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二章『パテ編』
第33話 蜥蜴軍団1
しおりを挟むタスレ村を出てから2ヶ月が経過した。
いくつか村を経由しつつ旅は順調に進んでいる。
「む、また魔物だにゃ」
「最近増えましたね」
ここ数日、魔物と出くわすことが増えてきた。しかも全てが同じ種族。蜥蜴剣士(リザードソードマン)や、蜥蜴魔法使い(リザードウィザード)といった、爬虫類系の魔物なのだ。
「バーガー様、射ますか?」
「うん、射れ」
「射ました。こうしていると、なんだか故郷でのことを思い出しますね」
俺は100頭以上の青猪が村を襲撃した時のことを思い出す。同種族の繁栄。ということは統率する親玉がいる可能性が高い。
「タスレ村でにゃにかあったのか?」
「はい、村の近くでも同種の魔物が大量発生したことがありました」
「ふーん、その原因は判明したのか」
「上位互換の魔物が原因でした」
「にゃるほどにゃ、その親玉が生態系を崩していたんだにゃ」
「はい」
「てことは、ここら辺にもいる可能性が高いにゃ、みんにゃ、気を引き締めていくよ」
エリノアの言う通りだ、気を引き締めていこう。
「お、この蜥蜴剣士(リザードソードマン)、いい鱗してるにゃ、何枚か剥いでおこう」
って、おい!
「ニャッ!! ジゼルにゃにをする、尻尾を握るにゃんて! ぜったいにゆるさにゃい! ぜったいににゃ!」
「エリー、お金に目がくらんでる」
「うぐ、す、すまん。ゆるしてほいしよ。今のセクハラはにゃかったことにしてやるから、ニャッ!! ニギニギしちゃダメにゃの!」
数日して村に着いた。看板に書いてある村の名前はツナコマ村。しかしいつも立ち寄る村とは様子が違った。門は突破され、家は焼き払われている。アイナは倒れている村人に駆け寄って抱き起こす。俺は肩に乗っているので一緒だ。エリノアとジゼルは周りを警戒してくれている。
「だ、大丈夫ですか!?」
倒れている村人はうめき声をあげて目を覚ます。目を見開いてアイナを見るや、消え入りそうな声で話し始めた。
「ま、魔物が攻めてきた、早く王国に助けを······このままでは村が······」
「バーガー様、治癒魔法をお願いします!」
「任せろ」
俺は挟んである薬草を使い魔法を発動させる。常に5枚挟んであるので余裕がある。一度の治癒(ヒーリング)での回復量は完璧に把握している。うむ、これは3回必要だな。上薬草なら1発でもお釣りがくるが、ワガママは言ってられまい。
「『治癒(ヒーリング)』『治癒(ヒーリング)』『治癒(ヒーリング)』」
俺は萎びた薬草を吐き出す。村人の傷は完全に癒えた。村人は驚きの表情で立ち上がる。
「お、おお! 傷が治った。エルフさんはヒーラーなのかい?」
「いえ、こちらの勇者様が貴方の傷を癒してくださいました」
「え、こちらの勇者?」
ここで初めて村人と目が合った。どうやら俺をオシャレアイテムか何かだと思っていたらしい。
「どーもー、バーガーでーす」
「あ、あ、あ、ありがとうございます。ま、まさか勇者様にお助け頂けるとは思ってもいなくて」
目が泳いでますよ、村人さん。
「はにゃしは村の奥にいってからだ。外の近くはあぶにゃいよ」
俺たちは村の中心まで移動した。そこに広がる光景は俺達の村が青猪(ブルーボア)に襲われた時と酷似していた。仮設テントに怪我人を寝かせて女子供が手当をしている。
「どんな魔物でしたか?」
「蜥蜴(リザード)系の魔物だ、火球を使うタイプと剣を使うタイプ、弓を使うタイプや、盗賊(シーフ)風の蜥蜴(リザード)もいたな」
「まるで冒険者パーティ」
ジゼルが呟く、完全に統率が取れている。それに青猪(ブルーボア)と違い職種の概念がある。つまり役割分担をするのだ。これでは人同士の争いと同レベルだ。
ですが、もう大丈夫ですよ、勇者が来ましたからね。
「バーガーどうする?」
「俺は勇者だからな、全てを救うのみさ」
「えー、ミーは反対だにゃ、敵の戦力も分かってにゃいのに無謀もいい所だよ」
「エリノア、私たちは勇者一行ですよ、困っている人がいたら助けるべきです」
「にゃー、わかったよ、にゃっとくするから、ちょっと打算させて欲しいにゃ」
エリノアは背中のリュックから算盤を取り出して、わざとらしい動きで弾き始める。
「······バーガーがここで村を救わにゃいと、王様がバーガーを勇者と認めてくれにゃくにゃる、そうすると任務(クエスト)自体がにゃかったことに······あ、やっぱり手伝うにゃ、人を救うってのは勇者の役目だよにゃ!」
「こいつ······」
こうして、俺たち勇者一行は蜥蜴退治に乗り出したのであった。
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