ご主人様は愛玩奴隷をわかっていない ～皆から恐れられてるご主人様が私にだけ甘すぎます！～

６１～７０話

６８b、クリスマス番外編 １２月２５日

………………


ガルが帰宅し、夕食の時間。
テーブルの上に並べられた豪華な料理に目を丸くする。

「鳥の丸焼き……？」

リクエストしたケーキはテーブルの奥にホールでどんと置かれているが、なぜか中央にはひと抱えもありそうな鳥の丸焼きが鎮座している。

チキン？　ターキー？
さすがに贅沢すぎると憚られて、チキンまではリクエストしなかったはずだけれど……。

綺麗な飴色に焼き上げられた鳥の丸焼きは芳こうばしく食欲をそそる香りを放ち、生クリームでデコレーションされたケーキには真っ赤な苺がふんだんに乗せられている。
周りに置かれたスープや副菜も彩り豊かで、料理人の気合いの入り具合を感じさせた。

「ガル様……今日はこ・の・国・で・も・何かお祭りの日なんですか？」

「いや……、料理長レーベントが初めてマヤからリクエストを受けたと喜んで、少々張り切り過ぎたようだ」

「少々……」

「レーベントは孫のようだと言ってマヤを気に入っているからな。元々は豚の丸焼きを作ろうとしていたところを、さすがに食べきれないだろうと他の使用人が止めたらしい。……豚の方がよかったか？」

「いえ……」

元の世界にいたときの、一人きりの夕食とは何もかもが違う。
ケーキにチキン。温かな優しさと愛情に包まれて、大好きな人と過ごすクリスマス。

異世界に飛ばされて奴隷として売られた先で、元の世界にいた時とは比べようもないほど、こんなに素敵なクリスマスを迎えられるなんて。

「……嬉しいです、とっても」

ともすれば涙が込み上げてしまいそうで、ガルの胸にぐりと顔を埋める。
声が震えてしまっただろうか。ガルの大きな手の平が、優しく頭を撫でた。