現代最強は楽しいハンバーガーに転生しました

二章『パテ編』

第５８話 大喧嘩祭５

　トーナメントは順調だ。

　火力を調節した火（ファイヤー）の玉（ボール）をぶつけるだけで大抵勝てた。事前にジゼルに水魔法を用意するように言っておいたので、安心して放つことができた。

　この鱗は、蜥蜴軍団とやりあった際に、エリノアがちゃっかり蜥蜴魔法使（リザードウィザード）いから剥ぎ取ってくれていたのだ。まだまだ備蓄がある。

セコンドのジゼルが声を張った。

「油断大敵。バーガー気を抜かずに、一撃でももらえば形成は逆転する」
「ああ！」

　小一時間後。

「Ａブロック決勝進出者はバーガー・グリルガードだああああ！」

　会場が沸き立つ。予選の苦戦が嘘のような快勝だった。実にいい気分だ。アニソンの１つでも歌いたい気分だ。

「では次はＢブロック第１回戦を開始します！」
「ろ、ロンさん！　た、大変です！」

　ロンのところにスタッフが慌てて駆け寄る。俺はすぐ側にいたので話し声が聞こえる。

「Ｂブロックの控え室で食中毒です。殆どの選手が腹痛を訴えて、医師に診てもらっています」
「なんだと！」

　俺はいてもたってもいられなくなって跳ね出した。アイナとエリノアは無事かッ！

　Ｂブロックの控え室に着くと、みな唸り声をあげて横になっている。

「アイナ！　エリノア！　いるか！」
「あ、バーガー様！」
「アイナ、よかった大丈夫だったか、エリノアは？」
「大丈夫だにゃ」

　エリノアが柱の影から出てきた。２人とも大丈夫で何よりだ。

「おやおやぁ、なんだか、大変なことになりましたねぇ」
「お前はミーを騙した奴！」

　トイレから白スーツの男が現れた、どうやら彼もＢブロックに振り分けられていたようだ、しかも食中毒になっていないらしい。

「いやぁ、皆、次々に苦しんでトイレに駆け込むもんだから、私、ずっとトイレ我慢していたんですよ、ああ、スッキリした」
「そんにゃことはどうでもいい！　とっちめてやる！」
「あらあら、ダメですよ、今私をとっちめるのはオススメできません」
「ぐぅ」

　そうだ、今は大喧嘩祭のトーナメントだ、試合以外で騒ぎを起こせば、失格にされてしまう。それではこいつの思う壺だ。

「もうよろしいですかな？　Ｂブロックの試合が始まりますよ？　お茶を飲んでいない貴女たちも早く移動した方がよろしいですよ、ふふふ」

　そういって、白スーツの男は会場に向かって歩いていった。いつの間にか後ろにいたジゼルが口を開いた。

「２人とも無事？」
「にゃんとかにゃ、何も食べずにアイにゃと話していたから食中毒にもにゃらにゃかったよ」
「そう、ならいい。??????？」
「ジゼルどうした？」
「さっきすれ違った男に見覚えがあったような??????どこだっけ思い出せない」

　ジゼルが悩んでいると、遅れてスーが控え室に来た。その手には、この世界では珍しい風船で作られた犬を持っている。

「スー、その風船どうしたんだ？」
「おじさんがくれたの！　かわいいの！」
「そ、そうか」

　なんだか、嫌な予感がするな。これ以上何事もなければいいのだが。