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21~30話
25b、ずるいです!
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不意にグレニスが足を止めたのに気付いて立ち止まる。
「?」
グレニスの顔が向いている方向を追って見れば、積み荷が崩れて立ち往生している荷馬車がいた。
落ちているのは人二人分ほどはありそうな大きな石の塊。拾うのを手伝っている人もいるけれど、重くてなかなか持ち上がらないようだ。
「すまない、ここで待っていてくれるか? ちょっと行ってくる」
「はい」
グレニスが現場へ駆けてゆく。
待っていろと言われたものの手伝う人員は一人でも多い方がいいだろうと、私もない袖を腕まくりしながら歩み寄ろうとして———
「へ……?」
あっという間の出来事だった。
グレニスが加わった途端、男性三人がかりでも地面から浮かせるのがやっとだった石が、一気にグンと持ち上がったのだ。
慎重に荷台に積み直し、しっかりと縄で固定する。
馬車の主にペコペコと頭を下げられ、グレニスは軽く首を振って。一言二言話して別れると、足早にこちらに戻ってきた。
「待たせてしまってすまない。車輪が石に乗り上げ、彫刻用の大理石が滑り落ちたらしい」
「……すごいですね……」
まじまじとグレニスの腕を見つめる。
この腕の中に、あんな凄まじい力が……。
まさに日々の鍛練の賜物。私なんて軽々と持ち上げてしまうわけだ。
「あっ」
視線をグレニスの顔へと戻せば、フードから覗く左頬に擦れたような土汚れが付いていた。
ポシェットからハンカチを取り出し、グレニスの頬へと腕を伸ばす。
「?」
グレニスの顔が向いている方向を追って見れば、積み荷が崩れて立ち往生している荷馬車がいた。
落ちているのは人二人分ほどはありそうな大きな石の塊。拾うのを手伝っている人もいるけれど、重くてなかなか持ち上がらないようだ。
「すまない、ここで待っていてくれるか? ちょっと行ってくる」
「はい」
グレニスが現場へ駆けてゆく。
待っていろと言われたものの手伝う人員は一人でも多い方がいいだろうと、私もない袖を腕まくりしながら歩み寄ろうとして———
「へ……?」
あっという間の出来事だった。
グレニスが加わった途端、男性三人がかりでも地面から浮かせるのがやっとだった石が、一気にグンと持ち上がったのだ。
慎重に荷台に積み直し、しっかりと縄で固定する。
馬車の主にペコペコと頭を下げられ、グレニスは軽く首を振って。一言二言話して別れると、足早にこちらに戻ってきた。
「待たせてしまってすまない。車輪が石に乗り上げ、彫刻用の大理石が滑り落ちたらしい」
「……すごいですね……」
まじまじとグレニスの腕を見つめる。
この腕の中に、あんな凄まじい力が……。
まさに日々の鍛練の賜物。私なんて軽々と持ち上げてしまうわけだ。
「あっ」
視線をグレニスの顔へと戻せば、フードから覗く左頬に擦れたような土汚れが付いていた。
ポシェットからハンカチを取り出し、グレニスの頬へと腕を伸ばす。
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