現代最強は楽しいハンバーガーに転生しました

黒木シロウ

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三章『ギア編』

第177話 チワワクエスト2

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 異世界出張3日目の朝、俺は初めて魔王城の外の世界を見る。

 想定してはいたが、見たことのねぇ景色が広がっている。見慣れたものが一つもねぇ。

 眼前に広がるは要塞のような城下町(高いところにいるんだが終わりが見えねぇ)。空は灰色の雲で覆われている。全体的に薄暗い。多種多様な魔族が何人も行き来している。

 振り返れば巨大な城がそびえ立っている、魔王城だ(カラーリングは黒と金、ところどころが脈打つようにぼんやり光っている)。

 俺はこの中にいたのか、何かと比べるのが馬鹿らしくなるほどにデカいな(そのうえ中は昔の遊園地であった巨大迷路のように入り組んでやがる)。

 もはやこれは城自体が一つの国だな。

 と、周りを観察していると、隣の花が高い声を出した。

「さぁ行くわよ!」
「なんでてめぇらまでついてくんだよ」

 またしてもメア、セギュラ、ポラニアの3人がついてきている。

「なんでって、手柄をみすみす貴方に渡すわけないじゃない」
「私はギアの部下だからな、戦いに向かうのなら私も共に行こう」
「そのボディ、キラープロトタイプと君の依代となっている歯車は僕の所有物ポメ、勝手に出歩かれたらデータが取れなくて困るポメ。それにシュチュー様のいらっしゃる地質を調べておいて損はないポメよ」

 俺は隣にいるレイに視線を向ける。俺にしか見えない角度で真顔のままウインクされた。いや、何も意思疎通できてねぇからな。

「ホネルトンは来ねぇのか」
「さすがに無理ポメ、ホネルトン様は後生の育成を魔王様より承っているポメ、そして九大天王同士の戦いともなれば魔王軍の今後にも関わってくるポメ」
「そうか、だが俺たちだけでどうにかできるもんなのか?」
「いまさら過ぎることを聞くポメね······。不可能ポメよ」
「不可能ってことはねぇだろ」
「ギアは九大天王の恐ろしさを知らないからそんな口がきけるポメ」

 あのほわっとした骨オヤジがそこまで強いとは思えねぇけどな。魔法は大したもんだが、まだ本気を出していないってことか。

 俺たちが門前でダベっていると、急ぎ足でホネルトンの使者の骸骨魔法使(スケルトンウィザード)いが駆け寄ってくる。

「来たポメね」
「あん?」
「兵の準備が整いました!」

 骸骨魔法使(スケルトンウィザード)いがキビキビした動きでそう言う。

「兵だ?」
「魔王様が好きに使っていいと、魔物を1000頭ほど用意してくださったポメ」

 1000ね。多いとみるか少ないとみるか。とにかくこれでやってみろってことか。

 むしろこれだけの兵力を、たかだか1頭の小型犬なんぞにぶつけるってのは、さすがの俺でも酷な話だと思うぞ。

 そんな考えも魔獣チワワを前にもろくも崩れ去ることになるとは今の俺は知る由もなかった。

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