現代最強は楽しいハンバーガーに転生しました

黒木シロウ

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二章『パテ編』

第84話 モノマ村18

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「目を覚ましてください!」

 アイナの呼びかけ虚しく、モーちゃんは頭を振るい、こちらに狙いをつけている。殺すわけにはいかないが戦わないわけにもいかない。

「アイナは幻影大鷲(アパリションイーグル)の相手をしてくれ」
「バーガー様? まさか!」
「俺はモーちゃんを食い止める」
「こ、殺してしまうのですか?」
「いいや、殺さない、殺したら俺は勇者じゃなくなる」
「わかりました!」

 アイナは矢をつがえる、後ろは一切見ない。俺を信じて任せていてくれていると思うと、このハンバーガーの体にも力がこもり熱がでる。目の前には猛り狂う斧牛(モーちゃん)。

「こんなにされちまってよ、それでもお前はこの2ヶ月、俺たちの仲間だったじゃねぇか。だから安心しろ、勇者の俺がお前を」

 俺が話し終わる前に、モーちゃんは斧型の角を振り上げる。斧牛(アックスブル)は攻撃特化のAランク魔物だ、この攻撃をまともに受ければ真っ二つにされる。俺は魔法を発動させる。

「『鋼鉄(ボディオブ)の体(スチール)』」

 俺は天井を突き破り空高く吹き飛ばされる。普通ならアイナの悲鳴が聞こえるが、アイナはただ眼前の敵を見据えている。

 ま、そんな動体視力自慢はいいとして、さてどうしてくれようか、この重力任せの一撃。

 俺は全身アルミホイルのような色合いになり、傷一つついていない。生前の黄金の肉体に比べれれば柔らかいがそれでもあの猛撃を受けるに足りる高度のようだ。喰らえモーちゃん、俺の一撃を!

 俺の頭突きを額に喰らい(全身頭なのでどこで当てても頭突き判定だ)、モーちゃんは大きくよろめく。痛いよな。今楽にしてやるぞ。俺が次の魔法を発動させようとした瞬間。

「バーガー様!」

 俺は再び空中にいた。なんだ?

「なかなかやるようだな、だがここで斧牛(アックスブル)を倒されるわけにはいかない」
「幻影大鷲(アパリションイーグル)か、邪魔をするな!」

 そう幻影大鷲(アパリションイーグル)が俺を掴んで飛び上がったのだ。

 話している間もぐんぐん高度を上げていく。
 ほう『高い高い』ならぬ、『他界他界』させようって魂胆か。やかましいわ!

「アイナ! やれ!」
「はいっ!」

 アイナは上空にいる幻影大鷲(アパリションイーグル)を狙って矢を放つ。しかし、幻影大鷲(アパリションイーグル)の回避性能は異常だ。蜻蛉のような動きで矢を回避する。

「違うんだよなぁ、回避するんじゃ足りないんだよなぁ、なぁジゼル」

 次の瞬間、矢が爆発した。幻影大鷲(アパリションイーグル)の悲鳴が響き渡る。

 実は今の矢にはジゼルが作った巻物(スクロール)が巻き付けてあったのだ。アイナが魔力を込めて射ると数秒後にに爆発する仕組となっている。名を爆裂矢(エクスプローションアロー)。

 幻影大鷲(アパリションイーグル)は二段構えの攻撃に完全に不意を突かれた。形を保っているのはさすがAランク魔物といったところだろうが、コントロールを失い錐揉み回転している。ちなみに俺は無傷だ。鋼鉄(ボディオブ)の体(スチール)で得た鋼鉄の体は相当な硬度らしいな。

「なぁ鳥野郎」

 俺はこう言ってやる。

「挟んでやろうか?」

 幻影大鷲(アパリションイーグル)は口角を引き攣らせる。鳥類の魔物のくせにいい表情をするじゃないか。倒したら俺の具材にしてやろう。俺は短剣をしっかりと加えて、落下の衝撃に備える。

 馬小屋に落下した俺は体勢を立て直し幻影大鷲(アパリションイーグル)に襲いかかる。アイナが反対からも攻めて挟撃の形となる。

 それでも幻影大鷲(アパリションイーグル)は強い、翼を鋭利な剣のように羽ばたかせて、俺たちの攻撃を受けている。ならば頭突きだ!

 俺は突っ込んだ。鋼鉄(ボディオブ)の体(スチール)の効果はまだ残っている。幻影大鷲(アパリションイーグル)の翼を突破して腹に激突する。

 大きな口を開き叫ぶ幻影大鷲(アパリションイーグル)は、突如目を光らせる。幻覚か、催眠術を使うつもりだろう。対策は万全だ、俺は魔法を発動させる。

「『鏡の盾(ミラーシールド)』」

 俺の前に魔力生成された鏡の盾が出現した。幻影大鷲(アパリションイーグル)の放つ光をそのまま反射する。

 幻影大鷲(アパリションイーグル)はまさしく千鳥足を踏んでいる。アイナは弓を構えて矢を放つ。

 あの紫色の矢羽は毒矢だ。毒矢を目に受けた幻影大鷲(アパリションイーグル)は悲鳴をあげて飛び上がる。

 徐々に力を失っていき、最後は墜落機のように村の中心に落ちていった。
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