ちっちゃくて可愛いものがお好きですか。そうですかそうですか。もう十分わかったので放してもらっていいですか。

南田 此仁

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1~10話

こうかはばつぐんだ!【中】

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 手のひらに微かな動きを感じて、うっとりと瞑っていた目を開く。
 家主の両目は固く閉じられたまま。
 よくよく見れば、眉間のシワがほんの少し浅くなったような……。なっていないような……?

 家主の口元へと意識を向けると、絶えず洩れ聞こえていたうめき声は消えて、すぅすぅと穏やかな呼吸が聞こえはじめた。

 ああ、よかった……。
 眠ったことで体調が落ち着いてきたのだろうか。私の『手当て』も、ちょっとくらい効果があったのなら嬉しい。

 念のため五分ほどそのまま手を当て続け、呼吸が完全に落ち着いたのを確認してからそっと手を離した。

 ゆっくりゆっくり後ずさり、来た道を引き返して絨毯に下りる。
 ソファを見上げ、変わらず静かな寝息が聞こえているのを確認すると、私は今度こそドールハウスへの帰路についた。





 ドールハウスの一室で、二度目の朝を迎える。
 とは言っても、今が本当に朝なのかはわからない。一体、この夢が始まってから何十時間が経ったことだろう。

「おはよう、おじいちゃん」

 ベッドサイドのカプセルを撫で、朝の挨拶を告げる。

 窓も時計もないこの『部屋』はおそらく、家主専用の休憩室なのだと思う。
 家主は何時間か置きに疲れた顔をしてこの『部屋』を訪れては、しばしの仮眠をとって戻っていく。

 私はといえば、あのあとも二度ほど仮眠中の家主に『手当て』をしていた。

「だって、すごく辛そうだったし……」

 誰にともなく言い訳をする。

 自ら見つかるリスクを高めていることは自覚しているけれど、苦しんでいるのがわかっていて今さら放っておくなんて無理な話だ。
 それに……侵入者に関心のなさそうな家主のこと。万が一私を見つけたとしても、大した反応はしないのではないかとも思っている。

 なにより不思議なことに、『手当て』には驚くほど効果があるようなのだ。
 ぜぇぜぇと苦しげな家主が、私の触れた端からすやすやと穏やかな寝息を立てはじめる。
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