100 / 277
21~30話
25a、ずるいです!
しおりを挟む
「面白かったですね!」
「ああ」
どやどやと流れる人の波に乗り劇場を出る。
終わってみれば、すっかり楽しんで劇に見入ってしまっていた。
「まさかドラゴンが本当に火を噴くなんて!」
見せ場となるドラゴンと騎士の戦闘シーンで、巨大な張りぼてのドラゴンが口から本物の炎を噴いたのだ。
趣向を凝らした演出に客席からは「おおー!」と感嘆の声が上がり、バルコニー席まで届いた炎の熱気には自分も劇中の世界に入ったかのような臨場感を感じられた。
再びフードで顔を隠したグレニスは、興奮冷めやらない私の腰を引き寄せ、通行人にぶつからないよう導いてくれる。
「でも、ドラゴンって本当にいるんですかね?」
おとぎ話や冒険譚なんかにはよく登場するけれど、実際のところ誰かがワイバーンの大きな個体を見間違えて言い出しただけなんじゃないだろうか。
「いるぞ。見たことがある」
「えっ!」
「かつて国外遠征中に、一度だけな。高山の、さらに遥か上空を悠然と飛んでいた」
「それって、その……ワイバーンじゃなくて……?」
「ああ、翼の形や体格が明らかに違う。それに全身綺麗な銀色をしていた」
ワイバーンといえば赤褐色や黒などの暗い色ばかりで、銀色なんて聞いたこともない。
劇の張りぼてドラゴンはエメラルドグリーンをしていたけれど、銀色かぁ……。
日差しを浴びて銀色に輝く巨躯が、悠々と空を飛んでいる姿を思い浮かべる。
幻の生き物だと思っていたドラゴンが、まさか本当に実在していたとは。
「……襲われたりはしませんでしたか?」
「ドラゴンは基本的に温厚だという。こちらから仕掛けない限り、そうそう人を襲うことはない」
「へぇー」
物語ではいつも暴れ狂う恐ろしい存在として描かれているのに、温厚だというのは驚きだ。
怖い見た目だけど優しいなんて、ちょっと誰かさんに似ている気がする。
「ああ」
どやどやと流れる人の波に乗り劇場を出る。
終わってみれば、すっかり楽しんで劇に見入ってしまっていた。
「まさかドラゴンが本当に火を噴くなんて!」
見せ場となるドラゴンと騎士の戦闘シーンで、巨大な張りぼてのドラゴンが口から本物の炎を噴いたのだ。
趣向を凝らした演出に客席からは「おおー!」と感嘆の声が上がり、バルコニー席まで届いた炎の熱気には自分も劇中の世界に入ったかのような臨場感を感じられた。
再びフードで顔を隠したグレニスは、興奮冷めやらない私の腰を引き寄せ、通行人にぶつからないよう導いてくれる。
「でも、ドラゴンって本当にいるんですかね?」
おとぎ話や冒険譚なんかにはよく登場するけれど、実際のところ誰かがワイバーンの大きな個体を見間違えて言い出しただけなんじゃないだろうか。
「いるぞ。見たことがある」
「えっ!」
「かつて国外遠征中に、一度だけな。高山の、さらに遥か上空を悠然と飛んでいた」
「それって、その……ワイバーンじゃなくて……?」
「ああ、翼の形や体格が明らかに違う。それに全身綺麗な銀色をしていた」
ワイバーンといえば赤褐色や黒などの暗い色ばかりで、銀色なんて聞いたこともない。
劇の張りぼてドラゴンはエメラルドグリーンをしていたけれど、銀色かぁ……。
日差しを浴びて銀色に輝く巨躯が、悠々と空を飛んでいる姿を思い浮かべる。
幻の生き物だと思っていたドラゴンが、まさか本当に実在していたとは。
「……襲われたりはしませんでしたか?」
「ドラゴンは基本的に温厚だという。こちらから仕掛けない限り、そうそう人を襲うことはない」
「へぇー」
物語ではいつも暴れ狂う恐ろしい存在として描かれているのに、温厚だというのは驚きだ。
怖い見た目だけど優しいなんて、ちょっと誰かさんに似ている気がする。
応援ありがとうございます!
3
お気に入りに追加
1,243
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる