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三章『ギア編』
第223話 『なにか』がいる
しおりを挟む「じゃあ、案内するから付いてきてくれ」
「うむ、楽しみだ」
俺は魔王を連れて工場施設内を案内する。他についてくる奴はいねぇ。入る前に魔王が俺と2人で回ると言い出したからだ(ポラニアとレイがいればもっと事細かに説明できるんだが、しょうがねぇ)。工場前で待機させた。
「これが『犬小屋』から採掘した魔鉱石をこの工場に送っているトロッコだ」
「ほう、あそこからトンネルを掘ったとは聞いていたが、実現するとは思わなかったぞ」
「まぁ、この作業で大半が死んだんだけどな」
「どのように死んだのだ」
「生き埋めになったり、猛毒ガスが吹き出したり、野良の魔物が襲ってきたりな。俺もずっとピッケルもって掘ってたから死んでった奴らのことはちゃんとこの目で見てから名簿に記録してあるぞ(逃げ出したやつ以外な)」
「この施設の建設自体がハードなトレーニングになったということか、ギアはこのことも想定していたのか?」
「いや全然、仕事を1秒でも早く終わらせることしか考えてなかった(次の仕事のことも考えてたけどよ)。たまたまだよ」
「たまたまか」
「ああ、生き埋めにされて俺が助けるまでに生きてた奴、猛毒のガスを喰らって俺がトンネルから引っ張り出すまで生きてた奴、俺がつくまでに凶悪な野良魔物と戦って生きてた奴。それが今いるメンツだ」
「知ってるかギア」
「何をだ」
「お主に預け、生き残った300の魔物たちは数こそ劣るが、個々の戦闘能力では群を抜いて強くなった」
「んあ、そうなのか? まぁ最後の半年くらいから俺がやらなくても対処できるようにはなってたな」
「スパルタだがギアのやり方はこの魔族の世界に合っている。彼らは強くなることこそがアイデンティティなのだからな」
「要するに精鋭部隊が出来つつあるってことか」
「そういう事だ」
「ふーん、まぁいいけどよ、ほら次だ。まだまだ見てもらうところは文字通り山ほどあるんだからよ」
俺と魔王は、まだ人が入ってねぇ無人の工場内を歩き回った。
魔鉱石を精錬する炉や、精錬した金属の加工所や、ポラニアがすでに使い始めている研究室なんかを見せた。
その度に魔王は「ほう」だとか「ふむ」だとか、実に興味津々な様子であれこれ聞いてきた、子供みてぇだな。
「で、ここが魔鉱石を保管しておく保管庫だ」
「もう入っているのか?」
「ああ、今日に至るまでに何度か施設を稼働させて点検したり試運転していたからな。『犬小屋』は凄いぞ、シチューが守っていたから魔鉱石の宝庫になっていやがる」
そして俺は保管庫の扉を開けた、建設途中で黄金に光るレアメタルを見つけたからな、それを魔王にプレゼントしてやろうって魂胆だ(工場見学にお土産は付き物だ)。
「誰だお前」
保管庫の中に『なにか』がいる。
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