ご主人様は愛玩奴隷をわかっていない ~皆から恐れられてるご主人様が私にだけ甘すぎます!~

南田 此仁

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番外編

a、私は年越しをわかっていない

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 一年の最後の日。
 今夜は一年で最も特別な夜。
 皆、家で家族と共に過ごすのだ。

 急ぎの任務はなかったからといつもより早く帰宅したガルは、日頃の労いを伝え夕食前に使用人全員を家へと帰した。




 食堂のテーブルに用意されていた夕食を食べ、ガランとして人気のない屋敷の中をガルに抱かれて移動する。

「今夜は神の御渡りがある」

「みわたり?」

「ああ。今年の歳神であるシィバ神が去り、来年の歳神となるケケ神が年を渡ってくる。……まあ、世を見守る神の交代の日だな」

 なんでもこの世界には十三柱の神様がいて、最上位の絶対神を除く十二柱が年交代で世界を見守ってくれているらしい。

「御渡りを目にすることは最大の不敬とされている。だから今夜は皆早くに眠るんだ」

「へぇー」

 となると、この世界では初日の出を見たりはしないのだろう。



 いつも通り一緒に入浴を済ませ、いつもより幾分早くベッドに入る。

「ガル様、さっきのお酒は何をしてたんですか?」

 ベッドに入る直前、ガルは棚から見るからに上等そうなワインボトルを取り出すと、ローテーブルに並べた三つのグラスそれぞれに赤ワインを注いで、飲むでもなくそのまま置いてきたのだ。

「神と交わす祝い酒だ。家族全員と、歳神の分の酒を用意しておく」

「お酒を……」

「神は酒好きだからな」

 一柱だけ甘党の神様がいて、その神様の年はお菓子を用意しておくのだとか。

「さあ、寝るとしよう」

 ガルに腕枕されてすっぽりと抱きしめられ、厚い胸に頬をすり寄せる。

「今年も無事に一年を過ごせたこと、そして人生最大の出逢いに感謝して。おやすみ、マヤ」

「大変な思いもしたけど、嬉しさの方が多い幸せな一年でした。ガル様と出逢えてよかった。……来年もずっと一緒にいてください。おやすみなさい、ガル様」

 鼻先でおでこをくすぐられ、ガルを見上げれば優しい口付けが落ちた。

 温かな腕の中で目を閉じる。
 心地よいまどろみに身をゆだね、一年の最後の夜が過ぎていった。
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