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三章『ギア編』

第185話 チワワクエスト10

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「相対する魔法つったよな?」
「は、はい!」
「その相対する魔法ってのを教えろ」
「そんな即興で唱えるなんて・・・・・・。属性の魔法適性も調べないと」
「ごちゃごちゃ抜かすな、焼け死にてぇのか」
「氷(アイス)の玉(ボール)です!」
「氷(アイス)の玉(ボール)」

 俺が呪文を唱えると、火球の傍に氷の玉が生成された(よく溶けねぇもんだ)、その氷球に魔力がどんどん吸われていくのが感覚でわかる。

 俺は意識を氷球に向けて集中する。火球の成長速度より断然早くなった。

「す、すごい一発で新しい魔法を成功させた······ってこれ、形こそ違いますけど氷属性最強魔法、絶対零度(アブソリュートゼロ)!?」
「おい、こっからどうすんだ」
「は、はい! えっと、相対する同等の2つの魔法をぶつけて相殺するんです」
「ちぃ、まだ火球の方がデケェな」

 だがそれも時間の問題だ、しかしその時間の問題が大問題だ。

「あ、あぁ、魔獣チワワが・・・・・・」
「そこでずっと惚けてるわけがねぇか」

 チワワがゆっくりとした足取りで俺に近づいてきている。
 周りの魔物どもは俺の出した火球に怯えてチワワに近づこうともしねぇ。

「クソがこうなりゃ奴に両方ともぶつけてやる」
「さっきより悪化してる!?」

 チワワは火球も氷球も気にしていない。ヤバイか? いや、これしかねぇ。

 俺は意識をチワワに向ける、すると火球と氷球がチワワに向かって落ちていく。

 チワワの全身が逆立つ、口を大きく開いている。何をする気だ。


「これは・・・・・・さすがに、ダメだろ」

 そう言って現れたのは頭が星の形をした1人の魔人。ふらりと俺とチワワの間に入ってくる。

「おい邪魔だ退け、チワワの攻撃と俺の魔法を両方受けるぞ」
「お、君がギアか、噂通りの危険な・・・・・・ん? 手が取れるどころか頭まで失っているじゃないか、なんて無茶を」
「バカが燃えて凍って噛み砕かれろ」

 直後、俺の魔法が星の魔人に直撃する。凄まじい熱が辺りを焼き尽くして焦土と化そうとする、だがそれを冷気が抗う。

 しかし火球の方が大きいまま放ったので冷気は次第に消えていく、再び灼熱が俺たちを襲······わない。

 熱が消えただと。

「こんな危険な魔法をそう易易と使っちゃダメだろ、扱いきれないなら尚更ね、私がいなかったら君自身だって無事じゃすまなかったよ」

 星の魔人の野郎、ピンピンしてやがる、あの熱をどうやって消した?

「そんな視線を向けないでくれないか。自己紹介がまだだったね、私は九大天王の1人、凝縮(コンデンスト)された星(スター)のディザスター」

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