12 / 17
三月
しおりを挟む三月に入ると、春休みになる。休みの日は部活三昧だが、休みの日もあった。
街のほうへ出掛けると、それらしい後ろ姿を発見した。
桐生だと思い、声を掛けようとしたが、隣に女の人がいて、躊躇う。
「どうしたの? こんなところで」
朝海だった。後ろから話しかけるのは止めて欲しい。
「なんですかあなた、ストーカーですか?」
「そんなことで諦めるの? 親戚の人かもよ? 僕も諦めないから」
なぜか宣戦布告された。なんなんだろうこの人は。
ホワイトデーになり、家に呼び出されたが気分は乗らなかった。家に引きこもっていたい。しかし行かないと何か言われることは必至だ。仕方なく出掛けることにした。
「どうも」
目を合わせないで言う。
「どしたの、なんか機嫌悪い?」
「そう思うならそうじゃないの」
不遜な態度でソファに座る。
「あのさ、前会えなかったのは、母さんと用事があったからで……」
「は? 若すぎだろ」
言ってから、しまったと思った。まるで自分が、ストーカーのようではないか。
「もう五十代だと思うけど、若くはないでしょ」
幸いにも、桐生は気付いていないようだった。
卒業式のときがきた。めんどくさい行事が終わって、一息つく。
「月冴、これあげる」
第二ボタンを手渡され、どぎまぎする。
「あ、ありがとう」
受け取って、下を向く。
「一緒に帰ろ」
最後になる一緒の帰宅をした。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
19
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる