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21~30話

発言の真意【上】

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 午後の日差しが降り注ぐ窓の外を、色濃く繁った木々が流れていく。
 そんなのどかな景色を眺めながらも、私の心中は上を下への大騒ぎだった。


 可愛いって言った!
 可愛いって言った!
 ずっと可愛いって言ってるつもりだったって、ディノが!!

 ということは、今まで悪口だと思っていた発言も全部褒め言葉だったのだろうか!?
 『ヤマリスそっくり』とか、『ちっこくて見えなかった』とか……、『立派なもんもねぇだろ』……とか…………。
 んん……?

「チェリア」

「ひゃいっ!? なっ、なに!?」

 ディノに呼ばれて飛び上がる。
 可愛い私に一体なんの用だろう!?

 ディノはじっと私の顔を見つめたまま、繋がった手の指先でそっと私の口元に触れてきた。

 そ、そんなっ、ダメよ! いくら私のことが可愛くて可愛くてたまらなくたって、同意もなしにいきなりそんな、くっ、口づけだなんて……っ!

「せめて目は閉じ――っ」

「ほら。パン屑が付いてたぞ」

「――――えっ?」

 取ったパン屑を見せられてもまだ状況が理解できずに固まる私を尻目に、ディノは指先に付いたパン屑をぱくりと食べた。

 パン屑……が、付いてた……だけ……。

 じわじわと顔に熱が集まる。
 ディノはパン屑を取ってくれようとしただけなのに、私ときたらなんという誤解を……!
 でもでもっ! 私のことを可愛いと言いながら、あんな壊れ物を扱うみたいな優しい手つきで触られたら誰だって期待し――、っじゃなくて!!!
 あぁぁ、数瞬前に戻って自分をひっぱたきたい。

 逃げ出したくとも背中はしっかりとディノの腕に支えられているし、隠れようにもここはディノの膝の上だ。
 どんなに居たたまれなくとも逃げ場はなくて、ディノの胸にぐりぐりと顔を埋める。

「どうした? 眠いなら寝てていいぞ」

「ん……」

 もうここは眠いことにして誤魔化してしまおうと、私は言葉少なにぎゅっと目を閉じた。
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