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1~10話

5b、あの香り(のする本体)

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 私も入りたての頃は『すぐに辞めると言い出すのではないか』と窺うような周囲の視線が気になっていたけれど、三ヶ月経った今ではそれもなくなった。

 勉強のために置いてもらっている身なのだから、しっかり努めようと思う。
 最高のご褒美も貰っていることだしね!

 視線を手元に戻した私は、気持ちを切り替えわっせわっせと洗濯に精を出した。








 メイドの朝は早い。
 というより、早朝鍛錬の付き添い時刻が異様に早い。

 深夜とも早朝ともつかない時間に起き出して、薄暗い部屋で身支度を整える。

「あれぇー? リヴ、今日はお休みじゃなかったっけぇ?」

 物音で起こしてしまったのか、マニーが二段ベッドの上から眠そうな顔を覗かせた。
 お仕着せ姿の私を見て首を傾げている。

「ごめん、起こしちゃった? お休みなんだけど、鍛錬の付き添いだけはしてこようと思って」

「えぇーっ、って休日返上なの!? さすがにそれは酷くない? メイド長に相談してみたら?」

 『罰』とは一体なんのことだろうと考えかけて、自分がそう説明したのだったと思い出した。
 これまでは休日もマニーが寝ている間に部屋を出ていたので、気付いていなかったのだろう。鍛錬の付き添いを終えて私服に着替えに戻る頃には、始業時刻をすぎていて使用人棟は無人だったし。

「大丈夫大丈夫、心配しないで! 私がやりたくてやってるだけだから!」

「リヴってば、すっごく責任感が強いのねぇ……、ふわぁ~ぁ。あんまり無理しすぎないようにねー」

 マニーは感心したように言って、もう一度寝直すのかベッドに頭を引っ込めた。

 期せずして自分の株を上げてしまった気がする……。なんという後ろめたさ。
 失態の責任を取ろうだとか全くもってこれっぽっちも考えていなかったし、なんならあれが罰だということさえ忘れていたくらいなのに。

 とりあえずベッドへ向けて両手を合わせ、『騙すつもりはなかったんですごめんなさい』と拝んでおいた。
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