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11~20話
14c、何よりも一番グレニス様が好きです!
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チラッと斜め前方の執務机を見れば、グレニスはすでに仕事モードで真剣に書類に目を走らせている。
……また兜に触れていてもいいのだろうか?
グレニスが兜を示したのだから、許可してくれたという解釈で間違っていないはずだ。きっと。希望的観測が混じっていない自信はないが。
仕事中に軽々しく話しかけるのも憚られて、私はグレニスの方を窺いながらそろりと席を立つと、サッと兜を掴んで元の座面へと引き返した。
視界の端で動く私には気付いているだろうに、何もお咎めはない。
その様子に安心した私は、今度こそ遠慮なく手にした兜を被るのだった。
コンコン
金属を叩く音が頭に響く。
誰だか知らないが、人の至福のひと時を邪魔をしないでいただきたい。
コンコン
「終わったぞ。寝ているのか?」
「! 起きてますっ!」
グレニスの低い声がして、我に返った私は慌てて上体を起こした。
反動で頭がぐらりと大きく揺れる。
思考はでろでろにとろけていたし、兜の重みを気にせず香りを堪能するべくいつの間にかソファに頭を置いて寝そべっていたけれど、眠ってはいない。
「長く待たせてすまなかったな」
ガポッと兜を取り上げながらグレニスが言う。
「いえ、もっとゆっくりお仕事されてても大丈夫でしたよ」
だってまだ、十数えるほどしか経っていない気がする。早すぎる。
グレニスは左腕に兜を抱えると、空いた右手で私の髪を撫でつけた。
「まったく……、兜を被ったまま寝そべったりなどするから、髪がグシャグシャじゃないか」
「え……、うわっ!」
言われて自分の頭に触れて見れば、編み込みのあちこちから飛び出した髪がくしゃくしゃと手のひらをくすぐった。
……また兜に触れていてもいいのだろうか?
グレニスが兜を示したのだから、許可してくれたという解釈で間違っていないはずだ。きっと。希望的観測が混じっていない自信はないが。
仕事中に軽々しく話しかけるのも憚られて、私はグレニスの方を窺いながらそろりと席を立つと、サッと兜を掴んで元の座面へと引き返した。
視界の端で動く私には気付いているだろうに、何もお咎めはない。
その様子に安心した私は、今度こそ遠慮なく手にした兜を被るのだった。
コンコン
金属を叩く音が頭に響く。
誰だか知らないが、人の至福のひと時を邪魔をしないでいただきたい。
コンコン
「終わったぞ。寝ているのか?」
「! 起きてますっ!」
グレニスの低い声がして、我に返った私は慌てて上体を起こした。
反動で頭がぐらりと大きく揺れる。
思考はでろでろにとろけていたし、兜の重みを気にせず香りを堪能するべくいつの間にかソファに頭を置いて寝そべっていたけれど、眠ってはいない。
「長く待たせてすまなかったな」
ガポッと兜を取り上げながらグレニスが言う。
「いえ、もっとゆっくりお仕事されてても大丈夫でしたよ」
だってまだ、十数えるほどしか経っていない気がする。早すぎる。
グレニスは左腕に兜を抱えると、空いた右手で私の髪を撫でつけた。
「まったく……、兜を被ったまま寝そべったりなどするから、髪がグシャグシャじゃないか」
「え……、うわっ!」
言われて自分の頭に触れて見れば、編み込みのあちこちから飛び出した髪がくしゃくしゃと手のひらをくすぐった。
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