皇帝の番~2度目の人生謳歌します!~

saku

文字の大きさ
23 / 36
第一章

リーオ・フレリア

しおりを挟む

長い金の髪を後ろで一つにまとめ。水色の瞳を細め微笑みながら、ルミエールを見ている女性はリーオ・フレリア。

「リーオ!!」

「お久しぶりでございます。リゼリア様、お会いしたかった……。貴女様の今の名を、私に教えて下さいませ?」

「ルミエール……ルミエール・リフェアよ」

「ルミエール様……また貴女様の名を呼べて、リーオは幸せでございます」

リーオはそう言うと、深々と頭を下げた。
リゼリアの頃からそうだった、人族であるリゼリアを馬鹿になんてせずリーオは慕ってくれていた。
諜報部隊と呼ばれる所に居たリーオは、リゼリアがブランの婚約者になってからは、侍女として就いてくれていた。

リゼリアがブランの噂を聞いたパーティーの少し前に、リーオのご両親が倒れたから。リーオは実家に帰っていた。だから、死ぬ直前リーオには会えなかったのだ。

「リーオ。皇帝である私の扱いが雑じゃないか?」

そう言いながら、近くにいた騎士にモブリアンを連れていく様に指示をする。

「何を言ってらっしゃるんですか? 私が、皇帝であるブラン様にそんな事するわけないじゃないですか。リゼリア様を死なせ、私の愛する夫に後始末を全て任せ。眠りについていたブラン様になんかに、そんな事するわけないじゃないですか。」

(これは、怒っているわね。)

リーオは、夫であるネス・フレリアとは凄くラブラブなのだ。ブランやネスの事も小さい頃から知っているらしい。

「フフッ。リーオとブランは、本当に仲良しね~」

「「違う!! (います!!)」」

前と全然変わらない。いつも二人が言い争って、リゼリアとネスは呆れながらも見ているのだ。

「ルミエール様、ブラン様より聞きました。今すぐには戻ってこられないんですね……。」
 
「リーオ。私は、もう一度ブランとやり直したいの。それも一から……。だから、私は今普通の民よ? だから、様付けは駄目よ?」

「……分かりました。ルミエールさん」

ルミエールがそう言うと、リーオは渋々納得してくれた。

「ブラン様!! 早く惚れるようなかっこいいことをしなさい!」

「格好いい事って……無茶を言うな!」

「フフッ。ブランは、いつも格好いいわよ?」

ルミエールの事を常に思い、助けてくれる人なんだから。

「ルミエール!!」

ブランは、いきなり抱きついてきた。

「フフッ。ブラン、苦しいわ?」

「ルミエールが可愛すぎるのが悪い……。」 

(……? 私、可愛い事なんか言ったかしら?)

首を傾げていると、リーオが近づいてきた。

「ブラン様。ルミエールさんから離れなさい」

リーオは、ブランを引き剥がすと。ルミエールの前に立った。

「まだ結婚もしていない異性と抱き合わない! 城なんかで抱き合ったら、誰が見ているか分からないですよ! 抱き合うんだったら、部屋とかバレない所でしなさい!!」

「そうだな。次からそうする。」

ブランは納得したみたいだ。

「……リーオ。バレない所でも、婚約者や結婚していないんだから駄目だぞ?」

後ろからそんな声が聞こえた。

「あら、ネスにシル」

「 ルミエールさん来られたんですね。」

「えぇ。」

後ろを振り向くと、ネスとシルが此方に向かってきていた。

「ネス様!!」

「リーオ。良かったですね、ルミエールさんと会えて」

リーオがネスを見つけて抱きつく。そんなリーオを、ネスは受け止める。ネスの前では、いつもの格好いいリーオではないのだ。

「はい! ネス様が言って下さなければ、この器の小さい男に私はずっと知らされなかったでしょう……。」

「おい。私は器の小さい男ではないぞ?」

「あら! 何を言ってらっしゃいますかブラン様。リゼリア様と私が、仲良かったのを羨ましそうに見ていたのは知っていますよ? それに嫉妬して、直前まで言わなかったつもりでしょ?」

「うぐっ……。」

「ブラン、そうなの?」

確かに、リーオとは友達の様に接し。姉の様に慕っていた。

「ルミエール、違うよ!? ちゃんと落ち着いたら、言おうと思っていたんだ……。」

ブランは膝をつくと、心配そうな目で下から見上げてきた。

「フフッ。大丈夫よ? ちゃんと、ブランの事は信じているわ? 只、ブランがリーオと私が仲良かったのを嫉妬していたのが嬉しくて……。」

(ちゃんと私を見て、愛してくれていると実感が出来る。そう思うと、凄く嬉しい。)

ブランも嬉しそうに、ルミエールを抱き締めてくれる。

「絶対、私達の事を忘れていそうですね」

「ルミエールさんに抱きつくなんて……ブラン様、そこを変わりなさい!」

「こらこら、リーオ。邪魔しては駄目ですよ?」

後ろから、シルとリーオ。ネスの声が聞こえ、我に返る。ネスは、リーオが此方に来ようとしている所を止めていた。

「ブ、ブラン離して頂戴? 恥ずかしいわ」

「大丈夫。前世でも、よく抱き締めていたんだよ?」

何が大丈夫なのか分からないわ!
離れようとブランを押すが、びくともしない。

「フフッ。じゃぁ、抱き締めるのはこの辺にしてそろそろお茶にしようか?」

「……意地悪だわ」

ルミエールが必死に離れようとしているのを、ブランは微笑みながら見ていた。

(でも、ブランから離れようと言われたらそれもそれで寂しい……。)

「……ブラン様!! お茶のご用意が出来ましたので、席へ!!」

「はいはい。リーオが、怒りそうだからまた後からだね。ルミエール」

「なっ!! 後からも、しませんからね!!」

恥ずかしくなりながらも、ルミエールはブランにそう言うと。そそくさとテーブルの方へと歩いていく。
テーブルでは、リーオがお菓子の用意もしていた。

「さぁ、お好きだったお菓子もご用意させて頂きました!」

「わぁ~! ありがとう! リーオ」

「リーオは、ルミエールさんのその笑顔が見れて幸せです。」

リーオはそう言うと、嬉しそうに笑った。

「リーオ、貴女も一緒に座って?」

「はい。ルミエールさんの仰せのままに」

リーオは、頭を少し下げるとネスの隣に座った。

「ねぇ、何で私のお茶の用意が無いんだい?」

「えっ!? ブラン様、いるのですか?」

「リーオ!! 酷いぞ!」

「ふん。ルミエールさんを一人占めしていた罰です」

リーオとブランの言い合いはいつもの事なので、気にせずネスと喋る。


「本当に仲良しね~」

「まぁ、小さい頃から知っていますからね」

「ねぇねぇ、リーオって小さい頃からネスが好きだったの?」

リーオは、ネスと他の人達との差が激しすぎるのだ。

「はい! ネス様は、昔から聡明で。かっこよくて、優しくて……私の好きな方ですわ!」

「……リーオ。その辺にしておくれ。」

リーオの話を聞き、ネスは恥ずかしそうに顔を赤くしていた。

(……ああやって、気持ちを素直に伝えれるのが羨ましい。)

二人を見ながら、そんな事を考えていた。
しおりを挟む
感想 29

あなたにおすすめの小説

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

【完結】タジタジ騎士公爵様は妖精を溺愛する

雨香
恋愛
【完結済】美醜の感覚のズレた異世界に落ちたリリがスパダリイケメン達に溺愛されていく。 ヒーロー大好きな主人公と、どう受け止めていいかわからないヒーローのもだもだ話です。  「シェイド様、大好き!!」 「〜〜〜〜っっっ!!???」 逆ハーレム風の過保護な溺愛を楽しんで頂ければ。

夫に顧みられない王妃は、人間をやめることにしました~もふもふ自由なセカンドライフを謳歌するつもりだったのに、何故かペットにされています!~

狭山ひびき
恋愛
もう耐えられない! 隣国から嫁いで五年。一度も国王である夫から関心を示されず白い結婚を続けていた王妃フィリエルはついに決断した。 わたし、もう王妃やめる! 政略結婚だから、ある程度の覚悟はしていた。けれども幼い日に淡い恋心を抱いて以来、ずっと片思いをしていた相手から冷たくされる日々に、フィリエルの心はもう限界に達していた。政略結婚である以上、王妃の意思で離婚はできない。しかしもうこれ以上、好きな人に無視される日々は送りたくないのだ。 離婚できないなら人間をやめるわ! 王妃で、そして隣国の王女であるフィリエルは、この先生きていてもきっと幸せにはなれないだろう。生まれた時から政治の駒。それがフィリエルの人生だ。ならばそんな「人生」を捨てて、人間以外として生きたほうがましだと、フィリエルは思った。 これからは自由気ままな「猫生」を送るのよ! フィリエルは少し前に知り合いになった、「廃墟の塔の魔女」に頼み込み、猫の姿に変えてもらう。 よし!楽しいセカンドラウフのはじまりよ!――のはずが、何故か夫(国王)に拾われ、ペットにされてしまって……。 「ふふ、君はふわふわで可愛いなぁ」 やめてえ!そんなところ撫でないで~! 夫(人間)妻(猫)の奇妙な共同生活がはじまる――

【完結】男の美醜が逆転した世界で私は貴方に恋をした

梅干しおにぎり
恋愛
私の感覚は間違っていなかった。貴方の格好良さは私にしか分からない。 過去の作品の加筆修正版です。

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない

三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

処理中です...