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11~20話
14b、何よりも一番グレニス様が好きです!
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「でもっ、その……違ったんです。うまく言えないんですけど、こう、好きな部類の香りなのに、なんだかしっくり来ない感じがして……」
カップに口を付けながら、胡乱な目が続きを促す。
「それで……さっきグレニス様の兜を嗅いだ瞬間に、気付いたんです。『私が求めていたのはこの香りだったんだー!』って」
「求めて……? どういう意味だ?」
「一番大好きってことです!」
ゴホッ
胸を張って堂々と答えれば、目の前のグレニスが唐突にむせ込んだ。
「大丈夫ですか?」
「っ、ああ、問題ない」
背中をさすろうかと腰を浮かせかけるのを、片手で制される。
数回咳込んで呼吸を落ち着けたグレニスは、空のカップをテーブルに置いて言った。
「リヴェリーはそんなに俺の匂いが好きなのか」
「はいっ! 何よりも一番グレニス様が好きです!」
ゴホッ
「…………そうか」
グレニスの眉間にグッと深くしわが刻まれる。
随分険しい表情だ。こんなにお世話になっているというのに、私は何か失礼なことを言ってしまったのだろうか。
私の心配をよそに、グレニスは予想外の提案を口にした。
「急ぎの書類を片付ける間しばらく待っていられるか? 差し入れの礼に、帰りに何か御馳走しよう」
「えっ、そんな悪いですよ!」
あんなにぬるい果汁水を飲んでもらえて、むしろこっちがお礼を言いたいくらいだ。
「ここで待つのは嫌か?」
問いかけながら、グレニスの指が隣に鎮座する兜をコツコツと叩く。
ここで、待つ……。
ここで……あの兜と一緒に……。
「待ちますっ!! 五時間でも六時間でも待ちます!」
「そんなには待たせないはずだ」
そう言うと、グレニスはソファを立ち上がって執務机へと向かった。
カップに口を付けながら、胡乱な目が続きを促す。
「それで……さっきグレニス様の兜を嗅いだ瞬間に、気付いたんです。『私が求めていたのはこの香りだったんだー!』って」
「求めて……? どういう意味だ?」
「一番大好きってことです!」
ゴホッ
胸を張って堂々と答えれば、目の前のグレニスが唐突にむせ込んだ。
「大丈夫ですか?」
「っ、ああ、問題ない」
背中をさすろうかと腰を浮かせかけるのを、片手で制される。
数回咳込んで呼吸を落ち着けたグレニスは、空のカップをテーブルに置いて言った。
「リヴェリーはそんなに俺の匂いが好きなのか」
「はいっ! 何よりも一番グレニス様が好きです!」
ゴホッ
「…………そうか」
グレニスの眉間にグッと深くしわが刻まれる。
随分険しい表情だ。こんなにお世話になっているというのに、私は何か失礼なことを言ってしまったのだろうか。
私の心配をよそに、グレニスは予想外の提案を口にした。
「急ぎの書類を片付ける間しばらく待っていられるか? 差し入れの礼に、帰りに何か御馳走しよう」
「えっ、そんな悪いですよ!」
あんなにぬるい果汁水を飲んでもらえて、むしろこっちがお礼を言いたいくらいだ。
「ここで待つのは嫌か?」
問いかけながら、グレニスの指が隣に鎮座する兜をコツコツと叩く。
ここで、待つ……。
ここで……あの兜と一緒に……。
「待ちますっ!! 五時間でも六時間でも待ちます!」
「そんなには待たせないはずだ」
そう言うと、グレニスはソファを立ち上がって執務机へと向かった。
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