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二章『パテ編』

第94話 モノマ村27

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「敵も死にものぐるいでくる、気をつけて」
「はい!」

 ジゼルがアイナに激を飛ばす。

 俺はエリノアが拾って挟んでくれた骸骨兵士(スケルトンソルジャー)の骨から魔力を補給して力を取り戻す。

 エネルギー補充の済んだ俺は再び作戦を練る。

 最後にモーちゃんの声が聞こえたのが透明龍(インビジブルドラゴン)の切断された下半身からだ。今は聞こえなくなっている。一刻も早く助けなければならないが、元凶を排除するのが最優先事項だ。

 どうやって消えている奴の居場所を知る? モーちゃんの助けはもう無い。

 考えろ! 考えろ! 考えろ!

 行き詰まった時は、最初から考えるんだ。
 俺たちが初めに村を訪れた時、幻影大鷲(アパリションイーグル)が下級の魔物を従えて宿屋を囲んだ時、どうして透明龍(インビジブルドラゴン)は出てこなかった?

 あの時、そうあの時だ。あの時は雨が降っていた。雨が降るとどうなる? 知らん、試せ!

「ジゼル! 雨を降らせることはできるか!?」
「トラストミー」

 ジゼルは天にマイクを向ける。

「始まりはヘイズ! 時点でミスト! 更なるフォッグ! 集いてクラウド! 飽和しレイン! 乱れるサンダー! 急襲せしはゲリラレイン!」

 ジゼルの歌詞魔法(リリックマジック)にあわせて、空に発生した霧が急成長していく。あっという間に大きな雨雲へと変わり、局所的なゲリラ豪雨が吹き荒れる。

「なるほど、奴が雨の日に襲ってこなかった理由がわかった」

 雨粒が不自然な動きをしている箇所がある。まるでそこに何かがいるかのように、そう透明龍(インビジブルドラゴン)のシルエットを雨粒一つ一つが描き出しているのだ。

 雨で透明龍(インビジブルドラゴン)の姿があらわになると、幻影大鷲(アパリションイーグル)がジゼルに迫る。魔法の発生源であるジゼルを倒そうというのだ。

「はぁ!」
「やぁ!」

 アイナとキッドが間に割って入り、幻影大鷲(アパリションイーグル)を斬りつける。しかしAクラス魔物の体は硬く切断には至らない。

 幻影大鷲(アパリションイーグル)は避けるでもなく、地に足をつけて、その巨体を活かして押し切ろうとしてくる。2人がかりでも押されてしまう。

 そこでキッドが大声をあげた。

「剣技、炎熱圧斬!」

 キッドのその声を受けて、剣についていた雨粒が蒸発する。熱気がここまで伝わってくるようだ。真っ赤になった刀身は、見るからに相当な熱を帯びている。

 そこから先は速かった。

 幻影大鷲(アパリションイーグル)の左の翼を熱で切断したのだ。

 その時すでに距離をとっていたアイナが、目に何本もの矢を射て幻影大鷲(アパリションイーグル)にトドメを刺す。

 幻影大鷲(アパリションイーグル)は断末魔をあげてその巨体を地に伏せる。
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