皇帝の番~2度目の人生謳歌します!~

saku

文字の大きさ
34 / 36
第一章

幸せ

しおりを挟む
ルミエールが朝起きると、寝転がりながらこちらを見ているブランが居た。
起きるまでの間。寝顔を見られていたと思うと、ルミエールは恥ずかしくなり、隠れてしまいたくなった。
そんなルミエールをブランは後ろから抱き締め、微笑ましそうに見ていた。
起こしに来たネスとリーオが部屋に来たことで、二人は寝台から出る事になった。

リーオは部屋に入ってきた途端、ルミエールの服が乱れていないかなどをチェックし、安心したようにため息をつくとブランにポツリと小さな声で「ヘタレ陛下」と呟いていた。
二人が火花を散らしている間に、ルミエールは別の部屋で着替えを済ませる。ルミエールが戻ってきた時には、ブランも着替えを済ませていた。

二人は食事を摂り終わると、ブランは仕事へ。ルミエールは、マナーなどを教えて貰うために別れる。
リゼリアだった頃と、今とでは貴族の顔ぶれも変わっている。マナーも覚えているかも不安なため、一から学ぶことにしたのだ。

(ブランの隣に居ても、恥ずかしくないようにしなくちゃ……。)

ブランは気にしなくても大丈夫だと言っていたが、ルミエール自身ブランに恥をかかせるような事はしたくなかった。まだ結婚していなくても、ブランの婚約者だから他国の人達と会う事だって増えるだろう。
その時、リゼリアの生まれ変わりだという事に……ブランの婚約者だという事にルミエールは甘えたくなかった。 
どれだけ大変でも、自分が決めた道だ。ブランと一緒に歩んでいくと決めた日から、ルミエールは覚悟出来ていたのだ。

「ルミエール様。講師の方が来て下さっています」

「行きましょう」

リーオに声を掛けられ、ルミエールは座っていた椅子から立ち上がる。
ブランはルミエールの意思を聞くと、すぐに講師を手配した。その人は、急なお願いにも関わらず講師を受けてくれたのだ。

ルミエールは、講師の人からマナーを学び、どれだけ大変なのかを痛感する。
リゼリアだった頃は、祖国では蔑ろにされていた為マナーなど学べなかった。この国に来て、ブランの計らいで色々な事を学び始めたが、学び終わる前にリゼリアは死んでしまった。
前世で学んでいた事があったとしても、忘れている部分が出てきていた。平民としての暮らしになれてしまっていたルミエールは、自分の出来無ささに苦笑いを浮かべる。

知らない国があったり、貴族の顔ぶれが変わっていたりと前世から変わっている事も多く、ルミエールは驚愕する事が多かった。

一通り教わり終わったのは、外が薄暗くなってきた時だった……。
ルミエールは、講師の人を見送ると机にうつ伏した。


「……疲れたわ」

「フフッ。お疲れ様です。」

リーオはハーブティーを淹れ、ルミエールにカップを差し出した。ルミエールはカップを持つと、一口飲みほっと一息をつく。

「大変だけど、学べるのは嬉しいわ。」

「それはようございました。」

楽しそうな表情のルミエールを見ながら、リーオは嬉しそうに微笑んでいる。

コンコンコンッ……。

扉がノックされ、リーオが扉を開けに行く。扉を開けると、そこにはブランとネスが立っていた。

「ブラン!?」

「今大丈夫かい?」

「どうしたの?」

扉の前から動かないブランに、ルミエールは不思議そうな表情をしながら近づく。
そんなルミエールに、ブランは意地悪そうに微笑むと自分の方へと手を引っ張り、抱き寄せた。

「ブ、ブラン!?」

「陛下! ルミエール様をどこに連れて行く気ですか!?」

何処かに転移をしようとしているブランに気づいたルミエールとリーオは、焦った様な表情をした。
リーオは、慌てた様子でこちらに来ようとしていた。

「すぐに戻るから心配するな」

ブランはリーオにそう言い残すと、ルミエールと一緒に光に包まれながら転移してしまった。
ルミエールが次に目を開けた時、目の前には様々に咲いている花と満点の星空とが目に飛び込んできた。

「綺麗……」

月の光に照らされている花が、風に吹かれて揺れており幻想的雰囲気だ。
そんな光景を見て、無意識にルミエールの口からは言葉を発してしまった。

「ここを見つけた時、自然や花が好きな君が喜ぶと思ったんだ」

「えぇ、とっても素敵な所ね!」

ブランは、自分の着ていた上着を地面に敷くとその上にルミエールを座らせた。ブランもルミエールの隣に座り、楽しそうにキョロキョロと辺りを見回しているルミエールを見ながら微笑んでいた。

「疲れも吹っ飛んだかい?」

「もちろん! 連れてきてくれてありがとう。ブラン」

「君は、昔から頑張りすぎる所があるから……休憩も必要だよ?」

「えぇ……」

ルミエールは、自分の頭をブランの肩へ凭れ掛けさせながらボーっと、景色を眺める。

「頑張りすぎなくても良い。自分達のペースで進んでいけば良いんだ。」

「でも、私が出来ない事で迷惑かけるかもしれない……。それが怖いの 」

「あの頃から変わっている事だって多いんだ。誰だって、最初から完璧な筈ないじゃないか。」

「フフッ。そんなに私を甘やかしちゃダメよ?」

ルミエールは可笑しそうに笑いながら、ブランの鼻を指先でつついた。

「愛しい人を甘やかしちゃダメなのかい?」

二人とも見つめ合うと、クスクスと笑う。

「ルミエールは何かしたい事はあるかい?」

「祖国の人達の事も気になるし、色々な景色を沢山見たいわ! 沢山やりたい事があるの」

「あぁ、君がやりたい事を全てやろう」

「ありがとう」

前々から、祖国の人達がどうなったかルミエールは気になっていた。それに、前世ではあまり見られなかった景色を沢山見られると聞いて、ルミエールは嬉しくなった。

「やりたい事をやっても良い。何かあったら二人で乗り越えて行こう。二人で幸せになるんだ」

「えぇ!!」

見つめ合いながら微笑んでいる二人の頬を、風が撫でた。
ルミエールはこれから先の不安もありながらも、こんな何気ない幸せが続けばいいと願った。だが、ルミエールの思いとは裏腹に各国は、水面下で動き出していたのだった……。


しおりを挟む
感想 29

あなたにおすすめの小説

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

【完結】タジタジ騎士公爵様は妖精を溺愛する

雨香
恋愛
【完結済】美醜の感覚のズレた異世界に落ちたリリがスパダリイケメン達に溺愛されていく。 ヒーロー大好きな主人公と、どう受け止めていいかわからないヒーローのもだもだ話です。  「シェイド様、大好き!!」 「〜〜〜〜っっっ!!???」 逆ハーレム風の過保護な溺愛を楽しんで頂ければ。

夫に顧みられない王妃は、人間をやめることにしました~もふもふ自由なセカンドライフを謳歌するつもりだったのに、何故かペットにされています!~

狭山ひびき
恋愛
もう耐えられない! 隣国から嫁いで五年。一度も国王である夫から関心を示されず白い結婚を続けていた王妃フィリエルはついに決断した。 わたし、もう王妃やめる! 政略結婚だから、ある程度の覚悟はしていた。けれども幼い日に淡い恋心を抱いて以来、ずっと片思いをしていた相手から冷たくされる日々に、フィリエルの心はもう限界に達していた。政略結婚である以上、王妃の意思で離婚はできない。しかしもうこれ以上、好きな人に無視される日々は送りたくないのだ。 離婚できないなら人間をやめるわ! 王妃で、そして隣国の王女であるフィリエルは、この先生きていてもきっと幸せにはなれないだろう。生まれた時から政治の駒。それがフィリエルの人生だ。ならばそんな「人生」を捨てて、人間以外として生きたほうがましだと、フィリエルは思った。 これからは自由気ままな「猫生」を送るのよ! フィリエルは少し前に知り合いになった、「廃墟の塔の魔女」に頼み込み、猫の姿に変えてもらう。 よし!楽しいセカンドラウフのはじまりよ!――のはずが、何故か夫(国王)に拾われ、ペットにされてしまって……。 「ふふ、君はふわふわで可愛いなぁ」 やめてえ!そんなところ撫でないで~! 夫(人間)妻(猫)の奇妙な共同生活がはじまる――

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

【完結】男の美醜が逆転した世界で私は貴方に恋をした

梅干しおにぎり
恋愛
私の感覚は間違っていなかった。貴方の格好良さは私にしか分からない。 過去の作品の加筆修正版です。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない

三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

処理中です...