皇帝の番~2度目の人生謳歌します!~

saku

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第一章

モブリアン・シルフィス

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いつもの様に、ルミエールは朝買い出しに行き。お昼から、ボヌルで働いていた時だった。

「此処が、ブラン様がよく行く所なの? こんな薄汚い……。」

ドアが開くと、昨日会ったシルフィスが居た。
シルフィスの後ろには、執事や侍女が何人か居る。

「……この失礼な女は誰だい。」

リゼやお客さん達は、怒った様な表情でシルフィスの方を見ている。

「なっ! 失礼な!! 私、モブリアン・シルフィスと申します。シルフィス国の王女ですわ! 此処にルミエール・リフェアという者は居ますか。」

(……私?)

ルミエールがシルフィスの方に行くと、向こうも覚えていたのかびっくりした表情をしていた。

「貴女、昨日の……。ふんっ! こんな気味が悪い女が、ブラン様のお気に入りですって? 間違いないではなくって?」

「はい! 皇帝が此処に良く来ていた事と、この方と親しく喋っていた所は確認済みです」

後ろに居た執事が、シルフィスに聞かれ。そんな事を言っていた。

(見られていたのね……。)


「私は、ブラン様の婚約者候補です。貴女なんて遊びなんだから、さっさと消えなさい!」

(……ブランの婚約者候補? そんな事、ブランは言っていなかった。)

ルミエールは、今度こそブランを信じると決めたのだ。
生まれ変わっても、ルミエールに会いに来てくれたのだから。

(だから、私も強くなるわ。貴方と一緒に居たいから…。)

「ブランから、そう言われたのなら私は身を引きます。ですが、貴女に言われる筋合いはありません。」

「なっ!! ブラン様を呼び捨てですって!? 私は優しさで言ってあげているのよ!? それに、お父様だって私が婚約者候補だと!」

シルフィスは、凄い形相でこちらを睨んでくるが恐れていては駄目だと思い、ルミエールも真っ直ぐと見つめ直す。シルフィス国の王がそう言っていても、ブランやネスからは聞いた事もないからだ。
それに、ブラン達竜人は。番が居るため婚約者候補なんて居ないのだ。

「貴女みたいな平民、相手にされる訳ないじゃない!!」

そう言うと、シルフィスは怒った様な表情でルミエールの方に向かってきた。

「ブラン様の婚約者は私よ!! さっさと消えなさいよ!! ブラン様は私のものよ!!」

「……ブランは、ものではないわ。そんな言い方しないで。」

「私に指図をするな!!」

そう言うと、側にあったコップを投げてきた。
ブランがくれた耳飾りのお蔭なのか、ルミエールには当たらなかった。

「王女様! 落ち着いて下さい」

執事や侍女が止めに入っているが、シルフィスはそれでもこちらに来ようとしている。

リゼやお客さん達が、ルミエールを守る様に立っていてくれている。

「……その王女を連れて帰りな。もう二度と来るな」

「……失礼します。」

リゼがそう言うと、執事は考えるような仕草をしシルフィスを連れて出ていく。
出ていく瞬間、シルフィスはルミエールを見ながら小さな声で「ゆるさない……。」と言っていた。


「ルミエール!!」

シルフィスが出ていったと同時に、慌てた表情のブランが目の前に転移してきた。

「ルミエール。大丈夫だったかい!?」

ブランによると、ルミエールに悪意を持ったものが居る事を察知したが、謁見中で転移が直ぐ出来なかったらしい。

「……ごめんよ。間に合わなかった。」

「大丈夫よ? ブランがくれた耳飾りのお蔭で怪我も無かったから。」

「ん? そういえば、なんでコップがこんな所に転がっているんだい?」

ブランは、目敏く転がっていたコップを見つけてしまった。それには苦笑いで返し。ブランに、気になっていた事を聞いてみる。

「……ブラン。婚約者候補が居るって本当?」

ルミエールは、ブランの事は信じている。

(でも、シルフィス様が言っていたみたいに婚約者候補が居たら……。)

「婚約者候補? いないよ?」

「え? でも……。シルフィス様が、自分はブランの婚約者候補だって……。」

「どうせ、父親に言われた嘘を信じたんでしょ?シルフィス国には、抗議文を出すよ。……でも、次はない。」

そう言いながら、ブランは怖い顔をしていた。


「シルフィス国の王女は来ないと思うけれど、もしかしたらまだ諦めていなかったら危ないから、気を付けて欲しい」

「明日、護衛を寄越す」と、ブランは言うと忙しかったのか直ぐ戻って行ってしまった。

忙しかったのに、わざわざ来てくれた事がルミエールはとても嬉しかった。

「ルミエール。あの感じだと、何を仕出かすか分からない。気を付けるんだよ」

「はい。」

リゼはそう言うと、ルミエールの頭をポンポンと撫で奥に戻っていってしまった。
お客さん達も「任せときな! また此処に来たときは守ってやるよ。」と、言ってくれた。
そう言ってもらえると、嬉しくもあり。恥ずかしさもある。

「ありがとうございます! ……でも、私も強くなります」

そう言うと、両手をぐっと握りしめる。

「やめときな。リゼさんみたいになっちゃいけね~」

「「「うんうん。」」」

一人のお客さんがそう言うと、周りの人は腕を組ながら頷いている。

「……それは、ちょっと可笑しいんじゃないかい?」

「そ、そろそろ、帰ろうかな~。」

「そ、そうだな。もう帰らねぇと怒られてしまうな」

何処から聞いていたのか、怒った様な表情をしているリゼが奥から出てくる。出てきたと同時に、慌てた様な表情でお客さん達は帰る支度をする。

「ふんっ! 弱っちい奴らだね!」

リゼは、そう言いながら帰り支度をしていたお客さんの方に向かっていった。
その光景を微笑みながら見る。

しかし、シルフィスはルミエールの知っている人に似ていた。
我が儘で。自分の思い通りにならないと、何を仕出かすか分からない所が。

(……気を付けていないと危ないかもしれないわね。)

    
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