不能だと噂の騎士隊長が『可能』なことを私だけが知っている(※のぞきは犯罪です)

南田 此仁

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11~20話

ありし日の夢【下】

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 起こさないようにと気遣うような、大きくて優しい手にふわりと抱き上げられる。
 日々重たい粘土を運んだり捏ねたりしているお父さんは、見かけによらず力持ちなのだ。

「んー……」

 お尻と背中を支えて縦抱きにされ、こてんと肩口に顔を埋める。

 優しくて力強い腕、体温のぬくもり、嗅ぎなれたにおいに、穏やかな声の響き。
 おとうさんの抱っこは大好きだ。
 あったかくて、日だまりに包まれているみたいに安心する。

 このままベッドになんて下ろされなければいいのに。
 寝ぼけたふりをしておとうさんの首筋にしがみつくと、クスッと笑う気配がした。



 こてりとベッドに転がされ、布団をかけて、頭を撫でられ。

「おやすみ、リゼット」

 そう言って立ち去ろうとするおとうさんを引き留めたくて、きゅっと服の裾を掴んだ。

「……ちゃんと『リズ』って呼んでくれなきゃ嫌」

「! いやしかし……」

「おやすみのキスも忘れてるわ」

 まったく、おとうさんにはそうやってウッカリしたところがある。
 大事なおやすみのキスを忘れるだなんて!

「しかし、リゼット――」

「リ・ズ!」

 ぷくーっとほっぺを膨らませて抗議する。
 『リズ』と呼んでおやすみのキスをしてくれないのなら、こっちにも考えがある。
 このままパッチリと目を覚まして、せっかく抱っこで運んでもらった道のりを工房まで駆け戻ったっていいのだ!

「……ぁー…………おやすみ、

「おやすみのキスも!」

「ぐっ……」

 たっぷりと間を置いたのち、おでこにちゅっと口づけが落ちた。

「おやすみ、リズ。いい夢を」

「んふふ……」

 微笑んで、とろんとまどろみに浸る。
 愛されている実感に、満ち足りた気持ちで眠りについた。






 ――朝。なんとも幸せな気持ちで目を覚ます。

 久しぶりにお父さんの夢を見た。
 詳しい内容は覚えていないけれど、胸に残る多幸感でいい夢だったとわかる。
 喪った悲しみの混じらない、純粋に幸せな夢なんていつぶりだろう。

 微かな物音がして耳を澄ませれば、部屋の真下にあたるパン屋部分にすでに人気があることがわかって飛び上がった。

 バタバタバタバタ……
 ガチャッ!

「おじいちゃん、おはようっ! 私寝坊しちゃった!?」

「おう、おはよう。寝坊なんざしてねえからとっとと顔洗ってこい」

「よかったぁー……」

 おじいちゃんの返事と、チラリと壁掛け時計も確認して胸を撫で下ろす。
 おじいちゃんのほうが早起きなのはいつものことだけれど、普段なら家屋側で朝食を食べる時間なのにお店の厨房で何をしているのだろう?

 気になりつつも着替えのために部屋へと引き返し、鏡を見てもう一度飛び上がった。

「なんで私、昨日の服のままなの!?」
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