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31~40話
35a、そんなの嘘
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バタンッ
「リヴ!!」
勢いよく部屋に飛び込んできたマニーは、ズンズンとこちらに詰め寄るとガシッと私の両肩を掴んだ。
「えっ、な、なに?!」
「旦那様がお戻りになったわ!」
ドックン
一際大きく音を立て、心臓が跳ねる。
「………………そう」
静かに息を吸って、ゆっくりと吐き出して。
気のせい。
このうるさい鼓動も、何かを求めて逸る心も、全部気のせい。
マニーの目を直視していられずに視線を落とす。
「ねぇ! このまま何も言わずに離れるつもり!?」
「…………」
「リヴっ!」
「……もう、忘れないといけないから」
「全部忘れて、恋心までなかったことにして、リヴはそれでいいの!?」
「だって……、だって結婚が決まったのよ!? 今さらどうしようもないじゃない! マニーに何がわかるのよっ!!」
悲痛な叫びは予想外に大きく響いた。
息を飲むような気配。そして訪れた静寂に、自分が何を口走ったかを知る。
ああ、やめて。違う。違うの!
マニーに八つ当たりなんてしたかったわけじゃないのに!
感情も言動も何一つままならない。
どんなに悩んだって変えられない現実が、もどかしくて、苛立って、……どこまでも悲しくて。
だけど私はグレニスの恋人でもなんでもない。
好きだと言われたことさえない。
自分を結婚から救ってくれだなんて間違っても言えないし、私から告白するにしたってもう手遅れだ。
「リヴ!!」
勢いよく部屋に飛び込んできたマニーは、ズンズンとこちらに詰め寄るとガシッと私の両肩を掴んだ。
「えっ、な、なに?!」
「旦那様がお戻りになったわ!」
ドックン
一際大きく音を立て、心臓が跳ねる。
「………………そう」
静かに息を吸って、ゆっくりと吐き出して。
気のせい。
このうるさい鼓動も、何かを求めて逸る心も、全部気のせい。
マニーの目を直視していられずに視線を落とす。
「ねぇ! このまま何も言わずに離れるつもり!?」
「…………」
「リヴっ!」
「……もう、忘れないといけないから」
「全部忘れて、恋心までなかったことにして、リヴはそれでいいの!?」
「だって……、だって結婚が決まったのよ!? 今さらどうしようもないじゃない! マニーに何がわかるのよっ!!」
悲痛な叫びは予想外に大きく響いた。
息を飲むような気配。そして訪れた静寂に、自分が何を口走ったかを知る。
ああ、やめて。違う。違うの!
マニーに八つ当たりなんてしたかったわけじゃないのに!
感情も言動も何一つままならない。
どんなに悩んだって変えられない現実が、もどかしくて、苛立って、……どこまでも悲しくて。
だけど私はグレニスの恋人でもなんでもない。
好きだと言われたことさえない。
自分を結婚から救ってくれだなんて間違っても言えないし、私から告白するにしたってもう手遅れだ。
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