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1~10話

不死鳥のごとく【上】 ※

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「ねえ、抜いたら治まるんじゃなかったの?」

 ザブザブとお湯を浴びて長椅子に戻った私は、未だに天を向いて何かを訴えかけてくる巨塔をじとりと睨みつけた。

「溜まりすぎて一発じゃ無理だったようだな」

「…………あとは自分で処理してよね」

「あ? いいのか?」

「だって、そんな状態じゃ下着も穿けないでしょう!? 私はあっちを向いておくから、さっさと治めてちょうだい!」

 そう言ってディノとは逆方向に上体をひねり、ついでにぎゅっと目もつぶる。

「んじゃ、遠慮なく」

 繋がった手が一瞬きゅっと握られて、背後で洩れた熱い吐息にが始まったのを感じた。

「っは……、っ……」

 激しい訓練後のように荒く、それでいていつもとは全然違う、艶を帯びた吐息。
 くちくちと立てられる音に、手の動く速度まで伝わってくる。ゆっくりと……、次第に早く……。

 ――――無理っ!
 視覚を閉ざしていると聴覚が研ぎ澄まされてしまって無理だ!

 右手でバシッと右耳を塞ぐ。

「ちょ、ちょっとディノ! そっちの手で私の左耳を塞いでもらえないかしら!?」

「使用中だバカヤロー!」

「!」

 ああ、そうか。そうだ。そうだった。ディノの左手は絶賛なのだった。
 でも、どうにかして音を防がなくては……。

「じゃあ……私、ちょっと大声で歌っておくわね!?」

「んな状態で抜けるかっ! いいから大人しくしてろ!」

「だって〰〰っ」

 どんなに強く右耳を塞いでいても、左耳から侵入した音が思考をかき乱す。
 腰のあたりがムズムズするような居たたまれなさに膝を擦りあわせながら、唇を噛みしめてひたすらに処理が終わるのを待った。





「……三回だったわ」

「三回だったな」

 広い浴槽とはいえ、さすがに二人で入るには少々手狭で――というよりディノが大きすぎるのがいけない。『私』が二人だったなら余裕で入れたはずだ。

 並んでぴっちりと浴槽に収まれば、二人分の体積に上昇した水位が私の口元を覆った。
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