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二章『パテ編』

第83話 モノマ村17

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 開戦の火蓋を切ったのはエリノアだ。エリノアが片手剣を背負い、走り出す。

 燃(レッド)え盛る真(フレイム)っ赤な炎(バーニング)部隊がその後を追従する。遅れて村人たちが走り出す。

 魔物村(モンスタービレッジ)から鐘の音が聞こえる。幻影大鷲(アパリションイーグル)はどこにいる、まだ空には何も飛んでいない。

 俺は、俺とアイナを乗せた聖騎士にモーちゃんを預けた馬小屋に行くように指示を出す。

 まだあそこで縛られたままか、最悪の場合、奴らに食われて······。ええい、最悪は想定するだけにしろ! 悲観はしても気分は明るくだ!

 エリノアが門兵を斬り伏せると、門兵に掛かっていた魔法が解けて軍鶏剣士(シャモソードマン)が姿をあらわにする。

 エリノアはそのまま村の中に走っていく。エリノアには目に付く敵をすべて斬るように指示してある。辻斬りとして戦場を荒らしまくるのだ。

 後に続いた燃(レッド)え盛る真(フレイム)っ赤な炎(バーニング)部隊も槍で敵を突き倒していく。掴みは上々。村人たちも魔物村(モンスタービレッジ)になだれ込む。本格的に戦闘が始まる。

「ぐっ!」

 前方から突撃してきた矢啄木鳥(アローウッドペッカー)を槍の柄の部分で防御した聖騎士の馬が大きく仰け反る。アイナは俺を抱えて飛び降りる。敵が多く乗りなおしている時間はない、ここからは徒歩だ。

 前方から殺人兎(キラーラビット)が3頭現れる。凶暴で機動力のある魔物だ、こちらに気づいて真っ直ぐに襲ってくる。アイナは身を翻し矢を3本連続で放つ。3頭の殺人兎(キラーラビット)の眉間に矢が生える。瞬く間に仕留めた。

「よし、このままモーちゃんのところに向かうんだ」
「はい! バーガー様!」

 俺とアイナを10名の聖騎士が追い抜く。大通りを通って手当り次第に魔物を槍で突き刺していく。道を開けてくれたのだろう。感謝しつつも俺たちは前に進む。

 10分して馬小屋に到着した俺たちは、馬小屋の前にいる軽業猿(アクロバットモンキー)を射殺して中に入る。

「モーちゃん!」

 いた! 一番奥で縛られている。今行くぞ、って、んん?

「バーガー様、モーちゃん大きくなっていませんか?」
「だよな、ていうかデカいなこりゃ」

 モーちゃんの目の前に立ってハッキリしたが、成牛と同じくらい成長している。たったの2週間でこれほど顕著な成長をするわけがない······。

 それにモーちゃんの鼻息が荒い、どうしたというのだ? 魔物たちに何をされた? 血走った目がアイナを捉える。アイナは物怖じすることなく、モーちゃんの目を見つめる。

 その時、馬小屋の天井が破壊される。飛び散った木々を回避した俺とアイナは、天井の穴から現れた魔物を睨みつける。

「やはり来たか人間、そいつを取り戻しに来ると思っていた」

 流暢に喋ったのは幻影大鷲(アパリションイーグル)だ。これでハッキリした、この声は宿屋の主人の声だ、主人に化けていたのは幻影大鷲(アパリションイーグル)だったのだ。

「その口ぶりからすると、モーちゃんに何かしたのはお前か?」
「ククク、斧牛(アックスブル)はいま、私の催眠術に掛かっている」
「なに!?」

 俺たちを見て反応がないということは、洗脳されているようなものか? ······これがAランクの魔物の技。しかし、急成長したのは何故だ?

「なんであんなに成長したんだ? 餌の違いか? どんなのを使ったんだ?」
「ふ、教えるわけがあるまい。そら仲間同士で殺しあえ」
「お前倒せば催眠術解けるんだろ! やるぞアイナ!」
「はい!」

 その時、後ろから柵を破壊する音が聞こえる。素早くクラウン部分を180度回転させて後方確認する。モーちゃんが前足で砂を掻き、こちらを睨みつけている。

 成牛になった斧牛(アックスブル)の魔物ランクはAランク。俺たちはAランクの魔物2頭に囲まれている。

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