皇帝の番~2度目の人生謳歌します!~

saku

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第一章

別れ

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ボヌルまでブランに送って貰ったルミエールを待っていたのは、涙目になっているリゼとお店にいつも来てくれている常連のお客さん達が扉を開けてすぐ、目に飛び込んできた。
何故か、お客さん達は鍬や斧を手に持っていた……。

「ルミエール!!」

扉からルミエールが入ってくるのを見つけると、リゼは泣きそうな表情でルミエールへと駆け寄り、ルミエールの事を抱き締めた。

「リゼさん……。」

「あんたが無事で良かった……。朝起きたら、ルミエールが居なくなっててびっくりしたんだからね!」

「心配お掛けしてすみません……。」

ルミエールは、心配を掛けた事が申し訳ない気持ちでいっぱいだったが、それと同時にとても嬉しかった。
自分が居なくなったと分かり、こんなに自分の事を心配してくれていた人達が沢山居たのだと……嬉しくなってしまった。
ボヌルで働けて良かったと、ルミエールは心から思った。

「……ルミエール。皇帝陛下と話したんだが、あんたは此処を出て城に行きなさい」

「えっ……」

「陛下と一緒になるんだ。これから、ルミエールに危険なことが無いとは言えないだろう? だったら、警備がしっかりしている城に行くべきだよ……。何、此処に来るなとは言っていないんだから、そんな顔をするんじゃないよ!」

下がった眉に泣きそうな表情をしていたルミエールを見て、リゼはルミエールの頭をぐしゃぐしゃと撫でる。

「……また、絶対にボヌルに来ます!!」

「あぁ、いつでも来なさい。此処は、あんたの家なんだから。陛下と喧嘩した時は、此処に家出しにきな」

「リ、リゼさん!?  嘘でも、家出なんて言うのやめてください!」

豪快に笑っているリゼに、ブランが止めにはいる。

「……はい! 此処に絶対来ます!!」

「ルミエール!?」 

「ルミエール様、私もお手伝い致しますから安心してくださいませ!!」

「リーオは、手伝わなくてよい!! 」

「クククッ。こんな陛下が見られるとは、本当びっくりだね~」

ルミエールがリゼの言葉に即答し。リーオが賛成したのを聞き、ブランが焦り始める。そんな光景を見ていた、周りに居た人達やリゼの笑い声が店の中に響いた……。

少し離れて、その様子を見ていたブランの護衛の為に一緒にボヌルに来ていた騎士団の人達は、城や戦でのブランしか知らなかった。だからなのか、ブランの変わりように目を見開き。驚愕したような表情をしながら固まっていた。
騎士団の者達の中でも、貴族の出身の者達は目を疑ってしまった。城やパーティーでは、無表情でひたすら業務をこなし。戦の時には、感情が抜け落ちた様な瞳で淡々と切り捨てていくブランしか見ていなかった。
そんなブランが、平民達や番の女の前では楽しそうに喋っているのだ。
あり得ない光景に目を疑い、信じられなかった。

「ル、ルミエール、家出なんてしない……よな?」

「フフッ、そんなに焦らなくても家出なんかしないわよ? ……でも、此処にまた来てもいい?」

焦った様な表情をしているブランを見て、ルミエールは可笑しそうに笑う。

(リゼリアだった時も、喧嘩なんかした事なかったじゃない。只、私が勘違いしてブランを避けてただけ。そんな失敗を二度もしたくないわ。だって、話し合えば分かりあえる筈だから……。)

「あぁ、また一緒に来よう。」

「えぇ」

また、リゼ達に会えるのだと思うとブランの一言にルミエールは嬉しくなった。
ブラン自身も、ルミエールが大切にしているリゼ達を無下になんか出来る筈なかった。
ルミエールの笑顔を見られるなら、出来る範囲で願いを叶えたいと思っていたのだ。

その後、ボヌルではルミエールを送り出すと称して飲み食いが行われていた。
主役であるルミエールは、最後だからとリゼに無理を言っていつものように料理を運んだり、料理をリゼから教えて貰ったりと普段と変わらない事をしていた。

「ルミエール、あんたもあっちに行って食べて来て良いんだよ?」

「……いえ。リゼさんの料理を教えて貰うのも楽しいですし、皆さんが楽しそうにしているのを見るのも大好きなんです。」

「そうかい。短い間だったけれど、ルミエールが居なくなるというのは寂しくなるね……。」

「……リゼさん、短い間でしたけれどお世話になりました」

ルミエールは、泣きそうなのを堪えながら頭を深く下げる。

「ルミエールが幸せになるんだったら良いんだよ。また、いつでも来たらいいさ」

「はい……。」

リゼはルミエールの頭をポンポンと軽く叩くと、抱き締めてくれた。ルミエールの目からは、堪えていた涙が流れ落ちる。

一生会えない訳ではない。短期間だけれど、ここで過ごした時間や出会いは沢山あったのだ。
いつもの日常と変わって、前世の様な暮らしになると言うのに不安や寂しさがある。だが、ブランと一緒に居られるという嬉しさでルミエールの気持ちは今、ぐちゃぐちゃになっていたのだ。

流れ落ちていた涙をリゼが拭ってくれる。
そんな二人を、お店に居た者達は優しい眼差しで見守っていた。

「陛下。ルミエールを幸せにしてやってくれるんだろ?」

「はい。必ず」

「なら、いいさ」

ブランの言葉を聞いて、リゼは安心した様な表情で優しく微笑んだのだった……。



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