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31~40話
34e、痛くなんてない。大丈夫。
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………………どうして今なのだろう。
初めての恋を知って、一緒にお出かけをしたと喜んで。
婚約の報せがもう二、三週間も早かったなら、恋心なんて気付かないままでここを去れたのに。
こんな風に心を捻じ切られるような痛みを知ることもなかったのに。
なぜ。
どうして。
やる方ない思いが胸を抉り、やわらかな心がドロドロと零れ落ちていくようだ。
……違う。痛くない。痛くなんてない。大丈夫。
きっとこの気持ちだって、いつか風化するのだろう。そんな未来想像もつかないけれど、新しい生活を続けるうちに、いつかは。
せめて……そう、せめて嫌いな香りの人でないといい。
あとは……ちょっと思いつかないけれど。
結婚相手について考えようとすれば、すぐに別の顔が浮かんできてしまうから。
ダメだ。これ以上余計なことを考えないためにも、今日は早めに寝てしまおう。それがいい。
早ければ明日にも迎えの馬車が着くはずだ。
戻りの遅いマニーを気にかけつつ寝支度を整える。
部屋の明かりは灯したままでベッドに入ろうとしたとき、廊下の方からバタバタと走る足音が近づいてきた。
初めての恋を知って、一緒にお出かけをしたと喜んで。
婚約の報せがもう二、三週間も早かったなら、恋心なんて気付かないままでここを去れたのに。
こんな風に心を捻じ切られるような痛みを知ることもなかったのに。
なぜ。
どうして。
やる方ない思いが胸を抉り、やわらかな心がドロドロと零れ落ちていくようだ。
……違う。痛くない。痛くなんてない。大丈夫。
きっとこの気持ちだって、いつか風化するのだろう。そんな未来想像もつかないけれど、新しい生活を続けるうちに、いつかは。
せめて……そう、せめて嫌いな香りの人でないといい。
あとは……ちょっと思いつかないけれど。
結婚相手について考えようとすれば、すぐに別の顔が浮かんできてしまうから。
ダメだ。これ以上余計なことを考えないためにも、今日は早めに寝てしまおう。それがいい。
早ければ明日にも迎えの馬車が着くはずだ。
戻りの遅いマニーを気にかけつつ寝支度を整える。
部屋の明かりは灯したままでベッドに入ろうとしたとき、廊下の方からバタバタと走る足音が近づいてきた。
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