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三章『ギア編』
第242話 心頭滅却
しおりを挟む窓から見える景色は次々に変わっていく、とてつもない速度で移動している証拠だ。
馬車(馬が引っ張っているわけじゃないがそう呼ぶしかない)の旅は揺れもなく快適だ。
馬車の中で優雅にティータイムを楽しんでいるアリス様が向かいに座る俺に言った。
「気に入ってもらえたかしら?」
「ああ、これなら予定よりも早く着くだろう」
「そうね、片道1週間ってところかしら」
通常の馬車より断然速いな。魔法ってのはつくづく便利だな。
「それにしてもこの馬車は広いな」
馬車というにはかなりデカい。席もファーストクラスの部屋って感じで広々している(空席が幾つもある)。カボチャの中にいるとは到底思えねぇ、人形をした植物系の魔物が客室乗務員として紳士然とした態度で仕事をしている(家具なんかもしっかりしていてベタついたりはしていねぇ、あくまでガワだけがカボチャってだけで機能性は抜群にいい)。
「そうでしょう。調度品も魔王城に飾ってあるものに比べれば劣るけれど、それでも私の気に入っているものを持ってきたわ」
たしかに、周りには凝った絵や難しい模様の描かれた花瓶なんかが置かれている。威厳を保つには十分な効力を発揮するだろう。バカバカしいが。
ふと俺はアリス様の隣に座っているメアに目を向ける。メアは窓の外を目を輝かせながら見つめている。
アリス様はその様子を見て優しく微笑んだ。
「メアリー、外の世界はどうかしら?」
「素敵なところです、見たことのない景色ばかりで、世界が広いことを思い知らされます」
「はん、観光じゃねぇんだぞ」
「なによ、することもないんだから景色を楽しんだっていいじゃない」
「浮かれやがって何のためにこうしているのか分かってんのか」
「分かってるわよ、子供扱いしないでくれる!」
「なんだやんのかコラ」
「いいわよ! 受けて立つわ!」
「こらこら無駄な争いはやめるでござるよ」
俺の隣に座っているブラギリオンの一言で俺とメアは押し黙る。
アリス様はその様子を肴にワインを飲んでいる(植物系の魔物がいつの間にか持ってきていた)。
「こうして見ると家族みたいね」
「冗談はやめてください、誰がこいつの妻なんかに」
「あら、私とブラギリオンが夫婦で、メアリーとギアがその子供だと言ったのだけれど」
「あ。ーーッ!!」
メアの奴は赤面している。相当頭にきているようだ。
そんな空気を壊すようにブラギリオンが大声で笑う。
「ぶふぉ! せ、せせ、拙者とアリス氏が、ふ、ふ、夫婦!?」
「誰も見たことのない貴方の仮面の下を覗けば私も本気になるかもしれないわよ?」
「ぬぬ『心頭滅却』。ふぅ・・・・・・。そんな色仕掛けで拙者が動揺するとでも思ったでござるか?」
「あ、スキルを使ったわね」
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