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1~10話
5a、あの香り(のする本体)
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ジャブジャブと、たらいに入れられた洗濯物を洗っていく。
下っ端の私に回されるのは、扱いは簡単だけれど洗うのが大変なテーブルクロスやシーツなどの大物ばかり。
繊細な扱いを要する高級素材でできた物———主にグレニスの衣類など———は、もっと洗濯物の扱いに長けた先輩メイドが手がけている。
「はぁ……」
羨ましい。
グレニスは鍛錬後に騎士団の制服に着替えるから、今洗われている洗濯物の中には今朝の汗だくシャツが混ざっているはずだ。下着だってあるかもしれない。
はす向かいで手際よく洗濯をする先輩メイドの手元で、極上の香りの染み込んだ衣類が次々と洗剤の香りに塗り替えられていくのを為すすべもなくじっとりと見つめる。
洗濯場には洗剤の香りが充満しているせいで、他の香りなんて漂ってこない。
あの香りを嗅ぎながらであれば仕事も捗ること請け合いなのに。
清掃の時だって、大事な物の置かれた主人の部屋を下っ端なんかに任されるわけもなく、私は延々と広い庭の掃き掃除をしているだけだ。
あーあ。一日中あの香りに包まれていられたら、どんなに幸せだろう———
「リヴェリー、さっきから手がお留守よ!」
「はいっ! すみません!」
この屋敷は良くも悪くも平等で、平民も混ざる使用人の中、行儀見習いの令嬢だからといって優遇されることはない。
ちゃーんと下っ端として、肉体労働じみた雑用からのスタートだ。
これもグレニスの方針なのだそう。
おかげで令嬢の中には「こんなに大変なんて聞いてない!」と憤慨して辞めてしまう人も少なくないのだとか。
下っ端の私に回されるのは、扱いは簡単だけれど洗うのが大変なテーブルクロスやシーツなどの大物ばかり。
繊細な扱いを要する高級素材でできた物———主にグレニスの衣類など———は、もっと洗濯物の扱いに長けた先輩メイドが手がけている。
「はぁ……」
羨ましい。
グレニスは鍛錬後に騎士団の制服に着替えるから、今洗われている洗濯物の中には今朝の汗だくシャツが混ざっているはずだ。下着だってあるかもしれない。
はす向かいで手際よく洗濯をする先輩メイドの手元で、極上の香りの染み込んだ衣類が次々と洗剤の香りに塗り替えられていくのを為すすべもなくじっとりと見つめる。
洗濯場には洗剤の香りが充満しているせいで、他の香りなんて漂ってこない。
あの香りを嗅ぎながらであれば仕事も捗ること請け合いなのに。
清掃の時だって、大事な物の置かれた主人の部屋を下っ端なんかに任されるわけもなく、私は延々と広い庭の掃き掃除をしているだけだ。
あーあ。一日中あの香りに包まれていられたら、どんなに幸せだろう———
「リヴェリー、さっきから手がお留守よ!」
「はいっ! すみません!」
この屋敷は良くも悪くも平等で、平民も混ざる使用人の中、行儀見習いの令嬢だからといって優遇されることはない。
ちゃーんと下っ端として、肉体労働じみた雑用からのスタートだ。
これもグレニスの方針なのだそう。
おかげで令嬢の中には「こんなに大変なんて聞いてない!」と憤慨して辞めてしまう人も少なくないのだとか。
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