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21~30話
愛してるの意味【下】
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「へ?」
「ヒナからの口づけが欲しい。それがあれば、いくらでも待てる気がする」
「なっ――」
なんという言い分だろう!
まだ『する』とも言っていないのに、クロは早くも目を瞑って待機している。
「〰〰〰〰」
一方的にされるのと自分からするのとでは、恥ずかしさが全然違うのだ。
心の準備も必要だし、あらん限りの勇気を振り絞らなくてはいけないし、心臓はドコドコうるさくて、動作もぎこちなくなって、唇は乾燥してないかなとか、そもそもどこに口づければいいのかとか、他にも色々と、色々と――――――ああもうっ!
ちゅっ!
クロの顔前に掲げられた手のひらの上。
二歩進んで背伸びして、クロの眉間に唇を触れた。
「――――!」
カッと目を見開いたクロが、息を呑んでうち震える。
どうやら喜んでもらえているらしい。
その目元がじわりと赤く染まっていくのを、私も茹でだこのような顔をして見守った。
「っヒナ……、返事はいくらでも待つが、頼むから俺以外にこんなことをしないでほしい」
「しませんよっ!」
他の人に口づけなんて、頼み込まれてもお断りだ!
目元を赤く染めたまま、クロがお返しとばかりに私の顔中に口づける。
ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ、
クロのスキンシップが過剰なのはいつものこと。
けれど私はもう、ここに込められた感情の意味を知ってしまったから。
温かなクロの唇が肌に触れるたび、私の心の奥にまで熱を灯されていくような、言い知れないムズムズ感が蓄積していく。
ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ、ちゅ――
「クロっ! クロ、もうっ! 気持ちはちゃんと伝わりましたから……っ!」
ストップストップ、と突き出した手のひらにまで口づけを落として、ようやくクロが止まった。
「……はぁ。想いを口にすれば多少落ち着くかと思ったが、さらに想いが強まってしまったようだ」
飾らない言葉で絶え間なく注がれ続ける愛情。
触れ合った部分から、魔力だけでなく愛情までもが流れ込んでくる気がする。
「寝ている途中で場所を移すことになってすまないが、俺の部屋で一緒に寝よう。今ヒナを放すのは無理だ」
クロはそう言って、休憩室から私を拐った。
「ヒナからの口づけが欲しい。それがあれば、いくらでも待てる気がする」
「なっ――」
なんという言い分だろう!
まだ『する』とも言っていないのに、クロは早くも目を瞑って待機している。
「〰〰〰〰」
一方的にされるのと自分からするのとでは、恥ずかしさが全然違うのだ。
心の準備も必要だし、あらん限りの勇気を振り絞らなくてはいけないし、心臓はドコドコうるさくて、動作もぎこちなくなって、唇は乾燥してないかなとか、そもそもどこに口づければいいのかとか、他にも色々と、色々と――――――ああもうっ!
ちゅっ!
クロの顔前に掲げられた手のひらの上。
二歩進んで背伸びして、クロの眉間に唇を触れた。
「――――!」
カッと目を見開いたクロが、息を呑んでうち震える。
どうやら喜んでもらえているらしい。
その目元がじわりと赤く染まっていくのを、私も茹でだこのような顔をして見守った。
「っヒナ……、返事はいくらでも待つが、頼むから俺以外にこんなことをしないでほしい」
「しませんよっ!」
他の人に口づけなんて、頼み込まれてもお断りだ!
目元を赤く染めたまま、クロがお返しとばかりに私の顔中に口づける。
ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ、
クロのスキンシップが過剰なのはいつものこと。
けれど私はもう、ここに込められた感情の意味を知ってしまったから。
温かなクロの唇が肌に触れるたび、私の心の奥にまで熱を灯されていくような、言い知れないムズムズ感が蓄積していく。
ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ、ちゅ――
「クロっ! クロ、もうっ! 気持ちはちゃんと伝わりましたから……っ!」
ストップストップ、と突き出した手のひらにまで口づけを落として、ようやくクロが止まった。
「……はぁ。想いを口にすれば多少落ち着くかと思ったが、さらに想いが強まってしまったようだ」
飾らない言葉で絶え間なく注がれ続ける愛情。
触れ合った部分から、魔力だけでなく愛情までもが流れ込んでくる気がする。
「寝ている途中で場所を移すことになってすまないが、俺の部屋で一緒に寝よう。今ヒナを放すのは無理だ」
クロはそう言って、休憩室から私を拐った。
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