不能だと噂の騎士隊長が『可能』なことを私だけが知っている(※のぞきは犯罪です)

南田 此仁

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71~最終話

それぞれの想い【下】

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 ふふん、と胸を張って告げる。

 嬉しさで言葉もないのだろうか。感動で泣きそうなのだろうか。
 しばしの沈黙のち、おじいちゃんは眉間に深いシワを刻んで言った。

「……店のこたぁリゼットが気にすることじゃねえ。もっと自分のやりたいことをやれ」

 照れ隠しでも遠慮でもなく、私は関わるなとでも言いたげな声音で。おじいちゃんはそれだけ言うと、不愉快そうに視線を逸らした。

「えっ……」

 なんで? お店が受け継がれるのに、なんで喜んでくれないの? 十年以上一緒にお店をやってきた私を、なんで部外者みたいに扱うの?

 喜んでくれるだろうと膨らんでいた期待が一瞬で打ち砕かれて、どうしても素直には呑み込めない。
 おじいちゃんだってお店を閉めたいとは思っていないはずなのに。なんで私が継ぐのは受け入れてくれないの!?

「だから、その『やりたいこと』がこのお店なの!」

「パン作りなんてなぁ体力勝負の重労働だ。店の経営だって、やれ燃料費だ税金だなんだってんで頭悩ませるこたぁごまんとある。パンが好きだってんなら、どこぞのパン屋にでも雇ってもらやぁいい」

「な……っ! 他のお店じゃ意味ない! このお店が好きだから! このお店をおじいちゃんの代で終わらせたくないから、私が継ぐって言ってるんじゃない!!」

 バンッとテーブルに手をついて立ち上がっても、おじいちゃんはこちらを見ようともしない。
 心配そうに私を宥めようとするヨルグの手だけが、視界の端に見えた。

「俺の店だ、俺の好きなようにする」

「――っ! お父さんには『継げ』って言って家出されたくせに! なんで私が継ぐって言ってるのは聞いてくれないのよ!!」

 ダンッ!

「あっ……」

 ハッと口を塞いでももう遅い。
 一度口から出てしまった言葉を戻すことは叶わない。

 強くテーブルを叩いて立ち上がったおじいちゃんは、私と目も合わせないまま無言で居間を出ていってしまった。
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