ちっちゃくて可愛いものがお好きですか。そうですかそうですか。もう十分わかったので放してもらっていいですか。

南田 此仁

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11~20話

大きさはいい勝負かもしれない【中】

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 お風呂を諦めるか、クロと一緒に入るか。

「むむ……」

 水着でもあればよかったけれど、あいにくそんなものはない。

 諦めるか、一緒か。

 ぱくっ、もぐもぐもぐもぐ……

「むぐむむ……」

「ヒナ? 難しい顔をしてどうした?」

 乙女心のわかっていない御仁ごじんがぷにぷにと頬をつつく。

 おそらくクロは、子猫を洗ってやるくらいの感覚でいるのだろう。
 真っ直ぐ向けられた眼差しにはやましさの欠片もない。

「……わかりました。一緒にお風呂、入らせてください……」

「ああ、もちろん」

 先ほどから色々なものを失っている気がするのは、果たして気のせいだろうか。




 ロングジャケットジュストコールの腰元にあるポケットの中。
 つま先立ちで伸び上がり、ポケットの縁から顔を覗かせる。

「あまり顔を出さないように」

「はーい」

 広い廊下の天井一面に鳥やドラゴンの舞い遊ぶ雄大な青空が描かれ。見るからに高そうな絵画や彫刻が壁沿いにずらりと並ぶ様は美術館さながらである。

 廊下を進み、階段を上がって。さしたる距離もなく、あっさりとクロの部屋にたどり着いた。

 両サイドに甲冑の飾られた、大きく重厚な扉。
 クロが扉の前に立てば、オブジェだと思っていた甲冑が動きだして左右に扉を開けた。

「……!」

 広い広いと思っていた執務室よりもさらに広い室内に、あんぐりと口を開く。

 一体何十畳あるのだろう。
 四人家族だってのびのびと暮らせそうなこの空間が、クロ一人の部屋だとは。

「もう出ても大丈夫だ。窮屈だったろう」

 風呂敷スカーフ包みと手桶を抱え、迎えにきたクロの手のひらに乗る。

「広いですねぇ……」

 背の高いクロが悠々と寝そべれそうなソファに、優雅なアフタヌーンティーを楽しめそうな洒落たテーブルセット。
 キャビネットの上に置かれた大きな花瓶にはブーケのようにたっぷりと花が活けられ、対照的に書き物机の上は整然として書類の一枚もない。

「日中はほとんど執務室に籠っているから、ここを使うのは着替えのときくらいだけどな」

「なんて勿体ない……」

 遊ばせておくぐらいなら、いっそ私が移住してこようか。
 ……広すぎて遭難するかもしれないけれど。
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