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二章『パテ編』

第111話 キラーキラー5

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 殺戮蹴(ジェノサイドキック)り。
 この魔法がいかなるものか分からないが今はこれに頼るしかない。

 やるなら最高のタイミングでやりたい。キックということは、真正面から頭を狙った方がいいか?

 否、頭は反撃をもらいやすいうえに標的が小さくて外す可能性が高い。

 ならば透明龍(インビジブルドラゴン)にやったように食われてみるか?

 否、あの時は怯ませてからだし、小龍(ワイバーン)にはブレスがある。そして俺の破片を拾ってくれる仲間も近くにいない(スーは欠片食べそう)。捨て身は危険だ。

 だとしたら高所からの一撃はどうだ?

 否、敵は屋台よりも大きい、屋台に登ったとしても地の利を得ることはできない。

 俺が考えていると、

「なっ!」

 俺の最大のミスは、敵に時間を与えてしまったことだろう。そう、小龍(ワイバーン) は飛べるのだ。翼をはためかせ、風を地面に叩きつける。その巨体が少しずつ宙に浮く。

 小龍(ワイバーン)としても、何もしてこない者を相手にする必要はないのだ。敵がぼさっとしていれば飛び立って地の利を得る。当たり前のことだ。

 やられた! もう撃つしかない!

「『殺戮蹴(ジェノサイドキック)り』」

 俺の体が勝手に跳躍する。なんだ? 勝手に技を放つモーションになるのか? 俺が戸惑っている間もモーションは進む。

 普段なら不可能なほどの跳躍(約30m)。さらにタコ足の足先が8本ともまとまりドリルのように回転を始める。

 謎の推進力が発生。飛ぼうとする小龍(ワイバーン)の背中に激突する。

 小龍(ワイバーン)の纏う浮力を無視するほどの力で地面に叩き伏せる。

 硬い。この鱗は相当硬い。あの透明龍(インビジブルドラゴン)よりも! タコ足の先から火花が散りっぱなしだ!

 俺は雄叫びをあげる。その方がいけそうな気がした。まるでパチンコの演出のようだ! やったことないけどな!

 む! まてまて! 両足で踏ん張っている小龍(ワイバーン)が首を曲げて背中の俺に頭を向けている。そこまで曲がるのかよ! 確かに首長いけどさ! 小龍(ワイバーン)は口を広げる。口の奥が赤く光り始める。まずいまずいまずい!

鱗が瓦のように乾いた音を立てて割れ始めているというのに! これでは間に合わない!
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