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41~最終話

捕食者の渇望【下】

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 パサリと外套がはだけられ、はずの可愛らしい寝衣がディノの部屋明かりに晒される。
 胸元と裾にフリルの付いたシルクのネグリジェは、ひたりと張りついて身体の輪郭を浮き上がらせた。

「……脱がせんのがもったいねぇな」

「! じゃ、じゃあっ、やめておいたらいいんじゃないかしら!」

 これ幸いと提案すると、ディノがにっこりと笑みを浮かべた。
 聞く耳を持ってくれたことに、ほっと胸を撫で下ろす。

「わかってくれてよかっ――」

「こんなとこでやめてみろ、『破裂』するぞ」

 ゴリリと、内腿に押し当てられる硬い感触。
 下衣に押し込められた巨塔が、苦しいほどに屹立して助けを求めているのが伝わってくる。

 もしかして今までも、お風呂で血行がよくなったことで勃起が起こっていたわけではないのだろうか?
 ずっと、私と一緒にいたせいだったりして?

「……破裂、しないって言ったくせに」

 初日の出来事をからかうような物言いにふて腐れて口を尖らせると、ディノが楽しそうに笑みを深めた。

「なあチェリア。ファングベアーに捕まったヤマリスはどうなると思う?」

「……? そんなの、パクッと食べられちゃうに決まってるじゃない」

「わかってんなら、観念して俺に食われろ」

「!」

 再び迫った顔に『捕食』を覚悟してぎゅっと目をつぶると、ちょんと優しい口づけが唇に触れた。

 こつりと額を合わせられ、恐る恐る目を開ければ――飾らない真剣な眼差しが、至近距離から私を射抜いた。

「ちっこい身体に命への責任なんざ背負い込んで頑張ってんのも、人を生まれや肩書きで判断しねぇのも、考えてることがわかりやすく顔に出んのも、放っておけねぇ危なっかしいとこも……チェリアの全部が愛おしくてどうにかなっちまいそうなんだよ」

 見上げた視界はディノに覆われて。
 心の中だってすでにディノでいっぱいなのに。

「……そんなに私を好きなの?」

「ずっと言ってんだろ」

「言ってないわ……たぶん……」

 頭が真っ白で思考が回らない。

「なあ、俺のもんになるって言えよ。チェリアの言う『心から愛しあえる人』っつーのは、俺にゃなれねぇか?」

「愛……」

 その一滴で、混濁した溶液がサァッと透き通ったような心地がした。

 ――ああ、そうだ。
 なんで気付かずにいたのだろう。

 一緒にいると安心するのも。
 離れていると寂しいのも。
 抱きしめられたいと思うのも。
 わかってしまえばもう、こんなに明解なことはないのに。

「愛してる……みたい。そうよ! 私、ディノのことを愛してるんだわ!」
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