69 / 124
舞城あやかの図書室
ポジティブオタク
しおりを挟む
「おかえり! お仕事お疲れ様! お風呂にする? ご飯にする? それとも――」
「なんだよ要件だけ言え」
ハイネは大きくため息をついて玄関から部屋に向かった。せっかく家電も存在しないお部屋のお掃除手伝ったのにそれはなくない? 疲れた顔のハイネも好き、びっぐらぶです。
自室であろう扉の前で立ち止まって、ハイネは私をギロっと睨んだ。その青い瞳、何度もスクショしたアニメ第8話のCパートにそっくり! 2.5俳優の汚いカラコンとは訳が違うわ。
「……痛バ返して欲しくて」
「はぁ、あの凶器か」
ハイネは面倒臭そうに肩を落としてドアノブを回した。ハイネの部屋! めちゃくちゃ気になります!
気合を入れて足を踏み入れたのに、殺風景で面白味のない部屋だった。亡命したばかりで、私物が少ないのかもしれない。考察ブログが捗りますわ。エロ本はベッドの下かな? それとも本棚?
「もう振り回すなよ」
「うん、ありがと!」
ハイネは戸棚の中から私の痛バを取り出して、渋々という感じで手渡した。暗所保管、助かります。流れるような動作で上着を脱いでハンガーにかける。
「お前さ、本当に俺のこと好きなの?」
ズラっと並んだ缶バッジに、スマホに挟まった箔押しのパシャこれ。別に言い訳するつもりなんてないけど、ハイネが私を不審がっていることくらいわかった。
今度は私がため息をつく番だ。私だってCGライブでハイネのこと拝みたかった。ここにはWiFiだってないし。
「『異世界トリップした』、って言ってもきっと信じてくれないよね」
痛バを肩にかける。この重みは愛。オタク特有の誇大表現。ドアを閉めると部屋には静寂が訪れた。風の音も、この屋敷にひっきりなしにやってくる客の足音もしない。
「私ね、友達が一人もいないの」
「だからなんだよ」
ハイネが眉をひそめた。『だからなんだよ』、その返事に安堵する。幸せな気持ちになる。解釈一致どころの騒ぎじゃない。そう言ってくれる人間がいるだけで、救われる魂があるんだ。
「ずっと気にしてた。私は性格が悪いから嫌われてる、かわいくてお金持ちだから嫉妬されてる」
「あ゛、何? 自慢?」
女子高生なんて退屈そのものだ。見た目ほど輝いてなどいない。自分の周りの友達と家と、せいぜいバイト先だけが世界の全てで、自分がどう見られているかしか気にしない。
容姿、成績、実家の太さ、全てを数値化して勝手に嫉妬する。私の人格なんて少ししか知らないくせに悪口を言う、否定する。
「でもハイネはさ、他人に嫌われても気にしないじゃん。だから好きなんだ~」
自慢なんかじゃない。事実を述べているだけだ。勉強しなくても頭が良くて、化粧を頑張らなくても顔がかわいくて、運動神経も良くて、男にモテるるから。だから嫌われる。性格が悪いと言われる。
でもそれでいいんだ。ハイネだってそうじゃん。私と同じだから推せる。ビジュだけは本当に天才だもん。
「変なやつ」
なに、今ちょっと笑ったよね。顔良すぎ。本当にビジュだけはマジで完璧だと思う、キャラデザした人神だから口座番号教えて欲しい。あ~これ夢なのかな? 元の世界とか戻らなくて全然いいんですけど。
私は他人にどう思われても気にしない。そういう人間になれたんだ。ハイネの腕に抱きついた。普段抱き枕にそうするようにぎゅっと強めに。
「ねね、今度デートしようよ!」
「お前やっぱり頭がおかしいよな」
そうだ、このあとたしかギムナジウム編に入ってハイネはフローラにガチ恋してしまう。フローラは人気キャラすぎてアンチスレ盛り上がらなかったんだよね。
今回は失敗するわけにはいかない、その事実を変えなくちゃ! 原作改変がトリップの醍醐味、だもんね!
「なんだよ要件だけ言え」
ハイネは大きくため息をついて玄関から部屋に向かった。せっかく家電も存在しないお部屋のお掃除手伝ったのにそれはなくない? 疲れた顔のハイネも好き、びっぐらぶです。
自室であろう扉の前で立ち止まって、ハイネは私をギロっと睨んだ。その青い瞳、何度もスクショしたアニメ第8話のCパートにそっくり! 2.5俳優の汚いカラコンとは訳が違うわ。
「……痛バ返して欲しくて」
「はぁ、あの凶器か」
ハイネは面倒臭そうに肩を落としてドアノブを回した。ハイネの部屋! めちゃくちゃ気になります!
気合を入れて足を踏み入れたのに、殺風景で面白味のない部屋だった。亡命したばかりで、私物が少ないのかもしれない。考察ブログが捗りますわ。エロ本はベッドの下かな? それとも本棚?
「もう振り回すなよ」
「うん、ありがと!」
ハイネは戸棚の中から私の痛バを取り出して、渋々という感じで手渡した。暗所保管、助かります。流れるような動作で上着を脱いでハンガーにかける。
「お前さ、本当に俺のこと好きなの?」
ズラっと並んだ缶バッジに、スマホに挟まった箔押しのパシャこれ。別に言い訳するつもりなんてないけど、ハイネが私を不審がっていることくらいわかった。
今度は私がため息をつく番だ。私だってCGライブでハイネのこと拝みたかった。ここにはWiFiだってないし。
「『異世界トリップした』、って言ってもきっと信じてくれないよね」
痛バを肩にかける。この重みは愛。オタク特有の誇大表現。ドアを閉めると部屋には静寂が訪れた。風の音も、この屋敷にひっきりなしにやってくる客の足音もしない。
「私ね、友達が一人もいないの」
「だからなんだよ」
ハイネが眉をひそめた。『だからなんだよ』、その返事に安堵する。幸せな気持ちになる。解釈一致どころの騒ぎじゃない。そう言ってくれる人間がいるだけで、救われる魂があるんだ。
「ずっと気にしてた。私は性格が悪いから嫌われてる、かわいくてお金持ちだから嫉妬されてる」
「あ゛、何? 自慢?」
女子高生なんて退屈そのものだ。見た目ほど輝いてなどいない。自分の周りの友達と家と、せいぜいバイト先だけが世界の全てで、自分がどう見られているかしか気にしない。
容姿、成績、実家の太さ、全てを数値化して勝手に嫉妬する。私の人格なんて少ししか知らないくせに悪口を言う、否定する。
「でもハイネはさ、他人に嫌われても気にしないじゃん。だから好きなんだ~」
自慢なんかじゃない。事実を述べているだけだ。勉強しなくても頭が良くて、化粧を頑張らなくても顔がかわいくて、運動神経も良くて、男にモテるるから。だから嫌われる。性格が悪いと言われる。
でもそれでいいんだ。ハイネだってそうじゃん。私と同じだから推せる。ビジュだけは本当に天才だもん。
「変なやつ」
なに、今ちょっと笑ったよね。顔良すぎ。本当にビジュだけはマジで完璧だと思う、キャラデザした人神だから口座番号教えて欲しい。あ~これ夢なのかな? 元の世界とか戻らなくて全然いいんですけど。
私は他人にどう思われても気にしない。そういう人間になれたんだ。ハイネの腕に抱きついた。普段抱き枕にそうするようにぎゅっと強めに。
「ねね、今度デートしようよ!」
「お前やっぱり頭がおかしいよな」
そうだ、このあとたしかギムナジウム編に入ってハイネはフローラにガチ恋してしまう。フローラは人気キャラすぎてアンチスレ盛り上がらなかったんだよね。
今回は失敗するわけにはいかない、その事実を変えなくちゃ! 原作改変がトリップの醍醐味、だもんね!
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる