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41~最終話
【最終話】もうあなたと離れない【下】
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「惚れ直したか?」
「これ以上惚れさせるつもり?」
「当然」
ディノがニヤリと歯を見せて笑うので、私も釣られてクスクスと笑った。
「ねえ、私が『髪色と同じオールドローズピンクの服を着て!』って言ったらどうしてた?」
「別に着んのは構わねぇが、似合わなそうだな」
全身オールドローズの服に身を包んだディノを想像してみる。
「……たしかに」
「オールドローズを身につけろってんなら、これでいいだろ」
贅沢に生地を重ねたドレスと重たい宝飾品で着飾った私を、ディノが軽々と抱きあげた。
大聖堂の前に着き、ディノのエスコートを受けて馬車を降りる。
左手を預けた硬い右手の感触が懐かしい。
あの『接着』から、まだほんの半年しか経っていないなんて。
ディノとくっついて過ごした日々は、人生のどの瞬間よりも濃厚な毎日だったと思う。
一刻も早く放れたくて、己の不運を嘆いて、憚りやお風呂まで一緒という、信じられないほどの不便を強いられて。
失礼男と四六時中行動をともにするなんて、絶対に不快な思いばかりすることになると思っていたのに。
一緒に過ごすほどに見えてきたのは、粗野な言動のなかに隠れた優しさと愛情深さで。
尊重され、守られ、愛情を注がれて。失礼な発言さえも愛の言葉だったなんて知ってしまったら……そんなのもう、逃げ切れるわけがない。
何もかもすっかり捕まってしまった――。
感慨深く大聖堂を見上げる私の耳元に、ディノが顔を寄せる。
「なあチェリア。あの日接着剤がくっつけたのは、本当に『手のひら』だけか?」
「そうよ? なんで??」
きょとんとディノを見つめれば、いたずらっぽい笑みが答えた。
「『心』までくっついた気がする」
「! ――ふふっ、そうかも!」
大聖堂のホールに響き渡るパイプオルガンの音色。騎士隊長の結婚式に相応しい、そうそうたる顔ぶれの列席者。
祝福が降り注ぐような美しい讃美歌がやみ、厳かに読みあげられる聖典の一節を聞いて。
大司教の言葉に添ってお互いに誓いを述べたあとは、婚姻誓約書に各々の名前を書き入れれば婚姻成立となる。
譜面台のような置き台に載った婚姻誓約書に、ディノがさらさらとサインする。
「ほら」
ペンを手渡され、場所を譲られて、私もさらりと誓約書にサインを施した。
「…………あっ」
「どうした?」
ディノが私の視線を追うように誓約書を覗き込んで、ぐっと眉をひそめる。
「おい、俺ぁ一体誰と結婚したんだ」
そこには、よく似た筆跡でこう書かれていた。
《新郎: ディノ=ベルグラートナー》
《新婦: ディノ=ベルグラートナー》
―― 完 ――
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
あとがき
最後までお付き合いいただきありがとうございました✨
このあと、呆れた大司教に新しい誓約書を貰ってちゃんと婚姻成立しました(笑)
読んでよかったと思っていただける作品になっていれば嬉しいです(*´∀`)
ガサツで口が悪い(?)ヒーローとのケンカップルものという、拙作には珍しいタイプの本作品。
他のあまあま溺愛作品に比べるとアクセスは少なめなのですが、実は唯一プロットを組んでから書いた作品のため、構成がしっかり(当社比)していて一番の自信作なのです( ง ˙ ω˙ )ง ⁾⁾ グッ
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「これ以上惚れさせるつもり?」
「当然」
ディノがニヤリと歯を見せて笑うので、私も釣られてクスクスと笑った。
「ねえ、私が『髪色と同じオールドローズピンクの服を着て!』って言ったらどうしてた?」
「別に着んのは構わねぇが、似合わなそうだな」
全身オールドローズの服に身を包んだディノを想像してみる。
「……たしかに」
「オールドローズを身につけろってんなら、これでいいだろ」
贅沢に生地を重ねたドレスと重たい宝飾品で着飾った私を、ディノが軽々と抱きあげた。
大聖堂の前に着き、ディノのエスコートを受けて馬車を降りる。
左手を預けた硬い右手の感触が懐かしい。
あの『接着』から、まだほんの半年しか経っていないなんて。
ディノとくっついて過ごした日々は、人生のどの瞬間よりも濃厚な毎日だったと思う。
一刻も早く放れたくて、己の不運を嘆いて、憚りやお風呂まで一緒という、信じられないほどの不便を強いられて。
失礼男と四六時中行動をともにするなんて、絶対に不快な思いばかりすることになると思っていたのに。
一緒に過ごすほどに見えてきたのは、粗野な言動のなかに隠れた優しさと愛情深さで。
尊重され、守られ、愛情を注がれて。失礼な発言さえも愛の言葉だったなんて知ってしまったら……そんなのもう、逃げ切れるわけがない。
何もかもすっかり捕まってしまった――。
感慨深く大聖堂を見上げる私の耳元に、ディノが顔を寄せる。
「なあチェリア。あの日接着剤がくっつけたのは、本当に『手のひら』だけか?」
「そうよ? なんで??」
きょとんとディノを見つめれば、いたずらっぽい笑みが答えた。
「『心』までくっついた気がする」
「! ――ふふっ、そうかも!」
大聖堂のホールに響き渡るパイプオルガンの音色。騎士隊長の結婚式に相応しい、そうそうたる顔ぶれの列席者。
祝福が降り注ぐような美しい讃美歌がやみ、厳かに読みあげられる聖典の一節を聞いて。
大司教の言葉に添ってお互いに誓いを述べたあとは、婚姻誓約書に各々の名前を書き入れれば婚姻成立となる。
譜面台のような置き台に載った婚姻誓約書に、ディノがさらさらとサインする。
「ほら」
ペンを手渡され、場所を譲られて、私もさらりと誓約書にサインを施した。
「…………あっ」
「どうした?」
ディノが私の視線を追うように誓約書を覗き込んで、ぐっと眉をひそめる。
「おい、俺ぁ一体誰と結婚したんだ」
そこには、よく似た筆跡でこう書かれていた。
《新郎: ディノ=ベルグラートナー》
《新婦: ディノ=ベルグラートナー》
―― 完 ――
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
あとがき
最後までお付き合いいただきありがとうございました✨
このあと、呆れた大司教に新しい誓約書を貰ってちゃんと婚姻成立しました(笑)
読んでよかったと思っていただける作品になっていれば嬉しいです(*´∀`)
ガサツで口が悪い(?)ヒーローとのケンカップルものという、拙作には珍しいタイプの本作品。
他のあまあま溺愛作品に比べるとアクセスは少なめなのですが、実は唯一プロットを組んでから書いた作品のため、構成がしっかり(当社比)していて一番の自信作なのです( ง ˙ ω˙ )ง ⁾⁾ グッ
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みんなの感想(36件)
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完結おめでとうございます!やっぱりディノ様がすっっっき!!!!
くっついていた日々を思い出させる終わり方、なんてハッピーなんでしょう♡
何度も楽しませていただきました、ありがとうございました(*´艸`*)
最後までお付き合いいただきありがとうございました~🎉✨
言われたてみれば、確かに!
手を取るところといい、最後といい、くっついていた日々を彷彿とさせる胸熱展開……!
え、すごい……。これを無意識で……天才!?( ゚д゚)💥
今までとは毛色の違うヒーローだしアクセス伸びないしで悩んでましたが、美尾さんがずっとディノ推ししてくださるのでヒーローの魅力に自信を持てました!٩( ᐛ )و
ありがとうございました*。・+(人*´∀`)+・。*
あちらで読んでわかっているのにやっぱり笑っちゃう(*´艸`)フフ
チェリちゃんの可愛らしい色んな『やらかし』とても面白かったです(*≧艸≦)
最後までお付き合いいただきありがとうございました~🤸
大司教さまも呆れ顔😂
チェリアはせっかく腕が立つのに、おっちょこちょいで相殺されてる感……🔁( ᐛ )
楽しんでいただけて嬉しいです✨😆
完結おめでとうございます!!
終わっちゃいましたねー。
毎日、ニマニマしながらの
楽しみが終わりー。(´;ω;`)
でも、チェリアが幸せそうで
良かった!!( ^罒^ )v
これからも、チェリアが無自覚に
ディノを煽って、賑やかな生活に
なりそうですね!!
最後までお付き合いいただきありがとうございました~!💒
二人の言動は相変わらずですが、真意が通じたことで受け取り方は変わった模様( *´艸`)
そうですね!
チェリアの足腰が心配です!w🛏️