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第一章
この世界について
しおりを挟むあの後、リゼが作ったスペシャルメニューは凄かった。お皿の上には、お肉や野菜が山盛りに盛られていたのだ。
リゼに味見をさせて貰ったが、料理は凄く美味しかった。
お客さん達も、最初は美味しそうに頑張って食べていたが、最後の方は皆倒れていた。リゼ曰く、誰もこの料理を完食した事が無いと言っていた。
これに挑戦するのは、知らずに頼んだ怖いもの知らずか只の馬鹿らしい……。
その後、お客さんが多くなりお店は賑わっていた。リゼが料理を作り、ルミエールが出来上がった料理を運んでいた。最初は、リゼは疲れているだろうから手伝わなくても大丈夫だと言っていたが、ルミエールはそれを断り手伝っていた。
お客さん達は、料理を運んでいるルミエールを見てよく喋りかけてくれた。
「リゼさん怖いけど、頑張れよ!」や「新しい子かい? リゼさんを怒らせちゃ終わりだからな」と、そんな言葉をかけてくれた。
それを聞いていたリゼが、奥から出て来てお客さんの胸ぐらを掴む事が多々あったが……。無事、お客さん達も帰り。忙しさも一段落した時だった。
「ルミエール。お店もそろそろ一段落してきたし、休憩しな。」
そう言われ。リゼから、美味しそうなお肉が乗っているお皿を受けとる。
塩と胡椒でシンプルな味付けだが、匂いだけで食欲をそそりとても美味しそうだ。
「はい! ありがとうございます。」
カウンターの所で料理を食べようと思い、ルミエールは席に着く。席からは、リゼが料理を作っている様子が見えるのだ。
『水よ』
ルミエールがそう唱えると、側にあったコップの中に水が溜まっていく。
この世界では皆、魔力を持っている……。
たとえば、料理をする為に火をつけたり。風を起こし、洗濯物を乾かしたりする、生活魔法というのがある。
生活に必要なだけの魔力をかならず、皆持っているのだ。たまに、魔力の量が多く持っている人。魔導師と呼ばれる人もいる。
魔導師はこの国にも居る。
この国にある結界を維持したり、戦の時には魔法で戦ったりもする。
只、例外もあった。
この世界で唯一、人族は魔力を持って居ないと言うことだ……。何故かは、分からない。昔から人族だけ、魔力を持たず。そして、魔力を持っている人間は、他の人間から恐れられ。嫌われてしまうのだ。
「そういえば。人族がまた、獣人族に喧嘩を売ったらしいぞ?」
「人族も懲りないな。負けると分かるだろうに。」
後ろから、そんな話が聞こえてきた。
この世界には、色々な種族がいる。
竜人族は、戦闘力が高く魔力があるため恐れられている。そして、色々ある種族の中でも長生きだと言われているのだ。
話にも上がっていた獣人族は、戦いを好む種族だ。身体機能も高い。
前世で1度会ったことがあるけれど、頭に着いている耳と、尻尾のもふもふが素敵だった……。
他にも、魔力が多く魔法を得意とするエルフや鍛冶が得意なドワーフなど。色々な種族が居る。
そして、人族はどこの王族も領地拡大を目論んでいる。なので、昔から良く色々な種族に戦を仕掛けているのだ。
その戦のせいで、どれだけ民が苦しんでいるか…。王族が恐怖政治をし。好き勝手している為、民が苦しんでいるなんて知らないのだ。
そんな事を思っていると、リゼは何かを思い出した様に此方に振り向いた。
「そうだ。ルミエール、明日は街を見て回ってきな!」
「えっ!? 良いんですか?」
「買い出しついでだけど、この街は初めてなんだし、見て回りたいだろ?」
「はい! ありがとうございます!!」
前世では、ゆっくりとこの街を見て回る事なんて出来なかった。城を抜け出して街に行くと、すぐにバレて護衛の者達に連れ戻されてしまっていたのだ。
「おっ! ルミエールちゃん、街に行くのか!」
「楽しんできな!」
「買い出しに来たら、果物値引きしてやるよ!」
お客さんから、口々にそう言われた。
「珍しくリゼさんが優しいな。」
「間違いねぇ!」
一人のお客さんがそういうと、お店は笑いに包まれた。
「……ほう。懲りもせずに、そんな事を言うのかい。学習能力が無い奴らだね~。」
リゼが、ポツリと何かを呟くとお店の奥に入っていった。奥から出てきた時、手にはお酒が入っている箱を持っていた。
「今日は、ルミエールが来たお祝いだ! この店で、1番高い酒を飲んでもいいぞ!!」
そう言うと、お客さん達からは歓声が巻き起こった。
「リ、リゼさん。良いんですか?」
「あぁ、大丈夫だよ。失礼なこいつらを、懲らしめないといけないからね。」
最後のリゼの言葉の意味が分からなく、ルミエールは首を傾げた。でも、リゼもお客さん達もそんな事を気にもせず。楽しそうに飲んでいる。
楽しそうに飲んでいるのを見ながら、リゼが作ってくれた料理を食べたのだった。
お酒も無くなり、皆が帰ろうと立ち上がった。
あの時笑っていたお客さん達がお会計をする際、何故かお会計の値段を聞いて、悲鳴が上がった……。
リゼは、仕返しだと言わんばかりに。悲鳴を上げているお客さん達の前で、高笑いをしているのをルミエールは苦笑いを浮かべながら見ていた。
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