現代最強は楽しいハンバーガーに転生しました

黒木シロウ

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二章『パテ編』

第99話 モノマ村31

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「はっ!!」

 俺は意識を取り戻す。そこは戦場ではなく部屋だった。クラウンを急速回転させて周りを見渡す。部屋は暗く月明かりだけが頼りだが、この間取りには見覚えがある、ここはジンニン村の宿屋だ。

 外から音は聞こえない。時刻は深夜のようだ。

 俺はテーブルの上に置かれた皿に乗っている。布は被せてないが、ホコリがかぶっていないところをみるに、手入れされているようだ。

 次に俺は具材を確認する。む!? これは上薬草(レタス)か! 魔力濃度が高いところにしかないはずだが。

 体は······よし、ちゃんと動くな、千切れたりしたんだろうが、無事に再生してくれたようだ。

「バーガー」
「ジゼル?!」

 部屋の隅にいたから気が付かなかった。目にくまをつけてどうしたんだ?

「他の皆は?」
「無事」

 よかった。······ならなんでそんなに暗いんだ?

「あれから1週間が経過」
「1週間も」
「みんな無事というのは嘘。バーガーは細切れのパンくずになってた」
「パンくず······か」

 俺の体は欠片からでも再生できてしまうのか。たぶん女神の魔法陣が僅かにでも残っていて、レタスから魔力を吸収して、再生したのだろう。

「この1週間」
「うん?」

 ジゼルの様子がおかしい。そんなに心配させてしまったのか?
 まぁ、そりゃそうだろうな、普通ならパンくずからの再生なんて不可能に近いだろうし。

「バーガーの魔法陣を調べていた」
「え?」

 俺が女神のところにいる間にバンズをめくっていたってわけか。まぁいいけど、それでくまを作っているのか?

「アイナたちには治療と言っておいたけど、内緒でバーガーの魔法陣を少しづつ傷つけて、バーガーが覚醒するのを遅らせた」
「······なんでそんなことを?」

 だから再生に1週間もかかったのか。

「······どうして」
「魂(マテリア)の実体化(ライズソウル)」

 あの俺の魂を具現化する魔法がどうしたというのだ? 皆には勇者の魂と嘘をついているが。

「あの魔法を知らないと言ったのも嘘。あの魔法は術者の魂を具現化する魔法」
「知っていたのか!?」
「本来なら術者と同じ姿が魔力生成される。なのにバーガーはハンバーガーが具現化されなかった。あの姿が本来のバーガーの姿」
「······」

 なんだ? どうしたんだ? ミステリーもので犯人が探偵に追い詰められるような······そんな嫌な感覚に襲われる。

「前に魔法陣を写しきれなかったって言ったのも嘘。暗記しているから、皆が寝ている時に写しは完成させてある。そして頭の中で考えて、この1週間、現物を改めて見て理解した」
「何が言いたいんだ」
「バーガー、君は一体誰?」

 ジゼルはそれとなく構えている。マイクは右手に持っているし、既に立ち上がって俺を見下ろしている。臨戦態勢だ。

「俺は勇者だ」
「それは生まれた後の役目。生後1ヶ月で人の言葉を解した理由にはならない」
「それは、人とは違う学習能力がだな」
「嘘。バーガーは普通の人間程度の知能しかない」

 これでも記憶力は良くなったんだけどな!

「魔物の一部には、物に怨念が宿って魔物化することがある。稀に生前の記憶を持ったまま転生するケースもある」
「だから何が言いたいんだ」
「バーガーは転生者。あの魔方陣のほとんどは今の道具じゃ解析不能だけど、それだけは断言」

 ······ここまで来てしまったか······。
 だが半分正解と言ったところか。転生元が異世界だとは気づいていないようだ。黙っていよう。

「バレたか。他の皆には言ったのか?」
「······前に黙っていると約束した。だからこうやって1人の時に話した」
「そうか······俺が悪い魂を持っていたら、ジゼルに危険が及んでいたぞ?」

 ジゼルは俺の顔をじーっと見ている。何か顔についているのか。

「準備をしておいた」

 ジゼルがそう言うと、床一面が薄らと光る。これ全部が魔法陣がよ!

「バーガーが変な気を起こしても、足の裏から魔力を流すだけで、拘束魔法が発動できるようにしておいた」
「用意周到だな」
「万全を期すのは魔導師の役目」
「じゃあ、もう分かったろ? 俺は魔王を倒すために転生してきた筋肉ムキムキの好青年って事が」
「結構。歳がいってた」
「だ、だまらっしゃい!」

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