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61~70話
64d、ご主人様は人目をわかっていない
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「たっ、たくさん見てるじゃないですか……!」
「まだ足りない。いつだってマヤの瞳に映っていたいんだ」
「…………善処、し、ます……」
『す』の形に突き出された唇へ、誘われるように口付けを落とす。
「!! ガル様っ」
慌てて口元を押さえたマヤが、焦ったように左右を見やる。
俺を見てくれと言った側から周りばかり気にするとは。
「ほら、余所見しない」
「うぅ……」
真っ赤な頬に手を添えてこちらを向かせれば、潤んだ漆黒が恨みがましく俺を睨んだ。
屋台の菓子が気になっている様子だったので、マヤの分にと一つ買う。
本人に聞けば遠慮してしまうとわかっているので、特に興味を引かれていそうな物は止められる前にさっさと買うことにしたのだ。
「まいどあり!」
「ありがとうございます……」
ずいっと差し出された菓子を、おずおずとマヤが受け取る。
薄く飴でコーティングされた苺が、串に三つ連なって刺さっているようだ。
屋台を離れると、串を手にマヤが気恥ずかしそうに言った。
「ガル様……これ、ありがとうございます。好きなんです……苺……」
「……もう十本ほど買ってくるか?」
「一つで十分ですっ!」
マヤは飴がけされ艶々と光る苺をしばし目を輝かせて眺めると、おもむろに一粒、ぱくりと口に含んだ。
「まだ足りない。いつだってマヤの瞳に映っていたいんだ」
「…………善処、し、ます……」
『す』の形に突き出された唇へ、誘われるように口付けを落とす。
「!! ガル様っ」
慌てて口元を押さえたマヤが、焦ったように左右を見やる。
俺を見てくれと言った側から周りばかり気にするとは。
「ほら、余所見しない」
「うぅ……」
真っ赤な頬に手を添えてこちらを向かせれば、潤んだ漆黒が恨みがましく俺を睨んだ。
屋台の菓子が気になっている様子だったので、マヤの分にと一つ買う。
本人に聞けば遠慮してしまうとわかっているので、特に興味を引かれていそうな物は止められる前にさっさと買うことにしたのだ。
「まいどあり!」
「ありがとうございます……」
ずいっと差し出された菓子を、おずおずとマヤが受け取る。
薄く飴でコーティングされた苺が、串に三つ連なって刺さっているようだ。
屋台を離れると、串を手にマヤが気恥ずかしそうに言った。
「ガル様……これ、ありがとうございます。好きなんです……苺……」
「……もう十本ほど買ってくるか?」
「一つで十分ですっ!」
マヤは飴がけされ艶々と光る苺をしばし目を輝かせて眺めると、おもむろに一粒、ぱくりと口に含んだ。
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