現代最強は楽しいハンバーガーに転生しました

黒木シロウ

文字の大きさ
100 / 1,167
二章『パテ編』

第100話 モノマ村32

しおりを挟む
秘密がバレたところで(まだバレてないこともあるが)、俺はジゼルからこの1週間の事を聞いた。

「モーちゃんは生きているのか?」
「生きてる。透明龍(インビジブルドラゴン)の胴体を切断するのがあと少しでも遅れていたら、モーちゃんは死んでいた」
「よかった、······催眠は解けたのか?」
「私が催眠解除(リリースヒプノシス)で解いた」
「そうか、ありがとう」
「礼には及ばない。私はバーガーを疑った」
「俺が隠し事をしていたからな、それに慎重なのはいいことだ。それで戦死者は······出たのか?」
「出てない。村人を早めに下げたのはいい判断」
「大勝利か」
「うん。この1週間、お祭り騒ぎだった。私はここにこもっていたけど······ふぁ、眠い、バーガーが起きたことは明日の朝一番に報告する、だから眠っていい?」
「ああ、俺も起きたてだが、寝ていたわけじゃないからな」

ジゼルは首を傾げる。緊張の糸が切れて気だるそうにしている。

「いや、ほら、普通に寝ていたわけじゃなくて、意識が飛んでいたわけだからな。疲れているって意味だよ」
「そう、ならいい、おやすみなさい」
「ああ、おやすみなさい」

翌朝。宿屋の一室に勇者パーティが集まっている。寝起き姿のままのアイナが俺を抱き上げる。

「バーガー様! 目を覚ましたのですね!」
「心配をかけて悪かったな!」
「ホントだにゃ、アイにゃにゃんて、近くの山菜が取れるポイントまで行って上薬草を取ってきたんだよ」
「ありがとう、アイナ」
「えへへ」
「バーガーも起きたことだし、これでやーっとモノマ村の戦いが終わったにゃ」
「あれ、そういやスーは?」
「んにゃ、馬小屋でモーちゃんと眠っているはずだよ」

現状確認をしていると、外が騒がしくなる。燃(レッド)え盛る真(フレイム)っ赤な炎(バーニング)部隊、隊長のキッドが駆け足で部屋に入る。

「勇者御一行! おはようございます!」

朝から元気なキッドの大声に各々が返事を返す。暑苦しそうだ。

「宿屋の主人から聞きました、勇者様が目を覚まされたようで」
「ああ、少し居眠りしすぎた」
「もし勇者様がこのまま目を覚まさなかったらどうしようかと、村の警備をしながらこの1週間みんなで話していましたが、こうしてお目覚めになられて何よりです」

その後、俺は広場にて村人たちから祭り上げられた。村で祭事に使われる台に乗せられて、神輿のように担がれた。

ジゼルからは、病み上がりでやめた方がいいとも言われたが。

病み上がりなんてハンバーガーには関係ないからな。病み上がる肉体がないのだから。

丸1日、村の中を練り歩き(運ばれた)。帰る頃には日が沈み始めていた。

俺は宿屋に帰るとその足で、村長の家に向かった。キッドにも来るように言ってある。今後の話をしておく必要があるだろう。

「バーガー様、私も行きます」
「分かった付いてきてくれ」

村長の部屋には、俺とアイナ、向かいの席には村長とキッド。床にはスーが寝転がっている。

村長が丁寧な態度で俺に向かって口を開いた。

「勇者様、改めてお礼を言わせてください。村を救っていただき有難うございます。誰1人として戦死者が出なかったのはバーガー様のご決断によるものと聞いております」
「勇者として当然のことをしたまでだ。それに生き残れたのは各自の頑張りだ。俺はそこまではしていないさ」

キッドが興奮した様子で割り込む。

「いやぁ、それにしてもですよ! 透明龍(インビジブルドラゴン)を討伐するとは······勇者様の力を確信いたしましたよ!」

小龍(ワイバーン)より強いんだよな。でもそれは消える能力があるからで、それを封じてしまえばSクラスの魔物の中でも下の方だろう。

「そうですよ、バーガー様はすごいんですから!」
「なんでアイナがドヤ顔しているんだ」
「アイナさんもあの弓の腕前、惚れ惚れしました。聖騎士としても働けますよ」
「本当ですか!?」

アイナは目をキラキラさせている。そりゃそうか、聖騎士ってのは冒険者に次ぐ子供の憧れの職業だしな。野球選手やユーチューバーみたいなものだ。

「引き抜きはやめてもらおう、アイナは俺のパーティメンバーだ」
「まさかそんな、勇者様のお連れの方を連れていくわけにはいきませんよ」
「それでだが、モノマ村はどうするつもりだ?」
「はっ、国王様に報告後、軍を配備することになるかもしれません」
「あの村をそっくりそのまま奪ってしまったらどうだ?」
「モノマ村をですか、それはいい案ですね。魔力濃度が高いのは気になりますが、生息していた魔物は全て討伐してありますからね。奪うとすれば今が絶好の好機でしょう」
「ならば、その方向でも考えていてくれ。国王には勇者からの案と言っても構わない」
「はっ! その際の村の名前はどういたしましょうか?」

村の名前か、そうだな。周りの村の名前を考慮するとこれかな。

「サイコン村かな」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜

黒城白爵
ファンタジー
 異次元から現れたモンスターが地球に侵攻してくるようになって早数十年。  魔力に目覚めた人類である覚醒者とモンスターの戦いによって、人類の生息圏は年々減少していた。  そんな中、瀕死の重体を負い、今にもモンスターに殺されようとしていた外神クロヤは、これまでの人生を悔いていた。  自らが持つ異能の真価を知るのが遅かったこと、異能を積極的に使おうとしなかったこと……そして、一部の高位覚醒者達の横暴を野放しにしてしまったことを。  後悔を胸に秘めたまま、モンスターの攻撃によってクロヤは死んだ。  そのはずだったが、目を覚ますとクロヤは自分が覚醒者となった日に戻ってきていた。  自らの異能が構築した新たな力〈システム〉と共に……。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

【アイテム分解】しかできないと追放された僕、実は物質の概念を書き換える最強スキルホルダーだった

黒崎隼人
ファンタジー
貴族の次男アッシュは、ゴミを素材に戻すだけのハズレスキル【アイテム分解】を授かり、家と国から追放される。しかし、そのスキルの本質は、物質や魔法、果ては世界の理すら書き換える神の力【概念再構築】だった! 辺境で出会った、心優しき元女騎士エルフや、好奇心旺盛な天才獣人少女。過去に傷を持つ彼女たちと共に、アッシュは忘れられた土地を理想の楽園へと創り変えていく。 一方、アッシュを追放した王国は謎の厄災に蝕まれ、滅亡の危機に瀕していた。彼を見捨てた幼馴染の聖女が助けを求めてきた時、アッシュが下す決断とは――。 追放から始まる、爽快な逆転建国ファンタジー、ここに開幕!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...