現代最強は楽しいハンバーガーに転生しました

黒木シロウ

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三章『ギア編』

第224話 旧魔王

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 それは漆黒、まじモンの真っ黒。そこに存在するのは、この世界には黒しかねぇと言わんばかりの純黒だ。

 って、

「棒人間じゃねぇか」

 パラパラ漫画とかでよくある棒人間がそこに佇んでいた(やけにスタイルがいい、背丈は2mはある)、魔物なのか? 誰かのいたずらなのか。

 魔王が口を開いた。

「イズクンゾか」

 魔王の問いかけに棒人間は首だけを動かし頭だけをこっちに向ける。そして大きな口を開いた。

「そういうお前はネスか、久しぶりじゃんか」

 そういうとイズクンゾはフランクな仕草で俺たちに近づいてくる。ってイズクンゾってどっかで聞いたな。

「それ以上近寄るでない、旧魔王、なぜお主がここにいる?」

 ああ、イズクンゾって旧魔王の名前だったか。このピリついた感じやっぱり入れ替わる時に何かありやがったんだな?

「随分な挨拶だぜ。ここは俺様の領土で、俺様の城だ、どう振舞おうと俺様の勝手だぞ」
「お主は欲が強すぎる、お主の言う領土とはこの星全てではないか」
「なんたってこの世界は俺様の物だからな」

 俺はイズクンゾの背後を確認する。
 保管してある黄金のレアメタルを探す。確かあのへんの棚に置いてあったはずだが、・・・・・・レアメタルが一つもなくなってやがるぞ。

「おいコラ、金をどこにやった?」
「お、なんだその威勢のいいのは、オブジェかと思ってスルーしてたぞ。魔王に対してなってないな」
「バカが魔王つっても旧だろうが、そんなことはどうでもいいんだ、俺は金をどこにやったかと聞いているんだ、言葉分からねぇのか?  話せるくせに理解できなぇとは残念な奴もいるもんだな」
「ぎゃははーー!!」

 イズクンゾはいきなり腹を抱えて大声で笑い出した。床を転げ回り狂ったように笑い叫ぶ。

「ぎゃはぎゃは! これは傑作だ! 俺様を煽る奴なんざ、ひっひっ! ここ最近のォ! 1000年間じゃっはーーっ! 誰もいやしなかったぜ! ぎゃははーー!!」

 笑い狂う旧魔王を前に俺たちは顔を見合わせる。

「このイカれ野郎どうするんだ」

 魔王はさも当然と言ったふうに言い放った。

「追い出す」
「殺さねぇのか?」

 イズクンゾが大声をあげる。

「俺様をこ、殺す!? あーーっはっはっはっはーーッ!! マーー!! マーー!!」

 いい加減うるせぇなこいつ。ひたすら笑い続けやがって道化かよ。

「おいピエロ、黄金の事はもういいからよ。ここから出てけよ」

 俺の発言にイズクンゾは笑うのをピタリとやめて、口から長い舌を出す。

 舌の上で転がっている物は、

「黄金とはこれのことかぁ?」

 レアメタルだ、あのバカ、レアメタルを口に含んでやがったのか。

「ち、ただの泥棒かよ。吐き出せ」
「俺様は一度口に入れた『食いもん』は絶対に吐き出さない主義なのだ」

 そういうとイズクンゾは黄金を噛み砕いて食べた。飴のように。

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