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三章『ギア編』
第241話 移動手段
しおりを挟む魔王城正門前。集合場所には俺とレイがいる、他のメンツももうじき来るだろう。
「そのチョウホウ街までは徒歩でどれくらい掛かるんだ?」
「えーっとですね」
レイは地図を広げる。
「『犬小屋』までがあれくらいだったから、そうですね。ざっと見積もって1年ってところでしょうか」
「1年だと?」
「地図を見たざっとした推測ですよ、地形も関係してきますし。なにせ魔王城から一番遠い街ですから」
「ふざけんな、往復2年じゃねぇか」
「落ち着いてください、今言ったのは徒歩の場合です」
「ああ、そうだったな」
「そうですよ、馬車なら2ヶ月で行ける距離です」
「そんなに短縮できるのか」
「はい、馬車で使う馬は走ることに特化していますから」
「それでも2ヶ月、往復で4ヶ月か、俺の想定よりもだいぶ遅れるな」
「どのくらいだと思っていたんですか?」
「1週間」
「速すぎますよ! 世界は広いんですよ!」
「みたいだな」
元いた世界より広いのかもしれねぇ(新幹線とかありゃな)。
「移動は馬車だよな?」
「どうでしょう、移動手段に関しては九大天王のお二方が用意してくださるみたいですが」
アリス様は優雅な旅と言っていたし、徒歩ってことはないだろう。
魔王軍にとっても九大天王を2人もほっつき歩かせるわけがねぇ。
となりゃ馬車だ、往復で4ヶ月、戦地でどのくらい研修するのかも分からねぇとなっちゃ、いつ帰れるかも分かったもんじゃねぇな。
「レイ」
「はい」
「俺がいない間任せたぞ」
「はい、任せてください」
「なるべく早く帰るつもりだが、どうなるか分からねぇからな」
「これから戦地に行くっていうのに死ぬ気がないってのもおかしな話ですね」
「場合が場合だからな」
ありえないほどの高待遇だ。勇者戦前に比較的安全に戦地を経験できるのは正直言ってありがたい。ならばだ、やっぱり優秀な奴も連れていくか。
「任せるとは言ったがレイも来るか?」
「思いついたら自分の言葉すら撤回するのはさすがですが。私まで抜けてしまうとスケジュール管理ができなくなってしまうので遠慮しときます」
「そうか、他にも何頭か魔物どもを連れていってもいいと考えたが」
「戦地で過労死させるつもりですか?」
「そんなつもりはねぇんだがな」
「大軍になれば移動速度も落ちますよ」
「それもそうだな、やっぱ俺一人か」
「あれ? もしかして一人が寂しいんですか?」
「ンなわけあるかよ。優秀な人材の育成に熱心なだけだ」
「ですよね、でもダメですよー」
雑談しているとブラギリオンとアリス様、そしてメアがその後ろから現れる。
「待たせたでござる、では参ろうぞ」
「移動手段は何を使うんだ?」
「しからば拙者の愛馬をーー」
ブラギリオンが話し終わる前にアリス様が口を挟んだ。
「いいえ、それくらい私が用意いたしますわ。ブラギリオンの手を煩わせることはありません」
「そうでござるか、ではお言葉に甘えるでござるよ」
アリス様は右手を前にかざす。
「我が名の元に命ず、その実は我を守る盾となれ、その根は我を運ぶ足となれ、その命『無限』の名の元に集え、南瓜(パンプキン)の馬車(キャリッジ)」
地面に魔法陣が出現する。魔法陣の中から巨大な植物が現れる。
「これは」
カボチャの馬車だ。
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