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十月
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「てかなんで高校生にもなってこんなこと……」
特別活動だか、地域貢献活動だかの時間として、一、二年生はゴミ拾いをさせられていた。三年生は勉強合宿に行っているらしい。
「面倒くさいよね」
「なー」
橋本と会話をしながら、空き缶をゴミ袋に入れる。同じ班のメンバーとは、なぜか自然に別れてしまい、辺りは閑散としていた。
疲れて座り込んだ橋本の隣に腰を下ろす。首にかけたタオルで、額の汗を拭った。
「ねぇ」
近くで声をかけられ、顔を上げる。
「あっ……夕午さん」
以前会ったときよりも痩せている。というか、なぜ日本にいるのだろう。
「何? 知り合い?」
「えっと……」
返答に困っていると、二の腕のあたりを掴まれ、立たされる。
「ちょっと話、あるんだけど」
「えっと……」
下手なことは言えない。機嫌を損ねたら、何をされるか想像がつかないところが恐ろしかった。
「あいつの進路のこともあるし」
その言葉に、心臓がどきりとする。後ろめたさと罪悪感で一杯になる。
「吉村……?」
「大丈夫、だから。じゃあね」
心配する橋本の声に答えて夕午と少し離れた人気のない場所へ行く。
「あの、入院してるって、聞きましたけど……」
「あぁ、大丈夫。この前みたいに脱走とかしないよ、ちゃんと外出許可? ってやつ。貰ってきたし」
自然に距離を詰めてくる。顔を覗き込んで、嫌な笑顔を見せた。
「ねぇ、俺にしたら? 俺のほうがカッコいいだろ?」
「あの、話ってそれですか?」
進路の話だと思っていたのに、話が違う。
「そうだよ。別に俺、朔夜がどこの大学行こうと関係ないし。でもあいつにそこまでさせるやつって気になるから」
「まぁ考えといて」と言葉を続けて、夕午はひらひらと手を振って去っていった。
「つかさ! 今日はハロウィンだよ!」
「だからなんだよ」
十月の終わり、桐生はなぜか上機嫌だった。一方、夕午のことを切り出せないでいる吉村は憂鬱な気分だ。
いつものように家に招かれ、玄関を通る。扉を開けた瞬間、甘ったるい匂いが部屋中に充満しているのが分かった。
「なにしてんだよ」
「クッキーとか、つくった」
そう言ってテーブルの上にある、まだ温かいクッキーを差し出す。
「月冴甘いの大丈夫だよね」
「……まぁ」
そう言って、直接口にそれを運ばれる。甘く、サクサクとした食感が広がる。
「あのさ……」
こんな状況で切り出すのは憚られたが、今しかないと思った。
「なに?」
「夕午さん、日本に来てるよな」
思い切って言う。緊張で桐生のほうを見れないが、息を飲む音がした。
「そうなの?」
驚いた様子で聞き返す。
「会った?」
「うん、まぁ。でも、ちょっと話しただけ」
余計な心配をさせないようにと、笑顔を見せ、大したことではないと、ひらひらと手を振ってみせる。
「そっか……、気をつけて。僕も警戒しとくから」
特別活動だか、地域貢献活動だかの時間として、一、二年生はゴミ拾いをさせられていた。三年生は勉強合宿に行っているらしい。
「面倒くさいよね」
「なー」
橋本と会話をしながら、空き缶をゴミ袋に入れる。同じ班のメンバーとは、なぜか自然に別れてしまい、辺りは閑散としていた。
疲れて座り込んだ橋本の隣に腰を下ろす。首にかけたタオルで、額の汗を拭った。
「ねぇ」
近くで声をかけられ、顔を上げる。
「あっ……夕午さん」
以前会ったときよりも痩せている。というか、なぜ日本にいるのだろう。
「何? 知り合い?」
「えっと……」
返答に困っていると、二の腕のあたりを掴まれ、立たされる。
「ちょっと話、あるんだけど」
「えっと……」
下手なことは言えない。機嫌を損ねたら、何をされるか想像がつかないところが恐ろしかった。
「あいつの進路のこともあるし」
その言葉に、心臓がどきりとする。後ろめたさと罪悪感で一杯になる。
「吉村……?」
「大丈夫、だから。じゃあね」
心配する橋本の声に答えて夕午と少し離れた人気のない場所へ行く。
「あの、入院してるって、聞きましたけど……」
「あぁ、大丈夫。この前みたいに脱走とかしないよ、ちゃんと外出許可? ってやつ。貰ってきたし」
自然に距離を詰めてくる。顔を覗き込んで、嫌な笑顔を見せた。
「ねぇ、俺にしたら? 俺のほうがカッコいいだろ?」
「あの、話ってそれですか?」
進路の話だと思っていたのに、話が違う。
「そうだよ。別に俺、朔夜がどこの大学行こうと関係ないし。でもあいつにそこまでさせるやつって気になるから」
「まぁ考えといて」と言葉を続けて、夕午はひらひらと手を振って去っていった。
「つかさ! 今日はハロウィンだよ!」
「だからなんだよ」
十月の終わり、桐生はなぜか上機嫌だった。一方、夕午のことを切り出せないでいる吉村は憂鬱な気分だ。
いつものように家に招かれ、玄関を通る。扉を開けた瞬間、甘ったるい匂いが部屋中に充満しているのが分かった。
「なにしてんだよ」
「クッキーとか、つくった」
そう言ってテーブルの上にある、まだ温かいクッキーを差し出す。
「月冴甘いの大丈夫だよね」
「……まぁ」
そう言って、直接口にそれを運ばれる。甘く、サクサクとした食感が広がる。
「あのさ……」
こんな状況で切り出すのは憚られたが、今しかないと思った。
「なに?」
「夕午さん、日本に来てるよな」
思い切って言う。緊張で桐生のほうを見れないが、息を飲む音がした。
「そうなの?」
驚いた様子で聞き返す。
「会った?」
「うん、まぁ。でも、ちょっと話しただけ」
余計な心配をさせないようにと、笑顔を見せ、大したことではないと、ひらひらと手を振ってみせる。
「そっか……、気をつけて。僕も警戒しとくから」
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