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三章『ギア編』

第212話 メアリー・ロゼリアス2

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 俺たちの様子を見ていたホネルトンが魔王に話しかけた。

「準備が整ったようです、さっそく審判に試合開始の合図を」
「必要ない、我の目が、この戦いの決着を見逃すはずがあるまい」
「はっ、これは失礼いたしました!」
「よい、では2人とも準備はよいか?」
「待ってくださいポメ!」

 ポラニアが工場から掛けてくる。あんだあの背負ってる包みは。

「魔王様、止めてしまい申し訳ないポメ」
「構わん、どうしたのだ?」
「これをギアに」
「ほう、良かろう渡してやれ」
「ありがとうございますポメ」

 ポラニアが俺に駆け寄る。

「ギア、これを使うポメ」
「こいつは······」

 包みを解くと一振りの剣が現れる。

「ドワーフの見よう見まね&僕の技術&加工した魔鉱石を使った『K(キル)ソード・プロトタイプ』だポメ」

 ポラニアから渡されたKソード・プロトタイプは俺の手にしっくりと収まる。

「その剣は持ち主の精神力をオーラとして纏うポメ」
「オーラ? 魔力じゃなくてか?」
「魔力ではなくオーラポメ。そうとしか言い表せないポメ」
「まぁ使えばわかるだろ」
「精神の強さがそのまま斬れ味になるポメ、ギアなら期待大ポメ」
「魔法よりは確かなもんだしな、てか決闘に試作品を渡すか普通?」
「プロトタイプだけど実戦に耐えうるはずポメ」
「そっか、ありがとよ」
「気にするなポメ、僕とセラからのお祝いだポメ」

 セラもこの剣の制作に携わったのか。俺は振り返りセラを見る。

「私の龍の炎で鍛えた金属だ、本当は私が使いたいくらいだぞ!」
「おう、ありがとよ」
「ふっ!」

 俺はKソード・プロトタイプを何度か振り回して動作を確認する。

「そうだポメ、キラーのメンテナンスの時に背中に魔力磁石を付けておいたポメ、鞘がなくても納刀の真似ができるポメ」

 背中にKソード・プロトタイプを当てるとガシッとくっついた。こいつはいい。

 そんないい雰囲気を怒鳴り声がぶち壊す。

「仲良しこよししちゃってホントバッカみたい! 絶者になるのはこの私よ!」
「バカが絶者は俺だ」

 場が煮詰まったのを確認したのか、魔王が一言。




「試合開始」




 その声は普通のトーンのはずだが、不思議と会場全体に響き渡る。

 俺とメアは同時に動く。

「火(ファイヤー)の玉(ボール)、氷(アイス)の玉(ボール)」

 俺の右手に火球、左手に氷球が出現する。それらはまたたく間に俺の魔力を吸って巨大化する。

 レイから聞いた話じゃ、基本的に植物系の魔物は火にも氷にも弱い、こいつでKソード・プロトタイプの出番もなく、跡形もなく終わらせてやる。

「そう来ると思っていたわ!」

 メアはそう言うと『巻物』を取り出した。


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