д゚)))震えた絵文字も送ってきた。

私には、その吉岡さんの家のことは
分からないから、早川さんに
聞いてみるねと返事が来た。

しかし、早川さんは、更に館長に
聞いてくれたみたいだった。


前の図書館が老朽化して移転することに
なった時、ちょうど売りに出ていた
吉岡さんの土地が広さ的にも最適地だった
のだそうだ。

吉岡酒造は、老舗の造り酒屋だったらしい。
地元の名士でもあった吉岡宗太郎は
国会議員でもあったと教えてくれた。


そのことをリビングにいた
母や祖父、叔母の範子に教えると
母は、また驚いた。
「嘘でしょ…」とため息をついた。

吉岡宗太郎の息子は、その昔、母春菜の
婚約者だったのだ。

祖父が怒って掴み合いの喧嘩に
なった相手が吉岡宗太郎だった。

祖父嘉孝の事業が飛ぶ鳥を落とす勢いで
伸びて行ったのとは逆に、吉岡の家は
宗太郎の贈収賄疑惑もあり、没落して
いったそうだ。

宗太郎の息子は、その後、行方不明に
なった。父親に勘当されたとか
いろんな噂が飛びかったと範子が言うと

「あんな男の家に嫁がなくて
幸いだったな。」と、ボソりと祖父が
呟いた。

母、春菜は口を真一文字に閉じて
何も言わず、硬い表情だった。


でもまさか、そんな縁で繋がっていたとは
新田家は何も関係ないと言えばないのだが
不思議な縁を感じたマヤだった。

吉岡宗太郎は、瑠璃子の兄の息子であり
瑠璃子は叔母にあたるようだ。

瑠璃子は、長崎に行って被爆したのだろうか?
それともどこかで生きていたのだろうか?
生きているとしたら、いくつなのだろう?
もう亡くなっているのかもしれない。

「ママ、この日記どうしようか?」
「うん。また、図書館に戻そうか。」
「ひいおじいちゃんのお手紙も?」
「そうだね。二人を一緒にしてあげないと」

「おばあちゃん、もしかしたら、図書館が
お家だと知ってて、返しに行ったのかな?」

「でも、ひいおじいちゃんがお手紙も
一緒にして欲しくて、私の前に現れたの
かもしれないよね。」

「全く、新田の家には関係ないことで
迷惑な話だな」

祖父は、まだ怒っていた。


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