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41~最終話

裸の心【上】 ※

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「チェリア……」

 見開かれたディノの瞳に、歓喜が広がっていくのが見える。
 琥珀色がほんの少し深くなって、揺れて、煌めいて。

 なんて綺麗な色だろう……。
 きっと私しか知らない。ずっと見つめていたいくらい、幸せな光景。

 愛を伝えて、それを心から喜んでくれる人がいる。自分の心を丸ごと受け止めてもらえることが、こんなにも嬉しいことだなんて知らなかった。
 たった一つの宝物を見つけたような、自分のすべてが肯定されたような、両手に抱えきれないほどの多幸感。

「――チェリア」

「ん……」

 すりすりと鼻先を擦り合わせられて吐息が混ざる。

「チェリア、チェリア……」

 求めるように舌先で唇のあわいをなぞられ。
 おずおずと口を開けば、あふれ出しそうな幸せごとばくりと食べられた。

「んぅっ、ん……、っ……」

 深く絡めて、奪われて。
 くらくらと酔いが回るのは、ディノの口腔に残る酒精のせいだけではない。

 私を押し潰さないよう肘で身体を支えながら、ディノの両手がゆるゆると私の髪をもてあそぶ。
 やわらかな心地よさと、肌をくすぐるもどかしさ。

 やがて耳を探り当てた手は、その指先をつぷりと私の耳孔に差し込んだ。

「んっ……? ――んむっ!? んーっ、んんーっ!!」

 口づけられたまま耳を塞がれ、くちゅくちゅと舌の絡みあう音が、行き場を失って頭の中にこだまする。

 くちゅくちゅ……、ちゅっ、ちゅぷっ……。

 まるで頭の中まで舌でかき混ぜられているような。
 何もかもディノで埋め尽くされて、何も考えられなくなる。思考がどろどろに溶けだして、このままどうにかなってしまいそうだ。

 わざとらしく、じゅっと大きな音を立てて舌を吸われて腰が跳ねた。

「んっ――」

 グリと、下衣越しの巨塔に内腿を抉られながら、腰を押さえつけられる。

 名残惜しむようにべろりと唾液を舐めとられ、ようやく耳と唇が解放された。

「ぷはっ! っはぁ、はぁ……」

「……チェリア、やっと俺のもんになるな……」

 吐息に首筋を撫でられ、そわそわと這い上がるもどかしさに背筋を震わせる。

「んっ、ディノ……、もっ……?」

 熱い唇が触れれば、チリ、と皮膚が焼けついた気がした。

「ああ、俺もチェリアのもんだ」

 嬌声に邪魔されながらの言葉にならない質問を、理解してくれたことが嬉しい。
 そしてその答えは、さらに嬉しさを膨れあがらせる。

 外套から抜き取られた両腕を、ディノの首筋に回してぎゅうとしがみつく。
 接着剤なんてなくても、自分たちの意思で好きなだけくっついていられる。込み上げる愛情のまま私がどれほどくっついていたいと願おうと、ディノなら全部、笑って受け止めてくれると信じられるから。
 絶対に拒絶されないという安心感に、心にまとった殻までもするすると剥がされていく。
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